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1.転生したらしい。

「おい、……生きているか?」


 なんて物騒な! 生きていますとも。でもなんか知らないけど体中あちこち痛いんですが! 何? 何があった?


「名前は? 言えるか?」


 名前……?


「……ディ、ア……」


 ちょっと待て? ディアって誰やねん! 思わず自分に突っ込む。今、自分の口から辿々しく漏れたけど、名前って聞かれて応えたのは自分のはずなのに、自分の名前に馴染みがないんですけど! 何その外国人みたいな名前!

 私は、…………。

 …………あれ? 名前なんだっけ? いや、えーっと……住んでたのは日本。うん、間違いないよね? 住所は……思い出せない! え? どういう事? 記憶喪失? やだ! そんなのドラマとかでしか聞いた事ないけど! まさか自分の身にそんな事が起きるとか、ないわーーーー!


「薬だ」


 男性のいい声が聞こえる。イケボだわー。

 なんて思っていたら口に何か宛てがわれてどろっとした液体が口の中に入ってきた。


「ゲホッ! んぅっ!」


 にっが! ちょっとこれ本当に薬なの? 毒じゃないの!?

 口に突っ込まれた物体を無理矢理嚥下したけど、もう口の中はおえええってなりそうな位に苦いし臭い!


「これで大丈夫か……」


 イケボのお兄さんの淡々とした声が聞こえたが私の意識はそこで途切れた。




 えーーっと……ここはどこでしょうか?

 目が覚めてパチっと目を開けたら見知らぬ木の天井が目に入った。

 やっぱ私ってば記憶喪失?

 なんか粗末な山小屋みたいな天井が目に入って頭の中にハテナマークがぽぽぽんと浮かんだ。

 気を失ってたっぽい? 何があったっけ? と考えて、意識を失う前にイケボのお兄さんの声が聞こえた事と体中痛かった事を思い出した。


 木のベッドに寝かせられていて、粗末な毛布みたいなのが掛けられている。毛布の中でそろそろと手を動かしてみると痛みはない。よかった、とちょっと安心した。

 きょろりと部屋の中を見回してみると部屋には無駄なものは何もなくてあるのはベッドだけっぽい。ベッドが二台並んでいる。


 それにしてもなんか何もかもがお粗末な部屋だわ……。現代日本にこんな家や部屋ってなくない? って感じ。壁も薄汚れている感じだし暗い。夜? って一瞬思ったけど小さい窓からは明るい光が見えるから夜ではないらしい。

 その窓もくすんでいて透明なガラスじゃないんだよね。あ、天井に電灯もないんだ……じゃあ明かりってどうするの?


 頭の中にハテナマークが増えていく。

 落ち着いて考えてみよう。まず名前、………………うん、思い出せない。

 というか意識を失う前、体中あちこちが痛い状態だったから多分大怪我していたはず。そしたら普通は病院に運ばれているはずだよね? ここどう見ても病院じゃないし!

 今は体が全然痛くないし大した事なかったのかしら?


「分からん」


 何もかもが分からなくて不安になってくる。

 体は痛くないし、ちょっと起き上がってみようかと思った時、ギギッという木の軋みと共に部屋のドアが開いた。


「目が覚めたか」


 わーお! イケメンだー!

 眼光の鋭いちょっと強面のお兄さんだ。多分気を失う前に声をかけてくれた人なんだろうね。


「えっと……助けてくれて、ありがとうござい、ます……?」


 どうにも記憶があやふやで語尾が上がってしまった。いいけど、お兄さんの恰好が! なんのコスプレですかって感じでびっくりしてしまった。

 髪は少し長めで後ろで一つに結わえ、腰には剣をぶら下げてマントを羽織っている。着ている服もRPGのゲームに出てきそうな衣装だ。


 なんなの? 病院に連れて行ってくれてなくて自分はコスプレですか?

 不信感でいっぱいになってくる。いや、自分の状況が分からなくて不信感やら不安やらもう色々混ぜこぜだ。どくどくと変に心臓が動悸してくる。


 イケメンお兄さんは手にトレーを持っていてどうやら食べ物を運んできたらしいのだが、食器が……木製。え? なんかやっぱ見るからにお粗末なんだけど。


「食べられそうか?」


 お兄さんがドアを閉め近づいてくる。見知らぬ人なんだけど大丈夫? いや、コスプレしてる時点でやばくない?


 私がドン引きしていても気にしないのかお兄さんは表情を変える事もない。


「衣類の状態がひどかったので粗末なもので悪いが着替えさせた」


 ええええーー! ちょっと待って! やだ! お兄さんが替えたわけ? いや、なんか色々変な気がするんだけど! 衣類の状態がひどかったっていう事はやっぱ私怪我とかしてたんじゃないの? でも現時点で体に痛い所はないんだよね。


「粗末なもの……?」


 ぺろんと体にかかっていた毛布っぽいものを退けてみる。


「う、ん……?」


 なんか……毛布を持つ、私の手がちっさいんですけども? どういう事? 毛布を捲ってみれば自分の体も縮んでるみたいだ。


「ちょっと待って……」


 またも頭の中にさらに大量のハテナマークが浮かんでくる。そして視界に銀色が飛び込んできて、なんだこのキラキラ銀色? と思ったら自分の髪でした! 銀色の髪ってなくない? 日本人は黒でしょ!?


 もしかして…………異世界転生ってヤツですか!? そりゃ異世界だったらコスプレか! と思ったお兄さんの恰好も分かる! 分かるけど何故自分の身の上にそんな事が起こってしまったのか!


「マジか………………」


 呆然とした。

 出来る事なら気を失いたい。目を開けたら元の世界に戻ってる、とか。ならないかなぁ……。



 

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