表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/302

21.エルと打ち合わせです。

 やっぱりずっと料理はイマイチのまま終了でした。キツい……。


「エル、ちょっとお話ししたい」

 

 エルが頷き食堂からサロンに移動した。ソファというか、木の椅子にクッションが置かれた長椅子って感じで、私の向かいにエルが座るとダナがお茶を入れてくれてちょっとだけほっとする。お茶はハーブティみたいなものらしい。ハーブがあるならお肉とか少しましになるんじゃないかな?

 人払いをしてエルと二人で話したいんだけど、許されるのかしら? ダメ?


「ちょっと相談したいんだけど、二人っきりって……」

「ダメだろ」


 ぼそりとエルに呟いて聞いてみたが即却下だった。


「めんどくさーい」

「そこは俺も同意するがな」


 エルが苦笑を漏らしている。


「私まだ子供だし。エルもずっと抱っこしてくれてたのに」

「洗礼前とはいえ貴族社会では無理だな」

「このまま放置してたら平民落ちできるかも?」


 エルがぎょっとした顔をしたので苦笑を漏らし言葉を付け足す。


「……一応は、しないように頑張るよ」

「そうか」


 ガキンチョなのに貴族令嬢ってねぇ……ホントめんどくさいね。


「じゃあこっそり小声で話ししよ。ダナ、離れていて」


 ダナはかしこまりました、と部屋の端の方に移動した。部屋が広いのでこれなら小声で話していれば聞こえないか? 別に信用出来るのなら聞かれてもいいんだけど、今はまだ本当に信用なるか確信はないのだ。


「明日俺は早い時間にギルドに行ってくる」

「街に入った時に寄ればよかったのに」

「いや、ディアを連れて行くのはちょっと、な」

「あー……確かに。歩いてても絡まれたもんねぇ……本当に治安悪いね。まぁそれも分かるけど」


「分かる?」

「そりゃあねぇ……領主が帰って来ない、領地が荒れる。荒くれ者が集まる。治安が悪くなる、でしょ? 孤児なんかも多いかも。スラムもあるかも……はぁ……」


「……家令と侍女長? との話し合いには? 俺は同席した方がいいのか?」

「してもらえると助かります」

「いいのか? 内情を知られる事になるぞ?」

「いいよぉ。私一人でどうにかするなんて無理だもの」


 ふむ、とエルが考え込む。


「家令は分かるが侍女長? 姿を見ていないが?」

「いやー……侍女長という名の勘違いされた人だったので。あ、私が下男と二人きりででかけたとか言ってたんだよねー。それ知ってるの誰がいるんだろうね? テオドルにはまだ聞いていないけど」


「何!」

「まだ問いただしてはないよ? スルー、じゃなくて。その場では聞き流した。明日詳しく聞き出そうと思って。エルにも聞いて欲しかったし。なんかね……」


 私が部屋に行ってからの事をエルに話した。


「まるで女主人みたいな態度だったのよ。ないでしょ」

「……ディアが信用ならないと言ってた事がよく分かるな」

「でしょ? 家令のテオドルは一応大丈夫そうな感じはするんだけど。でも今まで私放置されてたのは事実だし。テオドルって留守にしているのが多かったみたいなんだよね」


「俺も案内された時にちょっと話したが、お嬢様を助けていただいたみたいでありがとうございましたって恐縮していた」

「私がいなくなってどんなだったか聞いた?」

「少しだけ。どうもディアが言う様に家令は留守にしていたようで帰って来たのが一昨日だったらしい。お嬢様がいないって大騒ぎにはなったらしいが」

「一昨日、ね……」


 エルと顔を合わせて溜息を吐き出す。一昨日ってすでにエルに助けてもらってたよね。


「明日の話し合いに俺はディアの護衛として後ろに立つ様にするか」

「護衛じゃなくて、後ろじゃなくて隣にいて欲しいんだけどな」

「ダメだろ」


 またダメ出しだよ。むーっと口を尖らせるとエルがふっと笑う。


「問題があるなら口出しはするが」

「うん。お願いします」


 巻き込んじゃってるんだけどエルにも目的あるって言ってたしね。目的がツィブルカを潰すんだったとしたらちょっと猶予を下さいなって感じです。

 エルに父親の事とかも聞いてみたいけど、とにかく明日家令のテオドルと話をしてみてからかな。


「テオドルが一昨日帰ってきてそこから大騒ぎになってたというならカレシュのギルドに知らせがなかったのも分かるか。それにしてもテオドルが帰ってくるまで問題になってなかったのだとしたら下男と出かけたと言っていた侍女長って……」


 殊更声を小さくして言うとエルが頷いた。


「……どう考えてもおかしいのは確かだ。今回の関連の事は俺に任せてもらってもいいか? それにしても、犯人に繋がっていなかったとしてもツィブルカの侍女長の言葉ではありえない」

「ですよねー。お任せしますー」

「…………ディア、言葉が乱れすぎだぞ。きちんとした言葉が使えるのに」


 わーお! またお小言が飛んできた。


「だって、気軽に会話出来るのエルしかいないんだもん。今までいくら我儘放題だったとはいえ使用人とは距離があるし」


「我儘放題、ね」


 本当なんだよ? と私が苦笑を浮かべるとエルもまた苦笑を浮かべた。どういう意味があるんだろうね? やっぱりなんか気づいてるっぽい? エルの事情って、目的って何なのだろうね。

 とりあえず今は協力してくれるらしいので安心できるけど。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