38.魔法具の手紙!
「何か分かったか?」
エルが意地悪そうな顔で聞いてきた。一応エルには書類は見せてはいない。一応ね。私は別に見せてもいいんだけど。税収の書類は基本公にするものでしょうと思う。疚しい事がなければな! ありすぎだよ。ツィブルカ。
「ツィブルカに帰ってきた時に銀貨一枚一人ずつ取られてたよね。それが去年もあったのか、ずっとなのか、誰も彼も全員からなのか分からないけれども、もし通行人全員からそうだったと仮定して、去年は一〇〇〇万コハル以上が行方不明です。警備兵が着服しているのか、ツィブルカの誰かが関与しているのか、私には分かりませんけれども。テオドル、通行料が銀貨一枚って知っていました?」
「いえ……そんな、まさか……そんな事が……? 申し訳ありません!」
「まぁ、テオドルには普通の通行料って報告だったんだろうな。じゃあ誰が関与しているか。警備兵が主体となってそんな事をやっていたのか。さて。警備兵からは後で俺が聞き出してきてやるよ」
「お願いねーー……はぁ……初っ端からこれか……」
机に突っ伏しながら一〇年前の書類と去年の書類を持って見比べる。ホントほぼ色々変わっていない。変わっていないのに街が廃れているってどういう事なんでしょうね? 書類見ても分からないなー。私、数字は読めるけど経理は全くもって分からないらしい。収入と支出って名目があるだけの書類でいいのか? でも私経理は詳しくないっぽいからどう是正したらいいのか分からない!
「テオドル、ツィブルカの領民って何人いるの?」
「どれくらいでしょう? 全部で三万人位……? でしょうか……? 領都だけだと一万人位……?」
テオドルが自信なさげに言い淀んでいる。
おおう……戸籍ないかー……中世だったらないかー。そっかー。ですよねー。
「税は収穫量か……収穫量……」
書類を見て項垂れる。これ不正し放題なような気がするんだけど。マジかー……。改革しんどくないか? 誰かブレーンをくれ! 全部私が動いてたら過労死一直線な気がするのだが。子供なのに過労死……。
「…………順に視察に行きます」
うううう……と泣く。
「まずは領都からですけどね。はぁ……どうにかなるのか、コレ。領都以外はどうなってるんだろか? あー……エルー、誰か税関係に明るくて、計算早くて、腰が軽くて、とっても出来る人紹介してー」
そんな都合いい人いたら国に務めてるわな!
「…………貴族の出自でなくていいなら一人いる」
いるんかーい! マジでっ!
ばっと顔を上げて後ろに立つエルを見た。
「貴族じゃなくても全然問題ないです!」
うわーん! エル様! さすが! さすエル!!!
「とても優秀で王宮で務めていたんだがな、陰険な嫌がらせがひどくて仕事が出来なくて結局辞めた」
「あーやっかみね……あるだろうねぇ……ブラダ・ツィブルカとか、そういう筆頭じゃないの?」
エルが苦笑を漏らす。まさか父がその人を虐めた人じゃないでしょうね?
「呼ぶか?」
「是非! 衣食住保障します!」
エルがくっと笑いを漏らしてからまた魔獣紙に書かれた魔法陣を取り出した。ペンとインクも。
「ちょっと机の端借りるぞ」
「どうぞ」
ついでに魔法陣を覗き込む。ふむ、伝達、手紙、送り先、送り主とか色々書かれている。エルが言っていた魔法具の手紙?
インクが渇くのを待って今度は裏に文字を書き始めた。ツィブルカの領主館に来て欲しい、と簡単に。え? それだけでいいの? ツィブルカに来てだなんて多分よくない噂あると思うんだけど、普通忌避しないかな?
エルが魔石を取り出し魔法陣と一緒に投げると魔法陣が光って、そしてひゅんと飛んで行った。いつもは煙のように消えるのに飛んでった! 一瞬で見えなくなったんだけど!
「うわー……どうなってるの?」
「どうなっているのか、説明は出来ん。ただ、あれは飛んで行って相手に届く」
「えー! どうやって届くんだろ? エル、私にも手紙ちょうだい! 見たい!」
「ちょっとしたらあいつから返事が届くだろ」
そうなの? どんな風に届くのかわくわくしながら待つ。するとひゅんとエルの前に魔法陣が浮かんだ。え? もう?
エルがその魔法陣に手を伸ばすとひらりと紙が落ちてきた。表に書いてあったであろう魔法陣は消えている。
マジ不思議世界! ホントこういうの見ると滾るよね!!! 早く私も魔法使いたいのにー!
「了解だと」
マジすか! ホントに来てくれるの? え? いいの?
「名前はハヴェル。ちょっとうるさいが、まぁ使えると思う」
「あーん! ありがとーーーー!」
隣にいたエルに思わず抱き着くとよしよし、と頭を撫でられた。
「お嬢様、いくらなんでもそれははしたのうございます」
テオドルが冷静に突っ込んできたので仕方なくエルから離れる。だってねー二人でいた時はこれが普通距離だったんだもの。エル大きいから安心感あるんだよねー。ツィブルカに戻ってくるまではエルに抱っこされてたし、センの上でもぴったりくっ付いてたし。
「あ、そういえばセンは元気かな」
「厩舎でよくしてもらっている。元気だ」
「よかった。センにも会いに行かなきゃ! 私、忘れられてないかな」
「センは頭がいいから大丈夫だ」
だよねー! いっつもセンは私に慈愛の目を向けてくるんだもん。小さい子っていう認識なのかもね。




