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251/302

251.目が覚めたら町長の家でした。

「ん……ん……?」


 あれ? ここどこだっけ? 見た事のない天井、と思ったところで昨日クシュタの町に来たんだったと思いだした。


「ディアー、おはよー」


 あ、ノア達眷属様が皆すぐ傍にいたよ。よかったとちょっとほっとした。

 そういえばエル達が帰ってきて安心してすこんと寝ちゃったんだったわ。それでここはどこだろ?


「皆おはよー。疲れてない? 大丈夫?」

 

 大丈夫だよーと眷属様達がいつもと同じようにほわほわと答えてくれている事に本当に安堵した。


「エルは?」

「もう起きて一階にいるよー。ここは町長さんのお家だってー」


 あ、そうなんだ。

 こぢんまりとした部屋。この小さな町の町長の家の客室なのだろう。調度品などが揃っているが普段に使っている様子がない部屋だ。

 私は外套を脱いだだけで寝かせられていた。エルが運んでくれたんだろうね。うちの館ならまだしも初めて来た場所で誰かに私を預けるとかしなさそうだもん。


 のそのそと起き出しベッドにかけられていた外套を羽織る。一番最初にエルに買ってもらった外套だ。守護の魔法陣が施してあるからね。

 二重三重にエルがかけてくれた守護の魔法陣で私は守られているのだ。


 ちょっと乱れていた髪を手で撫で付けて整えてからそっとドアを開けた。

 私のバッグにも身支度用の一式を入れておいた方がいいかもね。着替えとかも。こんな風に突然出かける事になるなんて思ってもみなかったからなぁ。

 せっかくの無限収納だもの。いつ何があっても対処出来る様にしておこうっと。


「ディア、起きたか」


 階段をエルが上がってきた。魔力感知で私が動き出したのを察知したのかな?


「エル、おはよー。大丈夫? 疲れてない?」

「おはよう。大丈夫だ。ディアから貰ったリボンがいい働きをしてくれてとても助かった」

「そうなの? それならよかった」


 エルがエスコートの為に手を差し出してきて、私はいつもの様に手を添えた。

 ずっと何時間も戦い続けてくれた手だ。


「エル……ありがとう……」


 エルがいなかったらこの小さな町はなくなっていたかもしれない。さらにこの町だけでは済まなかったかもしれないのだ。

 う……なんか目が潤んできちゃった。多分エルのいつもの顔を見てやっと心から安心したんだな……。


 エルは私の様子を察し、エスコートの手を離すと横から包み込む様に肩に手を回してきた。


「ディアもがんばったな」


 やだもう。優しい言葉なんて言われちゃったらさらにうるってきちゃうじゃないのよ。私なんか何もがんばっちゃないんだから。結局私がしたのはただ待ってただけだもんね。


「エルも、皆も何ともなくてよかった……」

「大丈夫、余裕だと言っただろう?」

「言ってたけど! あんな一面真っ黒の中で戦うなんて! 一匹一匹が相手だったら余裕かもしれないけど、囲まれちゃうわけだし! 心配もするよっ」


 よしよしと頭を撫でられた。


「……町長がな、町の人達が朝食を用意してくれているんだ」

「ん?」


 ああ……味気ない食事か……。キツイねぇ。

 エルはわざと話題を逸らしたのか、私のしんみりとした気持ちがあっという間に霧散したよ!


 再びエルにエスコートされ、私は町長の家の一階に降りた。


「おはようございます、お嬢様……お眠りになれましたか?」


 町長と町長の奥さんが心配そうに私を見ていた。


「おはよう。大丈夫です。ぐっすり寝ちゃってました」


 笑いながら言ったら町長夫婦も笑顔を見せてくれた。


「この度はクシュタの様な小さな町の為にわざわざ領主様のお嬢様自らいらして下さるなんて、ありがとうございました」

「当然の事ですから礼はいりません」


 その当然の事をやっていない領主がいますけれどね。テオドルがうちを留守にしているのも納得だわ。こんな風に何かあったらテオドルが手配して、領主である父の指示を仰いだりしてたって事でしょう? そのほかに領地の執務もだしね。……そりゃ大変だわ。


 そこにひゅんっと魔法陣が飛んできた。手を出すとマハルナからで大丈夫でしょうか? という心配の声だった。


「エル、マハルナからだった」

「心配していたんだろう。返してやるといい」


 私はポーチからマハルナ宛の手紙を取り出し、魔石に魔力を込めながら言葉を紡ぐ。


「リーディアです。大丈夫だよ。エルとノア達で全部殲滅もしちゃったみたい。誰も怪我も何もしていないから心配しないでね。今日帰るから、皆によろしく言っておいてちょうだい」


 そして手紙を飛ばしてやるとまたすぐにマハルナから戻ってきた。ご無事でなによりです、お帰りをお待ちしてます、と。

 うん。本当に何もなくてよかった。最初にアレを見た時はマジで! びっくりしたもん。あんなのどうやっつけるの? と思ったらエルと眷属様達だけで撃退ってすごすぎじゃない!?

 やっぱどう考えても転生者の私はチートではないって事だね。ちょっとがっかりだよ。

 まぁ、魔法がある世界だけれども、ちょーっと違う魔法だからなー……。魔法攻撃が使えない魔法の世界だもんねぇ。女神様の意向だから仕方ない。でも確かに魔法攻撃などない方が平和かも。だって、エルがもし魔法攻撃まで使えちゃったらさらにとんでもないって事だよねぇ?


 

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