260.エルがお金を受け取ってくれません!
とりあえずダナも騎士達も無事魔力操作を覚えたみたいです。じゃあご褒美に魔法具の手紙をあげましょう。魔石に魔力を込めただけで届く様に、宛名は私宛で。何か緊急時とか用があったら使ってちょうだい。
それ以外は知らん。
あ、でもエルが私にしてくれた様にお試しに、と使わせてあげたら感動してたよ。うん! 分かる! 魔法陣が浮き上がるのってわくわくするよね! それを自分が使っているなんて! と感動する気持ちがよく分かる。
基本の魔法陣の外枠は全部エル製だけども。
元々からこの世界の人達も感動する位って……本当に魔法貴重だね。それをほいほいと使うエル。やっぱ規格外じゃん! そしてその規格外に規格外と言われる私。
うん。そこは考えるのをやめよう。
さて、明日はパティスリーの売り子の研修があるね。午前にスラヴェナ様とのお勉強もあるけど。それから何日か後にはパティスリーのお店の確認もするらしい。テーブルとか色々まだ揃ってはいないけど、見て欲しいそうで。楽しみだね!
騎士宿舎も工事が始まるみたいだし、保育所も保育士候補二人が色々動いているみたい。今日は歌を歌いながらの手あそび歌も教えてきました。
保育士二人は今まで歌った事がないと、言っていたけれど、あっという間に覚えたし大丈夫でしょう。遊び道具も増えて、クレヨンも保育所で増殖していた。
街にどんな噂が流れているのか怖いんですけど。一個作ったら必ず大量に作っておけ、とでもなっていないか?
しかも存外それが間違っちゃいないというね……。積み木も増産するみたいだし。やれやれ。
ボールは魔獣の革を使ったのでダリボルの所ですが、そりゃ勿論あっという間に納品されてたし。私がガンガン上から注文していくというよりも、下から次は? 次は? と言われている気分なんですけど。
クレヨンで色をつけた紙芝居・改に保育士二人が興奮し、二人で読み上げの練習に力を入れていました。いいね! がんばって。
スロープも出来ていて! 着実に保育所としていい感じになってきたね。
明日から保育士二人と二人の母親も来て、四人でお試し保育をはじめるみたいです。私はちょっと覗きに行く位かな。
とりあえず保育はお昼付きで三の鐘から六の鐘まで、大体私的に午前一〇時から夕方四時の六時間でやってみるみたい。今日預かるお子さん達のお母さん達が働く時間がそれ位だそうなので。
そういう所は私は分からないのでお任せします。
将来的にはニの鐘から七の鐘まで保育所をしたいのだと二人が言うんだけど、……一〇時間労働なんですけど!?
保育士さんを増やして交代制みたいにした方がいいかなぁ……? 見つかるかしら? ちょっと大きい子用の先生も欲しいのにー!
あとはまた新しい紙芝居とか、遊びとか考えて思いついた時に教えるって感じかな?
余裕が出てきたら孤児院併設の保育園の保育士の育成もしないとね。
明日はパティスリーの研修に来る予定で子供がいる人には子供を連れてくる様に言ってあります。三の鐘に連れてきてもらって、午後にまた来なきゃならないから二度手間だけど、従業員予定の子はとりあえず保育所で優先して預かる方向なので、慣れる為にも来てくれないとね。
「あ!」
そういえば! 唐突に思い出したけど! エル、パジャマ着てくれた? と、ここで聞きたいが聞けないよね。仕方ないからまた夜に電話しよーっと。
なんか夜寝る前にエルとお話すると落ち着くんだよね……。すっかり家族枠だよ。
ちらっとエルの顔を見た。今日も私についてきてくれてます。保育所だからいいよ、って言ったんだけど保育所にも興味があるみたいです。
そして眷属様達も今日はついてきています。目的は紙芝居! 私が読んでいたのを聞いていたはずなのに、今保育士二人が交代交代で練習している所なんですが、眷属様達は紙芝居に夢中になってまだ見て聞いて楽しんでいるようです。
保育士二人も観客がいるので練習がやりやすいみたい。…………動物の姿だけど。
……動物の姿なのに紙芝居に夢中になってるっておかしいよね!?
なんで保育士二人も突っ込まないのだろうか……?
読み終わると眷属様達が拍手をしてるんですよ? 変でしょ!?
「小さい子だけでなく洗礼前の大きい子用の学校もしたいんだったな?」
エルが保育所の点検が終わったのか私の側に戻ってきました。
「そうなんだけどねぇ……先生見つかるかしら?」
「どうだろうな? はっきり言って読めない。初めての試みだからな」
ですよねー!
「他領に移民募集をかけるか? 人が来るかどうかは分からないが」
「……それなら……黒持ちで仕事がしたくても出来ない人とか、孤児院出身の人とかに来て欲しいけど……難しいよねぇ……そういえばエル、アロイス達に支度金渡してたってアロイスが言ってたよね! 払わないと!」
「ほんの少しだからいい」
「ダメだよ! もう! エルは全然色々受け取ってくれないんだもん!」
「いや、魔法陣の分があるだろう? 俺の方がディアの発案なのにただで貰ってる状態だって」
ぽこって頭を軽く叩かれた。ああ、そういえばあったね。でも! どれ位入るか分からないし! まだ入ってきているわけでもないでしょうに! もう!




