第四話:先輩はツンデレ属性?
翌日になり、その間にツボの中にいる悪霊を払う試練のことが知れ渡り、会場が大人数となってしまっていた。
その光景に雨弓は茫然としていた。
(どうしてこんなにいるの!?)
固まっている雨弓とは対照的にミケ姫は準備運動をしていて万端な様子である。
なぜ運動をするのかと疑問に思ったが、今は余計なことを考えないでおこうと思ったのはいつも以上に神経質になっていたからである。
(大丈夫かな……昨日は結局少ししか勉強できなかったし)
雨弓は嫌な予感しか感じなかった。
〇〇
身なりを整えた雨弓とミケ姫は会場の中に入ると、クラ姫と神器の少年、雷が待ち構えていた。
「準備はよろしいですか?」
聞かれたミケ姫は悠然と答えた。
「もちろんじゃ」
雨弓ははあ〜とそれを見つめていると雷から声をかけられた。
「顔色が優れないけど大丈夫?」
「え、あ〜 まあちょっと張り切りすぎちゃって 眠れなかっただけなので」
「そうなんですか 一度目が失敗してもフォローに入りますので」
「その時はよろしくお願いします」
雨弓は深々と頭を下げた。そしていよいよ試練が開始する。その前にクラ姫が説明をした。
「ツボを開ける前に一分間は動きを止めます その間に清めてください」
「うむ」
「はい」
ミケ姫と雨弓はコクリとうなづき、身構えた。
「では、開放します」
クラ姫がツボの封印を解くと中から黒いモヤみたいなものが出てきた。そして衝撃波のようなものが襲ってくる。
(低級ってこんな感じなの!?)
形となっていないそれは空中を右へ左へと彷徨っていた。そして真下にいるミケ姫を狙ってきた。
(まず)
雨弓がそう思った時だった。
「拘束!」
凛とした声が響き渡り、霊の動きを止めた。
「では お願いします」
『すごい 今のどうやったんだろう』
雨弓は感動していると、それにミケ姫は躍起になる。
「わかっておる いくぞ雨弓」
「はい」
ミケ姫と雨弓は手を握り、一歩前に出て言の葉を述べようとしたが上手くいかなかった。
(どうして あの時は上手く行ったのに……っ)
その様子をウカノミタマは思慮深く見つめていた。上手く力が出せないことに雨弓は焦っているを見た雷は近寄ってきた。
「どうしました?」
「あ、雷さん なんか上手く力が出せなくて」
「上手く出そうとするのではなく、あなたがすべきことはなんですか」
「私のすべきこと」
「あなたが守るべきものは?」
「私が守るべきもの」
視界の隅にミケ姫の姿が目に入った。
(そうか……私はミケ姫さまの力になりたい だから)
その瞬間、ミケ姫の霊気に力がみなぎったのがわかった。
「いくぞ 雨弓!」
「はい!」
ミケ姫の全身が淡く光った。
「我がウカノミタマの眷属神 三狐 悪しきものを浄化する」
そう声を上げた瞬間、悪霊は彼女の霊力に恐れをなしツボの中に戻って行った。
「………やった」
手を上げようとした直後、ミケ姫が倒れ込んだ。それには雨弓も驚いた。
「ミケ姫さま どこか怪我でも」
「いや、少し疲れただけじゃ」
クラ姫は悪霊を払ったのを見て、ウカノミタマと目を合わせてうなづいた。
「ミケ 試練は合格です」
やったと喜びたいところだったが、疲れていてもミケ姫は絶好調だった。
「誠ですか?!」
「ですが、それだけ疲れていては言語道断ですね 雷のフォローもないと危なかったですし」
「むぐ」
正論なので、言い返せないミケ姫は悔しさでプルプルと震えた。雨弓はそれを見て猫のようだと思った。
クラ姫は言いすぎたかとハッとする。
「まあ、でも 払えると思ってませんでしたし ギリギリ合格ですね」
そっぽを向いて話す姿に雨弓はアニメのキャラを思い出した。
(クラ姫ってもしかしてツンデレ)
そんなことを思いながら雨弓とミケ姫の初めての試練は幕を閉じたのだった。