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第三話:犬猿の仲


「ツ、ツネ」


「全く主神の前で諍いとは何事ですか?」


 うぐっと、もっともなことを言われたクラ姫は畏縮した。そんな彼女を見たミケ姫はほれみたことかとニタリと笑った。それを見たツネは見逃さず咎めた。


「あなたもですよ ミケ姫」


「う…はい!」


 其の様子を見ていた主神のウカノミタマは微笑みを絶やさずツネに話しかける。


「まあいいじゃねえか ツネ」


「よくありません こういうことは早めに叱っておかなければ」


「そうかな〜」


「そうです」


 何だか気が緩みそうな雰囲気に少し緊張していた雨弓は不安がほぐれた。



「クラ姫も帰ってきたことだし、ミケ姫も神器が見つかったことだし、お祝いをしたいところじゃが、その者に神器としての試練を試してもらいたい」


「試練ですか……?」


 ミケ姫はウカノミタマの話を聞き入った。


「そう、其の試練に合格すれば神器としてやっていけるだろう しかしそれができなければ道はさらに険しい」


「……わかりました それでどのような試練ですか?」


 ミケ姫は早口でまくし立てる。


「ふふ、そうじゃな… ツネ」


 ウカノミタマは思案してツネに指示を出す。


「倉庫にある低級のツボを取ってきてくれ」


「かしこまりました」


 ツネは退室して、少しして戻ってくると手元には小さなツボを持っていた。


「持ってきました」


「ありがとう ここにおいてくれ」


 ツネが丁寧に扱うのはそれほど貴重なものなのか、それとも危険なものかと雨弓は警戒心を募らせる。


「さて準備も整ったことだし説明しようか このツボの中には低級の悪霊が入っている それを神器の力で清めるのがミケの試練だよ」


「!」


「お任せーー」


 ミケは自信満々に言おうとするが、クラ姫に横槍を入れられる。


「ウカ様 お言葉ですが、まだ初心者ですよ まずは力を安定させて」


 其のことにウカノミタマは名案を思いつく。


「なら、そなたがついていれば問題はないわね」


「へ!? 私がですか」


「ええ、ミケ姫の先輩だし」


「せ…先輩……っ」


 ウカノミタマから褒められた眷属のクラ姫は胸元に手を当てた。


「必ずや、合格させて見せますわ ミケ様!」


「ふむ 望むところじゃ」


 バチバチと二人は火花を散らしたのだった。何だか火に油を刺したような感じに雨弓は心配した。


「大丈夫かな……?」


 ポツリと心配事を呟いた。そしてそれを耳にしたのかクラ姫の側にいた少年と目があった。


「まあ、大丈夫じゃないでしょうか」


 こちらの方は主人と違ってのんびりとした声音だった。


「……そうだといいんですけど あ、私は雨弓といいます」


「はい、僕はクラ姫の神器の雷と言います よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


 ひとまず各々と自分の部屋に帰ることになった。


「ここはミケ姫様の部屋なんですね」


 学び舎では共同で使うものが多いので、高そうな調度品ばかりで目移りしてしまう。


「そうじゃ 明日の試練のために少し勉強した方がいいじゃろ」


 教科書のようなものが山積みと出されて、うげーと顔に出てしまった。


「あの……今更勉強しても」


 口籠る雨弓にミケ姫は怒り出す。


「何をいうか、これぐらいでへこたれていては身が持たんぞ」


 雨弓の情けない心意気に憤慨する。何だかクラ姫と会ってから様子がおかしいと思い出した。気になった雨弓は聞いた。


「そういえば、クラ姫さまとどういう関係なんですか」


 クラ姫と名前を聞いた瞬間、ミケ姫が目が見開いたような感じがして思わずあとずさるほどだった。


「彼奴との出会いはもはや数百年前のこと。私より早くウカノミタマ様の眷属神として生まれたけで先輩面をしてくるのじゃ…! 奴には神器が追って私には神器がついてないことにずっと劣っていると思ったのじゃ しかしそれもこれまで やつに目に物を見せてやるのじゃ」


 並々ならぬ闘志を瞳に燃やしていて雨弓は圧倒された。そして山積みにされている指南書を見て口元を引きつらせる。


(これ絶対1日で終わらないやつじゃん まあ数学、社会とかならともかく、悪霊を払うことだしね 必要なことは覚えておかないとね)


 切り替えの早い雨弓は早速取り掛かったのを見て、ミケ姫は顔を綻ばせた。


「うむ、其の息じゃ」



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