後編
キーンという男は謎が多い。
この街の至る所に出没し、それでいて実害の無い、ただの愛想の良い男性だと思っていたら、怪しい裏取引には必ず名前が上がるほどの影を持ち、しかし暴力沙汰には絡みは無く、決して表沙汰になる様な事は無い。
そういった得体の知れない雰囲気を持っている男だった。
キーンという名前にしても多少の――本人曰く品の良い――おふざけが入っているらしく、自分で旧英語圏のkeen(頭の切れる)なんて言葉を選ぶ、ユーモアを兼ね備えている。
バック・メイラード探偵社との付き合いも長いと聞くが、実際、彼自身に関する情報がほとんどないために、どの様な経緯でウィリーとアレックと出会ったかは、ソフィアの知るところではなかった。
しかし、ソフィアは何度か彼に会うことがあったが、その『情報』は間違いなくシリウス随一と言われる『品揃え』をしていると感じていた。
耳が早い、そしてその深さはこの街に限れば、皇国の情報機関<鴉>に匹敵するほどだとはウィリーが認めていた。
その品揃えもさることながら、情報の鮮度、果ては付随する段取りに至るまですべてを、『金』さえあれば提供される事から、食事に例えられ『鮮度』『質』『量』『品質』を細部まで知り尽くした『美食家』と揶揄させる。
しかし、彼と出会うのであれば、普通の食事の席で会うことは無いだろう。
街のアップタウンとダウンタウンの境に――住宅街のちょうど真ん中にある、公衆浴場に行くことになる。
住宅街に囲まれた一角に、巨大な建造物が建っている。
外観からして巨大な石の建造物であるそれは、幾重にも拡張をされた痕跡を残している、街が運営する公衆浴場である。
街の運営になっているのにはかつての苦い経験からだった。街ができたころにはいくつかの浴場が設置されていたが、『水』の管理が煩雑になったことと、それによる水の使用量が増大したことによる、都市の運営の根幹にかかわる事態が引き起こされたためだ。その問題が引き起こされた背景には、水が生活に必要なものであるにも関わらず、その取得方法に限りがあったからだ。
雨水や地下水の利用は行われていたが、あくまでも家畜や作物を育てるためにという意味での使用であり、生活水としての水は別の方法によって生産されていた。
微細な塵、埃などに高い放射線量が確認されていた、七十年ほど前の事では、リコの普及も完全――定期的な投与が完全に定める期間内で終わらないなどの不完全さ――に普及できておらず、生活水全般からの健康被害が出る可能性を危惧して高い処理過程を経て使用できる水を生産していた。尤も今でも生活用水の大半は同じ工程をたどるが。
そのため、いくら水の確保できる場所――地下水の汲み上げ場所や雨水タンクを――を増やしても、全く処理が追いつかない状態が続いた。
しかし、街の中に流れ込む――使用できる上水道の類には明確な分けを行っておらず、本線から支線に分岐させるだけだった。
このため、各浴場が水を取り合いし、生活水の大半を奪い合う状態が続いてしまった。
事態を収束させるためには、利権を食い物にせず、それでいて適正に管理ができる者が管理をすることが政街院で決定され、街の管理に移行した。
たった数ヶ月の出来事だが、都市の形成には大きな問題を与えていた。
かつてあった四つの浴場は取り潰しとなったとしても、その建物を簡単に壊す事ができなかったため、住宅地区にいくつかの未利用区画が設けられてしまった。
それらは後に取り潰されることになるが、そこへと至るいくつかの道とそこから枝分かれする小道は幾重にも形成されており、長年の住宅の建築でより複雑に、そしてきめ細やかに住宅地区を形作る要因となった。
これらの、かつての浴場の跡は、多くが公園のような利用をしている。このため『バス・パーク』という名前がついている程だった。
外観は、乱雑に切り出された石材が積み重ねられているように見える区画もあると思えば、正面に至っては綺麗に仕上げられ、ギリシア産の大理石の様な淡い模様を持っている場所もある。木々を無理やり目隠しにするために植え付けたのか、と疑いたくなるような箇所もあるため、一見すると、迫出してくる印象を受ける。
その不気味な圧迫感のある――それでいて、いつもいると物足りなく感じる――外観をくぐると、大きなエントランスホールが出迎える。
