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254.やっと帰れます。

「つ、疲れた……」

「大丈夫か?」

「いや、そういう疲れじゃないというか……オバ様方の相手がね……」

「あ、ああ……なるほど」


 やっと帰路です。ツィブルカに着く頃は夕方になっているでしょうね。

 エル達が作業を終えるまで結構時間がかかり、その間ずっと私はオバ様方に捕まっていました。

 オバ様方というのは貴族も庶民も関係なく、超越した存在ではないだろうか? なんなら現代でも過去でも、日本だろうが異世界だろうがどこでも同じというか……。


 噂話とか世間話とか大好物すぎだよね。


 やっと解放され、センの背中に乗った空がこんなに落ち着けるとは……。

 ふぅ、と溜息を漏らすとエルが後ろで笑ったらしい。震えが伝わってきた。


「改めて、エル、ノア、セン、ハムちゃん、子青ヘビちゃん、小鳥ちゃん、ありがとう。小鳥ちゃんなんて昨日来たばかりなのに」


 エルを抜かし一人ずつ頭を撫でていく。左肩にノアとハムちゃん、右肩に子青ヘビちゃんと小鳥ちゃんが乗ってます。センには手を伸ばして(たてがみ)を撫でました。


「僕は僕のお仕事だからー。でもディアにありがとうっていわれるの嬉しいー! 僕の方こそありがとー」


「こっちこそ。ディアのリボンがあって本当に助かった。小さな傷だけで済んだし、体力も()った。終わった後も浄化と治癒をかけてくれたしな」

「そんなのは当然じゃない! 私なんてただ待ってただけだもの。リボンが役に立ったのは本当によかった!」


 リボンがあったから小さい傷だけで済んだとエルが言う。やっぱりあんな数を相手にするのはエルだってキツかったって事だよね? 私、いい仕事してたよ! 狙ったわけじゃなくてたまたまだけども。


「ノア、原因は分かったの? 何か変だって言ってたじゃない?」

「ううん、分からなかったー」


 ノアがぷるぷると私の肩に乗ったまま首を横に振った。


「なんかねー操られている? みたいな嫌な感じだったのー。普通は魔獣より僕の方が上位だからー僕の言う事聞くはずなんだけどー全然言う事聞かないしー。僕の言う事が聞こえないみたいでー」


 どういう事?

 振り返ってエルの顔を見るとエルが眉間に深い皺を刻んでいた。安定の強面になってたよ。最近は強面から大分脱却してたのに……。


「近くに、町の者以外の魔力は感知していない」


 誰かが扇動した? 魔獣を? あ、魔昆虫か? 私の中ではアレは魔獣では! 断じてない!


「……なんか、私が狙われた時みたいに訳がわからないね。何が目的だったんだろう? ノアが自然じゃないと言うなら今回だって狙われたって事でしょう? 何を狙ったのかは知らないけど。王都で父が何かしたとか?」

「……さあな」


 また何かスッキリしない終わり方なのか。それともツィブルカを狙ったわけでもなく無差別なのか?


「今回みたいなのって過去もあった?」

「ないかなー……多分。魔獣が急激に増える事は割と頻繁にあったりするけどーちゃんと僕の言う事聞くしー」


「本当に、変だったよね」

「斃してても抵抗がないというか」


 他の眷属様達も頷いている。長生きの眷属様達が変と言って、そして原因が分からないなんて……。


「あまり考え込むな。何か起きてもその度に排除していけばいい」


 きっぱりとエルが言い切った。カッコいいね! 尤もそんな事を言い切れる自信と実力がなければイタイ人だけど、エルは実際に私の身に降りかかる火の粉をことごとく排除していってくれているのだ。


「排除って言うけど、排除してるの私じゃなくてエルだよー」

「それならこれから先も俺が排除していこう」


 …………ねえ? これってプロポーズですか?


 そう突っ込みたかったけど、多分エルはそんなつもりが全くない。そして突っ込んだ場合エルが打ちひしがれるだろう事が簡単に予想出来たので、ただ今お空の旅の真っ最中で手綱を握るエルが固まったら困るよね、と私はスルーする事にした。


「素敵だねぇ」


 小鳥ちゃんが羽をパタパタさせて喜んだ。ちょっと待って、小鳥ちゃん。何をぶっ込むつもりかな!?


「狙われる聖女様を守る騎士! あ、騎士じゃなくて冒険者? さすが女神様が選ん……ギャンっ」


 小鳥ちゃんが子青ヘビちゃんの尻尾攻撃を受けて吹っ飛んでいきました。


「こ、小鳥ちゃーんっ!? センっ! 小鳥ちゃんがーっ!」

『大丈夫ですよ? 風の眷属様は飛べるんですから』

「……あ、そうだね。姿を大きくも出来るもんね」


 魔昆虫討伐の時も自分で飛んで行ってたもんね。それにしても、なんか小鳥ちゃんが女神様がどうのって言っていたけど……。そんな事より……。


「子青ヘビちゃん、容赦ないのね……」

「風のは割とウッカリさんだからね」


 ノアもハムちゃんも頷いている。


「それにしても綺麗に吹っ飛んでいったな……」


 エルがくつくつと笑っていた。確かに綺麗にびゅーんっと飛んでいったよ。どんだけ力込めたんだろうね、子青ヘビちゃん。


「なんか小鳥ちゃんが女神様がどうのって言ってたけど……?」

「ディアは気にしないでー?」


 気にしないでーと言われてもねぇ。気になるよね? でもポロリしようとした小鳥ちゃんを子青ヘビちゃんがぶっ飛ばし、ノアも気にするなと言うなら教えてもくれないんだろうね。


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あの勘違い転生令嬢が何か仕掛けて来たのかしら?ちょっと気になるけれど、眷属様が続々と集まり、エルとペガスがいるから大丈夫だと信じる!
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