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28.エルってさー可愛くない?

 な、何を言っているんだ? と言ってエルは崩れ落ちた。椅子から。床に膝をついて項垂れている。


「まー、お婿っていってもツィブルカがこの先どうなるか分かったものじゃないんだけども。ダナ、つけてくれる?」

「は、はい」


 ネックレスを持つダナの手が震えている。え? そんな震える位高価なの? ヤバ。どれくらいの価値があるの? ウン千万とか? まさか億とかじゃないでしょうね?


「……………………俺の目、の色?」

「そうだよー。綺麗だよね!」


 復活したエルが椅子に座り直しながら聞いてきた。本当に分からなかったのか。


「俺の…………」


 なんかすごいダメージを受けてるんだけどなんで?


「あの、お嬢様……一般的にお相手の目の色の宝石をいただくのは婚約者とか結婚相手で……求婚の時とか……」


 こそりとダナが頬を仄かに赤くしながら教えてくれた。

 あー……うん。


「私もエルに青い石を送ればいい?」

「ち! 違う! そんな意味ではっ!」

「分かってるよー。まさか私みたいな子供にエルは欲情するわけないよね」

「よっ…………ディア! そんなはしたない事は言うものではない!」


 エルってば顔だけじゃなく耳まで真っ赤にしているのだが可愛いじゃないか。やっぱ婿にもらうか?


「でも私いずれ婿に誰かもらわなきゃいけなくなるだろうし。私兄弟いないからね。女性で爵位とか持てるの?」

「いや、女性は叙爵出来ない」


 でしょうね。魔法も女性は使わないとか言ってた国だものね。

 

「ねぇ、婚約者になったら二人きりとかにもなれるの?」


 ダナに聞いてみる。


「時と場合によります。密室に長い時間二人きりというのはさすがに看過できませんが」

「…………エル、真面目にお婿考えない?」

「俺は冒険者だけど?」

「ああ……うん」


 でも問題ないよね? と思っていたらエルがじろりと睨んできた。


「何に気付いている?」

「え? 何の事?」


 ここはしらばっくれるのが得策でしょう。エルも多分私が普通じゃない事に気付いているんだろうし。変にエルを突いて私が返球されては堪らない。


「お嬢様、エル様と婚約されるので? そのような立派な魔石のアクセサリーを贈られましたなら確かに……お嬢様もお慕いのご様子ですし私も異はございません」


 テオドルが口を挟んできた。


「おい! 何故推奨する!?」


 おお。エルが突っ込んでいるぞ? そしてテオドル、エルじゃないけど本当に何故推奨する?


「エル様であれば問題ないかと判断致しました」

「…………」


 だてに家令じゃなかったんだね。エルが貴族だと気付いたか。案外うちの家令抜け目ないな。


 おちゃらけていると食事が運ばれてきて、また微妙な味の食事の始まりだよ。あー……今日時間あれば厨房に行ってみようかなー。マジでキツいよ……。材料が変わっても味付けが塩しかなくて、料理法がどの料理もほぼ変わらないんじゃ飽きる。

 この世界の人達不満ないのかしらね……。元日本人にはキツすぎる。醤油とか味噌とか……ないよね。うん。分かってる。

 街で見たガリガリに痩せた小さな子達を思い出せばそんな贅沢な事とは思うけど。

 あの子達もお腹いっぱい食べられるようにしなくては。


 とにかくまずは館の人選をどうにかしないとね。私の害になるような使用人はいらぬ。


「テオドル」

「はい、何でございましょう?」


 テオドルの態度が昨日からがらりと変わったと思う。顔色が悪く、おどおどと挙動不審だったのに今は別人の様にきちんとした家令の態度だ。


「使用人との面談についてどうなっています?」

「はい、私から見て問題ない者からお嬢様にはお会いしていただこうかと。あの、館の使用人全員と、面談をなさるおつもりでしょうか?」

「そのつもりです。館を維持する為の最低人数が分かればそれも教えて」

「かしこまりました」


「うん? ディアが使用人の面談?」


 エルが運ばれてきた食事を上品ながらもパクパクと食べながら聞いてきた。


「そう」


 使用人が信用なるか自分でまずは見ないとね。今はテオドルとダナは一応大丈夫かな、とは思っているけど。


「何しろ改革していかなきゃないから」


 いちいち邪魔してきたり、動かない使用人だったりしたらいらないもの。

 後は、文字はどうにか読めるみたいだし、帳簿の確認もしたいよね……って! やる事が多すぎるー! なんで八歳でこんな事になっているんだ!?


「ブラダ・ツィブルカに報告しなくていいのか?」

「へ? 何を? 領地に来ない人には関係なくない? 今までだって帳簿だけだったんだもの。これからだってそれでいいじゃない? あ、でも……そうだなぁ……万が一税収が増えた時はここの領地の分はブラダ・ツィブルカを通さずに国に直接納税出来るようになるといいなあ?」


 エル、そういう融通って利かせられる? とエルに視線で問えばエルは私を睨んだ後にはぁ、と溜息を吐き出した。


「……税収を増やす事が出来れば、な」


 おおう! やっぱエルって上級貴族の出だね。しかも中央のトップクラスって事だよね? わー助かるー!


「がんばりまーす。あ、婿に来るんだからエルにも頑張ってもらおー」

「誰が婿だっ!」


 そう言いつつもエル嫌がってはないよね? 嫌悪感なんて全然見えないもん。

 でも、まさかロリじゃないよね……?

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] やったぜ、お婿さんだ!!
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