広く作られたエントランスホールには、受付と思われる石一枚を利用して作られたカウンターが出迎え、人々を誘導している。
室内全体を、壁に掲げられた蝋燭の細かい揺らぎを持った明かりが、幾重にも明るく目につくことだろう。
奥には食事もできるホールが設置されているが、常設で売り出しがされている物は、炭酸水と飲料水しかないため、持ち込みをして用立てるのが一般的だった。
それでも、多くの人の姿がそのホールには、湯上りの時間を楽しむために集っている。
人々の流れに合わせてみると、エントランスホールから左右に分かれて――男女に別れた脱衣所へと向かう。男女に別れているのは所持品の違いと言われているが、日本由来の『男女』の――尤も言語は異なるが――暖簾が掲げられていることから、旧来の世界を引き継いでいる事を伺わせた。
しかし、男女で分かれているのはここだけで、中の作りとしては、浴場でまた一つになる。
多くの利用客は男女兼用になっている事に何ら問題を見出すことは無いだろう。
湯着の着用は義務付けされ、子供からお年寄りまで、気兼ねなく楽しむことができる様に計らっている。
特にいくつも作られた巨大な浴槽は、温度によって分けられており、大小合わせて十は下らない。
そんな公衆浴場に、二人はいた。
アレックはげんなりとした様子で、ソフィアはそれを窘める様に。
生活に直結しているこの浴場には、よく足を運ぶ彼らではあるが、キーンに会うためとなると、その気も削がれるものになるのだろうか、アレックの表情は沈んでいる。
『所定の手続き』として一度風呂を浴びた後に、今ホールへと戻ってきたのは、混み合う時間を予測して、まだ夕方の四時になろうかというところだった。
外から暖かな風が入ってくるホールで、炭酸水を受け取り、二人は窓際の丸いテーブルで何やら書類を見ている一人の男の傍へと寄っていく。
その男、キーンは、年齢五十位の初老の男性で、身長は低く、しかし肉付きの良い体をして、太い腕はアレックの二倍はあろうかとも見えるがっしりとした印象を持っている。
白髪交じりの髪は短く清潔感があり、大きい耳は特徴的。
銀縁の眼鏡をかけて、忙しなくいくつかの書類を見比べていた。二人が近づくと一度視線を上げて、誰かと、確認をする様にジロリと二人を見た。
「ウィリーの所の小僧じゃないか。どうした? またなんぞしくじったと見えるな。小僧に売る物はないから、さっさと帰ったらどうだ?」
「こんにちは、キーンさん。そんなに邪見にしないでくれよ」
「ふんっ、この間の払いだって、ぎりぎりだったじゃないか。『いい情報』は高いんだ。きちんと払わないやつには、売るものはない」
「いや……最終的にはちゃんと払ったじゃないですか」
「……私の提示した期限を何日過ぎていると思っているんだ? ウィリーの奴も全く困ったものだ、何でも私が大目に見てやると思っている節がある……」
キーンは鼻息荒く、再び書類に視線を落としてしまう。
ソフィアは、そんなアレックとキーンを見つめる。
アレックは、取りつく島が無い様子のキーンを一度見つめた後、仕方なさそうに一度頭を掻いて、ソフィアに助けを求めるように、視線を送ってきた。
その何とも幼稚な仕草に、ソフィアは苦笑いを浮かべた。
なんとも頼りのない探偵がいたものだろうと、ソフィアは複雑な――笑いと情けない気持ちと――思いを胸に抱いた。しかし、このまま一日経ってもキーンはアレックの話しを聞くことはないのが分かっていたので、小さくため息をついてキーンに話しかける。
「小父様、あまり、邪見に、しないで、くださいな」
そう云って、バッグから取り出した財布から、テーブルに一枚の貨幣をすっと置く。それは銀で出来た一般的な通貨、通称アラッド硬貨の一つだった。
昼間に二人が食べた食事が大体一人当たり、大銅貨二枚。その金額でも安い方ではあるが、大銅貨一枚の十倍の価値に相当する金額を乗せた。尤も貨幣の種類は多くあるが、一般に広く利用されるのが、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨だった。
一般的なチップにしてはかなり高額ではあるが、話し合いのための経費として、報酬から天引きすることをソフィアは最初から決めていたので、惜しげもなく差し出した。
