第三話:ミケ姫との出会い
勉学の方はトントンだったが、実技の方は優秀の成績を収めたので都に上がることができた。
学び舎では基礎的なものを学び、都ではもちろん私以上に力の使い手のものがいて、強いものもいるらしい。
私は緊張と不安でドキドキしていたが、どんな人物がいるのかというワクワク感もあった。
学び舎の先生たちにお世話になったお礼を言って、荷馬車に乗って都に向かった。
「そういえば、都まで何日かかるんだろう」
乗る前に知っているのは当たり前のことを聞いた私に、隣に座っていた同じクラスだった女の子の天音
あまね
はため息をついた。
「先生が言っていたでしょ 3日かかるって」
天音はクラスの中でも委員長的な存在でありマドンナ的存在で他の男子たちはメロメロである。
だけど、私にとってはマドンナ的存在というよりオカン的存在だった。一度言ったらすごい嫌な目で見られたので二度と言わないようにした。
部屋は二人一部屋で生活だったので、朝起きるのが苦手な私を叩き起こし……ではなく目を覚ましてくれた。
彼女のため息にポリポリと私は頬をかく。
「そうだったけ」
私がそう呟くと、天音の口調がガラリと変わる。
「もう、言っていたわよ 休みを入れながら3日で荷馬車で向かうって あなた先生の話を聞いていなかったわね」
追及されそうになった私は口を窄めて目線を逸らした。すると慣れたように天音の嘆息が聞こえた。
「全く、興味があることは驚くほど飲み込みが早いのに 興味がないと本当にーー」
こうゆう時は下手に話を遮らない方がいいと自習している私は説教に耐えることになった。
それと同時にこれもまた日常茶飯事で止めるものはいなく、同じように上がってきたクラスの同級生たちは私たちを見て微笑ましい表情していて、気恥ずかしい気持ちになった。
いくつものの山や村を渡り通っていくと小高い丘の上に差し掛かった時に荷馬車の人から声がかかってきた。
「お~い、もうすぐ都につくぞ」
私たちはみんな一緒に見ようと後ろむきで一斉に振り返るとそこには見渡すほどの絶景が視界一杯に広がる。
私たちは感動と驚きのあまり最初は言葉が出なかったが、次第に口を開いた。
「ここが都……っ」
初めて見たことあるはずなのに、どこかで見た風景に私は既視感を感じた。
どこでだと思い出していると、生前のころ社会の授業を受けた時の記憶を奇跡的に思い出す。
「ここって、平安京みたい……」
私が言ったことを聞いていた荷馬車の人は快く説明してくれた。
「そう、ここはかつてお前さんたちがいた日本の首都であった都市を再現されている」
「そうなんですね」
天音は感心しながらうなづいた。
(社会科の授業ってやたらと睡魔が襲ったりしていたが、印象的なものなどは覚えている記憶がある)
でもどうして、昔の都を再現しているとのだろうと私は疑問に思ったが、口にしなかった。
羅城門という大きな門を通り、私たちは大学寮というところに下された。そこで荷馬車の人とはお別れになり、お礼をのべた。
大学寮の前には水干姿で物珍しい烏帽子をかぶった眼鏡の男性が立っていた。
「皆様、ようこそおいでくださいました 私はこの大学寮であなた方の先生を務める惟人
これひと
と申します」
「よろしくお願いします」
私たちは先生に挨拶をし終えると、学生寮に案内された。
初めての場所で浮き足立ちながら歩いていると、後ろから追いかけてきているものに気づかなかった。
私はキョロキョロと見ていると、後ろから声が聞こえた。
最後の列にいた私は何だろうと、さっきまで誰も後ろにいるはずはないと振り向くとそこには俯きに倒れていた小さな女の子がいた。
見事な転びっぷりに一瞬私は硬直した。
「うゔ」
私は呆気に取られたがはっとして駆け寄り、手を差し伸べた。
「ちょっと、大丈夫?!」
「う……うむ 大丈夫だ これぐらい」
虚勢を張っているが、女の子は涙目になっているので、大丈夫じゃないじゃんと心の中で突っ込んだ。
私はどうしたものかと困っていると、先生が来てくれた。
「どうしました 雨弓さん」
「あ、先生 この子が転んでしまって」
私の後ろにいる女の子に先生の目が止まる。
「ああ、また見にきていたのですね」
「む、もう少し敬いのある言い方をしろ 惟人」
女の子の話し方にも驚くが、どうやら二人は知り合いであるらしい。
「それは申し訳ありませんでした」
「ふむ、まあいいだろう」
どう見ても先生の方が年上なのだが、目上のものに対応する態度に私たちは驚く。先生は彼女のことを説明する。
「皆さん、彼女は五穀と豊穣を司どるウカノミタマの眷属神 ミケ姫です」
どうやら私たちの目の前に忽然と現れたのは小さな神様だったようだ。