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284/302

284.黒が増える度によくなっていくそうです。

「ねえエルー。なんでツィブルカの人達、うちの使用人も領地の人も色々な事受け入れまくりなんだろうね?」


 午後のサロンでまったり時間です。エルを拘束しっぱなしで申し訳ない。冒険者ギルドとか行ってきていいよーって言ってるんだけどね。

 この間魔獣の群れを斃してきたばかりなので行かなくても大丈夫だそうです。


 いや、そういう問題じゃなくて。

 しかも時間があるなら手伝ってくれ、とハヴェルがテオドルの仕事を持ってきてエルがツィブルカの書類を処理してます。

 いや、おかしいよね? テオドルも助かりますと任せているし。


 エル、いいのか? 外堀がさらに埋め込まれてると思うんだけど?


「知らん。ディアが普通じゃないから感化されたんじゃないか?」

「ひどっ!」


 エルがカリカリとペンを動かしながら適当に答えてます。まぁねーエルが知るわけないか。マハルナも来たばかりだから知らないだろうし。


「ダナはどう思う?」

 

「……変わっていくのが目に見えるように分かるから、ではないでしょうか? 以前にも言いましたがお嬢様が戻って来られる前まで館では侍女長が騒いだり理不尽な事をされたり、好き放題されていて館の中はいつも皆侍女長の顔色を伺いピリピリしていました」


 護衛の騎士達も頷いています。

 あー……きいきい声でヒステリックに騒いでたんだろうね。女主人気取りだったもんねー。


「街も、冒険者や粗野な警備兵が街中を跋扈して皆ビクビクしていました。人はあまり来ず領主も訪れない地でこの先どうなるか……誰もが先など見ず、日々食べていくのがやっとの者も少なくはなかったのです」


 私は……拐われて死にそうになったけど、その前は何もしてこなかったし、出来なかった。

 今だってまだ八歳だけどね。記憶が生えただけで。


「それが、あっという間に館も街も変えてしまったのですもの。館でも街でもどこでも人が皆やる気に満ちています。誰もがお嬢様が変えた事を知っていますもの。黒を忌避? お嬢様を守って下さっているのがエル様なのも誰でも知っていますもの」


 ダナがにこりと微笑んだ。


「黒のペガスが現れ、さらに黒を皆が特別に思ってもおかしくはないです。ノア様、ペガス、館の者達の制服、黒が増えていくと街もさらに回っていきます。働きたくとも働けなかった人が今ではどこでも人手不足です。ミルシュカもベンテも女性というだけで仕事を任される事はなかったのですが、今ではお嬢様と直接お話をされて依頼を任されますし」


 ん? ミルシュカはそうかな? と思ってたけどベンテも? 外向きにはやっぱり男性が、という事か。テオドルもミルシュカが来た時店主は? と言ってたもんね。

 後から聞いたけど、あの日店主がたまたまお腹を壊して来られる状態じゃなくてミルシュカが来たらしいけど。

 街の人達にもやっぱり色々事情はあるんだね。

 それにしても、黒が増える度にってのはたまたまなんでしょうけど。そう思われているならいっか。


「女性が働きやすいようにと保育所も開かれ、しかも保育所に来た子供達には文字まで無料で教えられる。しかも楽しく」


 子供達にしたらカードゲームみたいなものだもんねー。


「そっか……皆がよくなっているならよかった」

「はい。お嬢様がなされる事に間違いはないですから。街の者も皆知っています」


 おおう……それはかえってプレッシャーになりそうなんだけど!

 まあ、黒持ちがとか女のくせにとか言わない街になるならいいね。


「エル様はお嬢様を守りながら領地の仕事までされて……お強いだけでなく優秀なのですね……」


 ほう……とダナが悩ましげな溜め息を吐き出した。うん? どうした? エルがカッコいいと見直したのか?


「さすがお嬢様の……」


 あ、とダナが自分の口を押さえた。いや、そこまで言ったら後ろに何が続くか察するよ。


「……ちょっと待て」


 エルが愕然とした顔をしていた。


「領地の仕事ではない! テオドルやハヴェルの手伝い!」


 ……普通知らない人に、他領の人に領地の書類は任せないと思うけど? 私でもしていないのに。まぁ私はガキンチョだし女って事もあるからだろうけど。


「俺は冒険者だぞ?」

「え? でもお嬢様の婚約者になられるんですから本当は貴族ですよね? 街の者も皆知っておりますよ?」

「え?」

「は? なんだ……と……?」


 街の人達までエルが貴族って知ってる? は? そして婚約者! 違うよって言ってるのに全然否定は浸透しないね。


「……婚約者でないのは館の者は知っているだろうに何故……」

「まだ、なっていないだけ、ですよね?」


 こてりとダナが首をかしげる。

 ……ダナがこれじゃ噂がなくなるはずないような?


「そういえばエルにずっと守ってやる、って言われたなー」

「あれはっ!」

「あら! 素敵です! さすがエル様ですっ! お嬢様をよろしくお願いします」


 ダナが顔を紅潮させてにこにこになっています。対称的にエルは頭を抱えてあーうーと呻いている。

 守ってやるとは言ったが、そういう意味じゃない! とかそんな事を思っているのかな?

 でも言われた事は本当だもーん! 私がガキンチョですから。周りがいくら何を言っても今の所どうもこうもないですけどね。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 外堀どころか内堀まで完全に埋められた状態で今更ですよね~w
[一言] お城の人たちは領主様が邪魔で正式な婚約できてないだけとか思ってそう
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