その金額を、最初は懐疑的に見たキーンだったが、何かを納得した様子で、静かに懐に収めた。
「ふんっ、小間使いの小娘の分際だが、礼節は弁えているようだな。なんだ? 話しくらいは聞いてやってもいい」
横柄な態度ではあるが、機嫌を良くしたのだろう、左の口の端を少し綻ばせている。
そして左手で炭酸水の入ったグラスをゆっくりと持ち上げ、口に近づけていく。
ソフィアはその様子を見て、大丈夫そうだと分かると、最初から核心の質問を飛ばした。
「エズル・トーホー氏に、面会すること、は可能で、しょうか?」
「――ぶふぉっ!」
キーンは盛大にむせ、そして何度かせき込み、その後、非難する様に眉間にしわを寄せて、凝視するような視線を、アレックとソフィアに向けた。
アレックは締まりのないにやけた表情を、ソフィアはそれがさも当然の様に――真面目にその言葉を述べていた。
呆れた様にキーンは、二人の表情を行ったり来たりした。
そして重い溜息をつく。
「――あのな、何でもできると思っているのは些か……買い被りすぎなのではないか?」
「できない、のですか?」
「いや……」
言いよどむキーンは、顎に手を乗せて、逡巡。
そもそもなんでアレックとソフィアが、教会の重鎮に興味があるのかというのを邪推している様な様子に、ソフィアは「そんな大変な事なのか?」とひどくひと事に考えていた。
しかし、何とも言えない表情のまま固まったキーンを見て、経緯を説明した方がいいのだろうと思い、口を開く。
「仕事の一環で、ある男性……神父様を、探して、いるのです。その方が、行方不明になって、これといった、手がかりが、ない状態で。
可能性が、あるのが、シリウスの魔物に、襲われたという、眉唾な情報。
しかし、それとは別に、トーホー氏に、会っている、との情報もあり。ですので、そこからの、足取りを調べたい、そう思っている、次第なんです」
「……ふーむ」
簡単な説明に、キーンは低い唸り声を上げた。
その説明自体は問題がなさそうではあったが、どうやらエズル・トーホーという人物に――あるいは、教会自体に難がありそうな雰囲気を感じ、ソフィアは問いかけた。
「何か、教会で、問題になる、ような、事があったの、でしょうか?」
「……」
しかしキーンは応えない。
情報の授受においては、基本的に後払いになる。情報の内容によって『相手』が『取捨選択』できる様にしていると云われたことをソフィアは覚えている。
しかし、ここまで言いよどむのには何かあるとしか思えなかったが、これをどうするべきか、とアレックに視線を動かしても、肩をすくめるばかりで、建設的な意見も出てこなかった。
そうであるから、ソフィアとしてもなんとも気まずいこの状況を打破しようと、『先払い』をすることを決める。
アレックに報酬の一部から出させるようにジェスチャーをすると、初めはなんのことかととぼける様子であったが、口を尖らせながらも、渋々報酬の入った袋の封を開ける。
中から銀貨を数枚拾い上げると、キーンの前に並べていく。
その数五枚。
一般的情報料としては倍近い金額になるが、それを並べられて、キーンはさすがに黙っていなかった様子で、ソフィアの並べる手を止めさせる。
それから三枚をもらうと、渋々というように口を開いた。
「……そんなに知りたいというのであれば……。商売だしな。
教会にかかわるとろくなことにはならないから、あまり好きではないのだが……。
具体的にどういった事を知りたいのか? 先ほどの話しにでた男性の所在を調べるだけなら、わざわざ、エズル氏に会う必要なんてないだろう。私に、『その人』はどこに行ったか聞けばいい。
そうしないのには何等かの理由があるのか?」
「……それは……」
ソフィアは言いよどむ。その答えを彼女は持っていたが、はたして云うべきか迷う内容だったからだ。
それを見たアレックが小さく手を挙げて――まるで児童が授業で手を上げる様に小さく――キーンに口を『へ』の字にして、
「その面倒な教会からの話しだからだよ。ソフィアとも話しをしてね。……正直乗り気ではないのはその通りなんだが。なんせ、教会の関わる事に逐一関係しようと思っても、捉え所がある訳じゃないのは知っているからな。
だから、そいつの居場所を聞いて『依頼終了』というのも一つだと思ったんだが、それをやると、『貴方』が教会に目を付けられるんじゃないのか?
