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25.侍女長から話を聞きましょう。

 テオドルにはそのまま残ってもらって侍女長の話を一緒に聞いてもらう事にする。

 さぁ! とっちめてやりましょうか!

 フンスと鼻息を荒くするとエルが、くっと声を漏らし顔を背けていた。これ、また笑ってるな?


「ダナ、侍女長を呼んできてちょうだい」


 ずっと部屋の入口近くの壁に控えていたダナに声をかけ、テオドルは私の右側の席に移動してもらう。そしてダナに案内され、隣の部屋で待機していた侍女長は不満顔を隠しもしないで入室してきた。

 不満顔ってね。しかも入って来るなり私を睨みつけてくるし。

 ぴしりとエルの方から冷ややかな空気を感じる。どうやら怒っているらしい。確かに使用人にあるまじき態度だよね。


「侍女長、私がいなくなってからの事の説明を。昨日あなたは私が下男に連れ去られた所を見ていたと言いましたがその後のあなたの対応は?」

「あら? そんな事私言っておりません。お嬢様はいつもふらりと姿を消すのでいつもの事だと思っていただけです。下男といなくなっただなんて貴族令嬢としてのご自覚がないのでは?」


 は? お前昨日言っただろ。


「お嬢様、横からすみません。私も昨日侍女長が下男と、と言っていた事は聞いておりました」


 ダナがおずおずと口を挟むと侍女長はぎっとダナをすごい顔で睨みつけた。うわー。


「そんな事知りません!」

「…………下男に連れ去られた事を知らないにしてもその後の対応の事は? あなたは何を考えどうしました?」

「家令のテオドルが留守だったので帰ってくるまでは何も。ブラダ・ツィブルカは変に事を大きくしたり騒ぎ立てる事を厭うておりますから」


 え? コレ、どうしたらいいの?


 ちらっとエルに視線を向ける。なんか私もうお手上げなんだけど?


「お嬢様は本当にはしたない! そのような平民に目を向け、いなくなったのも下男とですし、一体何があったんだか!」


 は? ……いやーなんかもう、さー……。


「ひっ!」

「お前は一体誰に向かって口を開いている? 聞かれた事にもまともに答えられない、主のはずのリーディア様にそんな口を開くのが侍女長? 何をふざけた事を言っている? 領主の娘にそんな口を開くなら打ち首でも文句はないはずだな?」


 エルが目にも留まらぬ早さで剣を手に侍女長の首に突き付けていた。あっという間。いつ動いたのか全然見えなかったよ!


「そうね。解雇の上、牢行きかしら? ただの解雇だけじゃこのまま野に出したら私のあらぬ噂をぶちまけられそうだし」

「ディア、ぬるい」


 ぬるいって言われてもー人の命奪うのはちょっと……。いくら気に食わなくてもそれはねぇ。元日本人で平和な世界で暮らしてた人間に人の命を奪うのはキツいです。


「テオドル、侍女長を解雇するのは可能ですか? ブラダ・ツィブルカに報告とか承認とか何かいるのかしら?」

「いえ、家令の私はブラダ・ツィブルカに直接雇用されておりますが、侍女などは私の責任で雇用解雇が可能です」

「な! 何よ! 別にこんなとこ! 元々辞めるつもりだったし! お嬢様が帰って来なければ!」


 はい。黒ーーー!


「エル、お願い」


 エルはさっとズルいバッグから紐を取り出して侍女長を縛り上げた。縛り上げたのはいいけど、どうするの?

 

「ディア、俺に任せてもらっても構わないか?」

「……いいけど……何するの?」

「拷問」


 にこやかにエルが告げた。


「家令、牢があるだろう? 拷問部屋もあるな? 案内しろ。あ、家令でなくていいか、廊下の護衛! 中に入れ!」


 はい、エルにお任せしますー。なんかエルがここの館の主みたいに命令しまくってるんですけど。ま、いっか。テオドルがいいのかと私とエルを見比べておろおろしているが、私は私の事を守ってくれるエルを信じているので問題はない。


「侍女長を牢に入れておけ。午後から拷問する。ディアの誘拐に噛んでいる可能性がある」


 護衛の騎士は、は! とエルに従い、縄に縛られた侍女長を連れて行った。侍女長はずっと金切り声で何か騒いでいたけれど知らぬ。うるさかったのか、途中で護衛に猿轡もかけられていた。


「何か聞き出せるといいな」


 エルがうきうきと言わんばかりの上機嫌に見える。なんでそんなに上機嫌なの? そしてたった何日かでエルの表情がものすごく豊かになっている気がするんですけど? 何故? ……悪い事じゃないからいいんだろうけど。


「ディア、午後は何をする予定だ?」

「お勉強」


 そう。帳簿を見るにも文字が読めなくては! 午後はお勉強の時間にするつもりなのですよ。


「じゃあまず昼を食べて、ディアは勉学、俺は拷問で聞き出してくる」

「…………お願いしまーす」


 私は報告を聞くだけでいいです。

 いいけど、本当に侍女長は一体誰と繋がっていたのか? 私が帰って来なければってね。帰って来ない前提って事だもんねぇ? 何故、どうして? それが午後には分かるのか? 田舎の領主の我儘娘をどうにかしようとする誰かは一体誰なのか?

 あの侍女長と、私を誘拐した下男。どちらも頭はよくない。どちらも余計な事をぼろぼろ零しているんだし。あんなのを使って私をどうにかしようとする誰か。

 …………一体誰なんでしょうね。


 

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