168.何故かおやつの時間になりました。
「…………お食べになりますか? 別のケーキでよろしければお出しますけど」
私のバッグの中にもエルのバッグの中にも色々料理やらデザートやら入ってますからね。あ、ノアのバッグにもか? 密かにノアは一人で厨房に行っておねだりしているそうです。そしてセンにも分けてあげているらしいです。
出していいの? とエルに目で問うとエルが肩を竦ませ、お姉さんの方を顎でしゃくった。出してやれ、って事かな? プレゼントしたチーズケーキはベイクドチーズケーキだからスフレチーズケーキにしようか。あ、お茶も出した方がいい? 仕方ないなー……。
私は切ってお皿に乗ったケーキと携帯用の木のカップに入ったお茶、フォークも出していく。
ひくりと王様や宰相様が顔を引きつらせ、王妃様は喜んだ。
いつどこでも食べられるようにある程度のカトラリーとかも入れてるんだよねー。
「あ、軽食が食べられる様ならサンドウィッチもどうですか?」
大皿に乗ったサンドウィッチも取り出した。これはエルとかノアと出かけた時に皆で食べられるようにと大皿にしてもらったのだ。王都やらハノウセクやら出かける用事が出来たもので。
「えっと……どうぞ? あ、私が先に食べなきゃいけないのか」
自分の前の皿に手を出そうとしたらエルがすでに食べ始めてました。エルー! ブレないな!? 自分の分も確保してあるだろうにケーキも私の出したのを受け取ってるし!
「これは!」
「おいしーーー! 何これー! ふわふわでしゅわしゅわで甘くてお口の中で溶けちゃう!」
「!」
「サンドウィッチ? と言ったか? パンがふわふわだ! 間に挟んであるのがまた美味いぞ?」
「なんだ? これは……」
「あー……なるほど、だからエルヴィーンはこの間来た時にずっと食事の時間に微妙な顔をしていたんだな? もしかしたらもっと色々美味しい料理があるんじゃないのか?」
うわー……さすが宰相候補のお兄様! 色々察したらしい。エルを横目で見たらエルはさっとお兄さんから目を逸らしていました。
電話で食事がしんどいって言ってたもんねぇ……。
というか……なんかね。お話があるって事だったはずなんだけど、何故か和気藹々おやつタイムになってるんだけどいいの? コレ。
皆さまがアレコレ堪能している間、私はノアとハムちゃんにもケーキとサンドウィッチを分けてあげてました。
「おいしー! 闇の……ノアは毎日食べてる!?」
「そうなのー! おいしいのー! 僕の収納にも色々入ってるんだよー」
「収納!?」
「防御の魔法陣と収納の付いた魔石があるからー! ディアとエルが作ってくれたのー」
「わー! いいなー! よかったねー……闇の。大事にされてて」
ハムちゃんがしんみりしている。うん。眷属様達って仲良しだねぇ……可愛い。しかし眷属様達も普通に食べるんだね。子青ヘビちゃんにも何かあげればよかったかな? こんどハノウセクに行った時に食べさせよう! そうしよう!
ノアとハムちゃんをテーブルに乗せて小さく切ってあげて、はいと渡すと二匹は可愛い手で持って食べるんですよ! もう可愛すぎるでしょ! そして二人でわちゃわちゃお話してるのも可愛いし! 可愛いなーと見ていたら、なんか場が静かになってる? はっとして顔を上げたらエル以外の視線が突き刺さっていました。
「えーと……闇の眷属様でノアです。こちらが光の眷属様でハムちゃんです?」
「はぁ!?」
「光の眷属様!? 聞いていないが!? エルヴィーン?」
「光の眷属様はさっき裏の森で会ったばかりだからな。そういえば言っていなかったが水の眷属様にも会っている」
おおう、一応水の眷属様の事は言ってなかったんだね? まぁここまで来たら隠さなくてもいいだろうし。エルもそう思ったんだろうね。
「エルー。ハムちゃんも水のの所に一緒に連れてってー! いい?」
ノアがエルの肩にジャンプして聞いている。
「構わない。ディアもいいんだろう?」
「勿論! ハムちゃんも会いたいでしょう?」
「会いたいー! いいの!? ありがとうー!!! ところでノア? エル? に眷属の加護をあげたんだ?」
「うん、そうだよー? じゃないと会話出来なくてディアが大変そうだったしー」
「そっかー」
え? とエルと顔を合わせる。
「ちょ、ちょっと待って! 眷属の加護って!?」
「眷属の加護はー眷属とお話出来るようになる加護だよー? 恩恵はそれだけだけどー。あ、いやちょっとは何かあったようなー? なんだっけー?」
「うーん……何かあったねー? 私も忘れちゃったよー! 眷属の加護なんてあげたの大分大分前だもーん」
おおう……エルに眷属の加護が付いてたんですね。だからお話が出来るようになっていたんだ。なるほど。そして眷属様達が大分大分前という事はですよ? 多分この国が出来る前よりももっとずっと前って事だよね? 眷属様が忘れたと言う位大分大昔の話って事だね。
エルがばたんとテーブルに突っ伏した。
「…………マジか……」
いや、だから、エルよ! マジか、をエルが使うんじゃありません! あなたは日本人じゃないってば! 異世界人なのに本当に使いこなしてるし!!!