あいつら、探られるのを極端に嫌う上に、貴方より上等な<鴉>を従えているだろう……。そうなれば――貴方に迷惑が掛かるというところでね。
だったら『調べられる最後』を調べて終わりにするのも――依頼料は半額返す形だろうが、それもやむなしかなとね」
「……ふーむ」
キーンは、アレックの言を反芻する様に、目を一度伏せる。そして腕を組むと肩を落として、思案する様子だった。
それから何やら決心をした様に、「うーん」と小さく唸る。
「――そういうことなら話しを通してやってもいい。だが、いくつか確認したい。まず、魔物どうのという噂話をどう見ている?」
「それは……、ただの噂話であって、『気のふれた者』の可能性はあるが、<狼>が本腰で動いていない以上、今回の件とは無関係とみている」
そのアレックの言葉に、ソフィアも頷いた。
ブルノの食堂で話をきいたとおりの筋書きはあり得る話しだったからだ。
事前の打ち合わせは無いが、彼の言に通るところもある為それを肯定した形だ。
「まぁ、そが妥当だろうな。次に、エズル氏について何を知っている?」
「教会の重鎮で、研究派閥のトップに名前を連ねるような人……ってところか。捜索対象が最後に会った『らしい』という話しだけだな」
再びソフィアも相槌を打つ。
その様子を薄く開いた目でキーンは確かめた後、
「……なら、認識を少し変える必要があるようだな。
まずエズル氏については、教会の使徒に認定を受けている八人のうち一人だ。おいそれと会いますといって、普通は会える者ではない。お前らも知っているだろう? 使徒は司教の上の立場にあたるが、各員がそれぞれ特化した特技――才能を持っている。
特にエズル氏は『生物学』の知見が高く、『リコ』の人体への影響などを最小限にするための研究をかつては行っていたようだな。
そのことからも教会において研究分野で右に出る者がいない――他分野では同じ使徒がいるがな――とも云われいる。
その上で、魔物という言葉を聞いたのはほかでもない。一枚教会が噛んでいる可能性があるというのがもっぱらの噂だが、――尤もそれの裏取りが中々できない……。
私個人としては、教会の中に南の島との交易をしている連中らが、怪しい動きをしていると聞いたこともあるから、そいつらが係わっているのではないか、と見ているが……、遡って考えてみると、そいつらと教会の繋がりはもう二十年以上になるというから、……まぁ真実ではないだろう。
しかし、遠く外れているわけではないと思っているし、エズル氏ならそのあたりも『知っている』と考えている。
それを聞き出すのはやめておいた方がいいだろうが」
一旦言葉を区切ってキーンは、口を潤わす。
炭酸の小さな気泡の音が、微かに耳に届いた。
ソフィアにとってみれば、あまり詳しく知らない教会の実情を、何となく知ってしまっている様で、ワクワクする反面、大丈夫かという不安さがこみ上げていた。
「そんなだから、エズル氏に会うのであれば、『余計な事は』聞くなというのが忠告になる。
相手方がそれを答える事があるのであれば……それはもう引き返せないところにいることを自覚し、その無謀さに嘆くしかないだろう。
おそらく<鴉>に取り調べでもされて、噂の出処をきっちりと死体をつつく鳥の如く、ほじくり返されるだろうがな」
「そんなヘマはしないし、名前は出さないよ」
「……どうだか。好奇心は猫を殺す。この言葉の意味をよく覚えておけ。
エズル氏にあう手立てはあるが、――そうだな酒を用意しておけ。それも上等なものをだ。
彼と会うことになるのであれば、最低限の礼節を弁えることが必須ではあるからな。それに、彼の者の綽名は教会では有名で――お前らは知らないだろうが――こう呼ばれているよ。
来客があると決まって晩餐会を執り行う。そこには教会がまだ実験中の食材を出すらしいが……その行動から、『料理人』と言われているよ。
御年七十を超えていると思うが、すごい爺さんだ。
晩餐会の手紙が二、三日中に届くだろう。くれぐれも気を付けたまえ」
キーンはそう云うと、語ることはもうないという様に、視線を書類に落とした。
