291.パティスリーのプレオープンです!
さて、やってきましたパティスリーノア! うん。名前に捻りがないです!
あ、センはちゃんと元の大きさに戻ってエルを乗せてきました。自在に大きさを変えられるそうです。
眷属様達と一緒だね。どんな魔法なんだろうか? 人が使う魔法とはまったく違うんだよねぇ。私も出来ればそっちの魔法が使ってみたかった……。言っても仕方のない事ですけども。
お店の看板には紋章があり、その下にお店の名前も入ってます。
外は透明ではないけれどガラス張り。壁がある所は白で清潔感があります。ちなみに紋章は黒で書かれていました。
いつもと同じ様にエルのエスコートで馬車を降りましたがなんとなく街が明るいです。周りを侍女達と護衛に囲まれているけれど隙間から街の様子を確かめみました。
「あ……」
壁が綺麗になっているのが何軒か。それに大通りの端に花が植えられています。
やだ、私が館に引きこもっている内に素敵な街ツィブルカに変わってきてない!?
「エル」
エルの袖をツンツンと引っ張った。
「ああ……街の様子、大分変わったな?」
エルが私の頭をくしゃりと撫でました。
本当に……エルと一緒に戻って来た時とは雲泥の差があるよね。
ちょっと感動しちゃった……。
これも全部エルがいてくれたからなんだよねぇ……資金作りもエルがいなかったら出来なかったし。マジでエルには感謝しかないです!
そして是非これからもよろしくですー!
……すでに領地の仕事まで手伝わされているみたいなんだけどいいのかなー?
さて、エルのエスコートでお店の中へ。
「いらっしゃいませ」
入り口にずらりとパティスリーの従業員が並んでいました。
「あ、あー! ディアー!」
「あー! 耳がっ!」
「聖女様以外にも耳が!?」
「おやおや、珍妙だのう」
「ノアの耳!」
眷属様達が大騒ぎです。ちなみに私は耳はつけてませんよ! ダナはつけましょうと持ってきましたが断固拒否しました。
いや、見た目が子供だからいいんだろうけど……自分がつけるのはイタイです。
私は愛でる方で!
なんかついノリでノア耳装備にしちゃったんだけど、皆さんいいんですか? 今更ながらちょっと申し訳なく思ったり……。
でも……。
「可愛いっ!!! 皆可愛いよーー!」
お姉様方のケモミミ装備メイド服姿が可愛いですっ! ヤバっ! ケモミミメイドカフェじゃん! 可愛いけどマジでいいのかっ!?
ちょっと男性陣の反応が気になりエルと騎士達に視線をチラッと向けた。
エルは別段表情は変わらず、というか若干呆れた様子っぽい? そして騎士達はソワソワしてた。肘で隣の騎士を突いたり目尻が下がってたりしてるみたい?
一応お店の警護でうちから騎士を二人とりあえずしばらく常駐してもらう事にしていたけど正解だね。
入り口から入ると冷蔵付きガラスケースにはケーキが並んでいるがガラスが透明じゃないのではっきりと見えず、ケーキの種類を絵と字で説明を書いたメニュー表みたいなのも用意しました。
何しろケーキも初めて見るお菓子だろうからねぇ。
お持ち帰りの場合はここで注文してお会計。イートインの場合は注文して座席で待つ。
「お持ち帰りでしょうか?」
「いえ、食べていきます」
一応お客様対応のテストです。私ずっと外に出られなかったので、接客の最終チェックですね。
「ではお席にご案内いたします」
ノア耳をつけたカトカがにこりと笑みを浮かべていました。なんだか従業員達もにこにこだ。
私はエルと眷属様達と一緒の席。ダナ達侍女三人、騎士達とテーブルを別れます。
お店の中では今日は皆がお客様役のお仕事なんですよ。護衛役はエルが一手に引き受けるという事で、護衛騎士達も今だけはお客様です。
「メニューをどうぞ」
メニューも絵と字で説明。絵は印刷がないから手描きなんですよ! 売り子さん達で何人か絵を上手に描ける人がいて皆でがんばったそうです。
……しかし、絵なんて描いたことなかっただろうにすぐに出来ちゃうんだから本当にさ! 能力色々ありすぎじゃない?
料理とかもそうだけど何故発展や改良を試そうとしなかったんだろうね? 料理だってちょっと変えただけで劇的に美味しくなるって事は素材は悪くなかったって事なのに。
マジで不思議すぎるよ。
「なんだ……? 見た事のない物ばかりだぞ……?」
エルがメニュー表を見て眉間に深い皺を刻み、睨んでいました。凶悪な顔になってます。
「食べた事あるのばっかりじゃー、……と思って」
試食とかしてたけどね、やっぱり真新しさは欲しいよね! 私のレシピから料理人達が考えたり進化させたりしているので。食材や素材を知っているのは料理人ですからー。私は不思議世界の食材は把握していないのでお任せするのが一番です。
ダナ達侍女三人もメニュー表に齧り付く様にして見ていました。
「飲み物も、何やら知らないものもあるが?」
「そう? チャイとかかな?」
「フロート? とか。なんだこれは?」
「ああ! あったねー。お茶にアイスを乗せるのがフロートです。冷凍庫も装備されているから出来るよねー」
「……………………」
エルが頭を抱えていました。
私的にはコーヒーフロートにしたかったんですがー。なんちゃってコーヒーフロートなんだよね。
ハーブティーでたんぽぽコーヒーってあったよね、と思い出したので似た感じの薬草がないかなー? と色々探してもらって焙煎してもらったり試したのですよ。
飲み物のお試しはエルには出してなかったから全然知らなかったんだね。
……エルには意図的に隠してたんだけど。
お店でびっくりして楽しんで欲しいもんね!




