33.料理の改善をしよう。4
スープは大鍋で煮ていたけど、これも夜用なのでちょっとずつ味見。複雑な味になっていい感じになってたよ。
そして最後は!
「では味見はここまでで。これから今から食べるおやつを作ります!」
作ると言っても作るのは私ではなく料理人だけど。
「あの、ちょっと大変かもですが……頑張ってくださいね」
ホントマジ大変だと思う。すまぬ。でもふわふわパンケーキが食べたいのだ! 私は!
「卵を白身と黄身に分けてください。ええと……人数分だとどれ位かなぁ……」
料理人が六人、私、エル、テオドル、ダナで一〇人分。
「卵三個にしとこうかな……足りないよりいいよね。あとバター、小麦粉、砂糖、蜂蜜、かな……ええと、白身を三個分を全部だと大変だから一個ずつにした方がいいかも……」
料理人に少し恐縮しながら泡立ててもらう。三人が金物のボウルを抱えてカシャカシャとかき回していた。
その間に見習い君に小麦粉と砂糖を振るってもらう。空気を含ませないとふわっとならないからね! それも振るいなんてないから細かい網目の金物を捜してもらって、だ。ちょっと目が粗いような気がするがしないよりかはましでしょう。
ただ、細かい配分が分からないんだよね~……何しろ卵が巨大だし。たしか卵一個で小麦粉一〇グラムとかそれ位だったような気がするから、卵五倍として一五〇グラムとか? 計りもないし、単位もどういうのか分からないので適当目分量になっちゃうけど。なんとなく計量カップ位よりも少な目って感じでいっか。
牛乳も。牛乳ってあるか分からないからミルクって聞いたんだけど、出てきたのは何のミルクなんだろうね?
「お、お嬢様……まだ……」
カシャカシャカシャカシャ……。三人の音が響く。
「うん。まだまだ」
あ、卵白って冷やした方がよかったような……?
「氷ってあるのかしら?」
「いえ、ここに氷はないです」
「どれ位必要なんだ?」
料理人は氷はないと言ったが、エルが反応した。
「え? どれ位って……」
今料理人たちがカシャカシャしているボウルよりも大きめのボウルを見てあれに入る分と言ったら、エルがテーブルに魔獣紙を出して、ペンとインクを出して魔法陣を書き始めた。
わ! 魔法! 見ないと!
「あ、大きい塊じゃなくて小さいのをざくざくにして欲しい」
ごろんと大きいので出されたら壊すのに時間かかるよね?
「んー……魔法陣に入るか……?」
エルがぐるんと円を描き、文字を書き込んでいく。また円を描いて文字を書き込んで、真ん中にまた文字を書き込んで。
「ええと……ヴェンドラ……範囲……五〇シエル……形状三シエル……状態、氷」
「読めるようになっているな」
くすりとエルが目元を緩めた。
「こんなものか」
「はい! これに!」
私は大きなボウルを持ってきてもらってテーブルに置いてもらう。エルが腰のポーチから魔石を取り出し魔力を込めてからボウルの上に魔法陣と魔石を放り投げた。すると魔法陣が光って浮き上がり、そして消えるとざらざらと氷が降った来た。どこからどうやってなんで降って来るのか意味が分からない。
「おおおおおーーーー!」
その場にいた皆が声を揃えた。魔法すごいよね! かっこいい!
けど、今は氷で冷やすのが先!
氷をボウル三つに分けてもらって水を入れて、メレンゲを泡立てている下に置き、冷やしながらさらにカシャカシャと頑張ってもらう。途中料理人は交代しながら。……腕はホントすまん。泡だて器作ってもらおうか。金物屋? 鍛冶屋? どこなんだろうね?
白くなってもったりしてきたのでOKを出し、そこにふるった小麦粉と砂糖を入れてさっくりと混ぜてもらう。フライパンにバターを流し生地を流して……。
「お、お嬢様、なんですか……これ……」
「んふー! 多分幸せの味になると思うよー!」
皆がフライパンの周りでガン見する。ふわっと膨らんできたら慎重にひっくり返してもらう。そこはさすが料理人! 失敗しないで綺麗にひっくり返し、またおおおーと声が上がる。
「出来上がったらバターと蜂蜜をかけて食べてね。早く食べないとしぼんでいくと思うから出来上がってもらった人から順番に食べていっちゃって!」
まずは氷を提供してくれたエルから。エルは甘味もいけるのかあっという間に完食! もっとあるか? とまだ私も食べてないのに催促だ。
次はテオドル、その次はダナ、料理長、料理人が焼くのを変わって料理人全員に渡ってから最後が私。私は最後でいいよと言ったので。皆の顔が見たかったからね!
そして生地が余ったのでエルは皿を持って待っている。
「あーー……ふわふわ~」
口の中でしゅわっとなくなっていっちゃう。おいしい。こういうのが食べたかったのよー。生クリームたーっぷりで食べたい所だけどないよね。生クリームも泡だて器必要だし。やっぱ泡だて器作るか。
「お嬢様~本当においしいです。幸せの味ってこんな味なんですね。エル様ばかりおかわりしてずるいです! 私も!」
ダナが涙を浮かべているんだけど、いや、大げさじゃない? 確かに幸せの味とは言ったけど比喩だから!
「デニス、どうかな?」
料理長がふわふわのパンケーキをつついたりしながら、そして少しずつ味わう様に食べているのを見て声をかけた。
「おいしいです。これらが……皆がおいしいと言う料理なんですね」
でも腕が……と腕を擦っていた。それは分かっていた事だが、マジすまぬ。




