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134.バブルナの花。

「あと、この島は僕が管理しているから一年中咲いてるけど、外に出すと花が咲くのは夏だけになるよ」


 あ、そういう制限はあるんだね。


「あれ? 今は外で咲いていないんだっけ? んー? あー……大分前に乱獲されて根絶えちゃったんだったかなー?」


 眷属様の大分前は本当に大分前なヤツですよね? 分かってます。だから伝説になったんですね。一体コレどうしたらいいんでしょうね?

 持って行って外で咲かせてもいいけど水辺じゃないと花は咲かないという幻のバブルナの花。


「外に植える時に注意する事はある? このまま移植とかで大丈夫なのかしら?」

「水辺だったらそれで大丈夫だよ! 花を採る時に根を残しておけば次の年も咲くよ?」

「わ! そうなの? よかった! けど、うーん……エル? どうしたらいい?」

「ここはハノウセク領、ハルダ・ハノセウセクか……」


 ううんと、ハルダ、って事は伯爵? かな? 確か……。


「ハルダ・ハノウセクか……でもなぁ……うーん……」


 なにやらエルが悩んでいる。なんだろね? 世情に疎いので私は分かりません。


「とりあえずもらったらー?」


 ノアが促してきたので水の眷属様に断ってバブルナの花だけと、根っこごとのバブルナといただきます。エルもはっとして一緒にいただきました。

 花を織り込んだ布に防御魔法を定着させると防御がマシマシになるそうです。吸水性も優れているので外套にすると中の服が濡れないんだって。

 

 国同士が争っていた時に乱獲されこの島以外ではなくなってしまったらしいとの事でした。なるほど、根絶やしの発端は戦争って事か。そりゃ兵の装備とかに使うならいっぱいいるわな……。その情報をエルは知らなかったらしい。大昔の事だろうからただ幻の花とだけ残ったんだろうね。私はそんな戦争とか戦いとかには使わないつもりだけれども!

 世の女性の為だったらいいですか? 女神様?


「水の眷属様、ありがとう!」

「こっちこそ! 闇のを受け入れてくれてありがとう。私もついて行きたい所だけど……この花をなくしてはいけないから」


 残念だけど、と子青ヘビちゃんがしょげっとしている。


「またディアとエルとセンで遊びに来るよー! ディア、いい?」

「勿論よ!」


 この子も寂しかったのだろうか? ずっと大昔も大昔からここにいるのだろうか? エルも勿論だと頷いていた。


「じゃあまた来るねー!」


 センに乗り、水の眷属様に手を振って別れた。さっきバブルナの花を結構摘んだのにもうどこら辺を摘んだのか分からない位になっている。水の眷属様が管理しているみたいだから元に戻ったとか? だって結構ごっそり採らせてもらったんだけどねぇ。

 センが数歩助走をつけてから空に駆けあがっていく。カッコいいねぇー!


「ん? ディア、向こうに誰かいる」


 エルが白い霧の壁の向こう側を指さした。魔力を感じたのかな? 誰か、という事は人という事か。


「…………ねぇ、他所の領に無断でお邪魔してるんだよね? 私達」

 

 後ろを振り向きながらエルに聞くとエルがまたすいっと視線を逸らせた。エルー! もう! エルだけだったら冒険者だしまだいいのかもしれないけど、私は他領の領主の娘なわけで。アウトじゃないの? 大丈夫なの?

 いや、通行料払ってないからエルだってやっぱダメだよね!


「上から誰かいるのか確認するか?」

「どうだろうね? でもいつかはきっとセンの事は知られるだろうし。それでバレた時の方がダメじゃない?」

「う……確かに。……空を飛ぶのは緊急時だけにした方がいいか……」

『えー……わたしは空を飛びたいです』


 うん、センが空を飛びたい気持ちは分かるよ! 確かに気持ちいいもんねぇ!


「仕方ない行きましょう。それにバブルナの花はこちらに頼んだ方がいいかもしれないし。ツィブルカでは無理なんでしょう?」

「無理だな……そう考えるとハルダ・ハノウセクは潔白な人であるし派閥も王族派だからいい人物だ」


 派閥! あー……やっぱ貴族ってそういうのあるんだー? めんどくさっ! 私はそんな中に入りたくはないなー……。


「ハルダ・ハノウセクってどういう方? 性格とか」

「王宮の近衛騎士副団長だ。…………なんでも剣技で勝負を持ちかけるとか」

「…………脳筋かっ」

「のうきん? ってなんだ?」

「頭の中が筋肉で出来てるって事」


 ぶはっ! とエルが笑った。ツボに入ったのかエルに接している私の背中が震えている。楽しそうでよかったね。


「……結婚してる?」

「ああ。奥方は出来た方だと噂だ。しかし今の時期にハルダ・ハノウセクが領地に戻っているか?」

「時期ではない?」

「ああ、普通は冬に領地に戻る」


 そうなんだ? へぇ……。


「セン、霧を通り抜けて北へ向かってくれ」

『了解しました、主』


 そう言ってセンが霧の中に突入する。この霧、多分水の眷属様が発生させているんだよねぇ? 花を守らなきゃいけないって言っていたから。島が見つかったらまたバブルナの花が乱獲されて根絶やしにされちゃうかも、だから。


「……人って業が深いよね……」


 意味が通じなかったのかエルもノアもはてな? という顔をしていた。

 人間が皆そうではないという事は分かっているけれども。偏見とか思い込みで人を攻撃したり物を乱獲したり、そういう事はやめて欲しいよね……。

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ。ここ、たどり着けない島なんだよね……? なぜ人の気配が?
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