ソフィアには、其の様子がどうやら最後の橋を外され、取り残された子供の用な気分になって、酷く不安の色で押しつぶされそうになった。
そのソフィアの横では、アレックも同じように不安になっているのだろう、下唇を白くなるまで噛んでいた。
◆◆◆◆◆
「手紙に記されていたのは、今日、そしてこの場所だ」
「なんです、その、つぶやきは?」
あたりは夕闇に沈み始め、高い壁の影がより一層教会を黒く染めている。
白を基調とした建物たちは、その闇にただただのまれ、それを阻むこともない。
夕方六時の鐘が鳴る事、教会区域の外――外観を悠然と眺められる場所から――でアレックの不思議な呪文に、ソフィアは素直な疑問を投げかける。
なんでも、アレックはキーンに会ってからすぐに、ウィリーに宛てて今までの経緯を含め彼の想像――妄想――を含めた怪文書を送り付けた。
その行動の裏には、教会にかかわってしまった事に対する恐怖心があるのだろう、とソフィアは思っていたが、どうやらそれは教会だけではなかったようで、頻りにエズルにかかわるのを止そうとソフィアに進言するほどであった。
ソフィアから相談を受けた雇い主ウィリーは、なんとしても彼にやる気を出させ、そして『解決』してほしいと満面の笑顔を向けるばかり。アレックに比べて立場的には下のはずのソフィアは、なぜか彼を鼓舞するというのがこの三日間の日常だった。
「正直、関わらなくてもよかったと思うんだけどなぁ。あぁ、エズルなんて名前を覚えようとした俺がいけない。だからまた言われるんだ『万年二流』だって」
「――その話は、聞きましたから、諦めて、『事実』だけ確認、しましょう」
重い溜息をつくアレックに、さすがにソフィアは苛立ちを覚えていた。
ソフィアは、ロシア系の移民の家系を持ち、両親共に信者である事から、教会とも何かと縁があった生活を送っていた。
そのため、教会に対してアレックの思う様な不気味であるとか、得体のしれない恐怖というのは持ち合わせていなかった。
いくらきな臭いと分かっていても、あくまでも『特定の範囲』での事と思っていた。未だ帝国とはいがみ合っている状況で、軍事の事など特定分野にかかわる技術を嗅ぎまわられていい顔しないだろうというのは、容易に想像がついたからだ。
長くアップタウンに住んでいる事もアレックに対する苛立ちを増大させる要因となっているとは、ソフィア自身も思っていた。
彼の生まれや育ちを直接細部まで聞いたことはないが、端々から覗かれるアップタウンの人に対する妬みは、時々度を越していると感じている。
特に、ソフィアに対しては煙草の事では事うるさい。尤も貰っているのだから仕方ないと思う反面、それがアップタウンに住んでいる者への妬みからの言葉だと痛感していた。
配給品であり家族でも彼以外吸っていないのを知っているソフィアにとっては、一世帯でもらえる煙草の量が、一人では吸いきれないほどだということは知っていたから、事あるごとに嫌な顔をされるのが、嫌な反面、それによる意趣返しもできている……と少なくとも思っていた。
上手くいかない関係性ではあるが、アレックの年上としての甲斐性の無さ、仕事に対する不真面目さ――人に対するあたり方など――は彼女を納得させられる『理由』が見当たらず、苛立ちを掻き立てる要因になる。
そんなだから、表面上はうまく付き合っていたとしても、そろそろ限界を感じているのも事実で、ウィリーに云ってそろそろ配置換えを希望しようかとも考えていた。
「――相手は教会の重鎮だぞ? なんでそんなに落ち着いていられるんだよ。変な事なくたって絶対にヤバいに決まっているじゃないか。あぁ……なんでこんなことしているんだろう」
「すこしは、しゃきっとして、くれない、ですか?」
「そう云うなら、ソフィーだけ行ってくればいいじゃないか。あぁそうだ。俺は気分が悪くなったから……」
「お迎えが、きたみたい、ですね」
アレックの言葉を遮り、ソフィアは建物の奥からやってくる一人の男性神官を見た。
時間通りに教会の入口に使いを出してきたことで、もう逃げ場はなくなっている。
尤も、ここで帰るという手立ての方が、無礼に当たるのでは、とソフィアは思っていたが、その言葉は飲み込む事にした。
神経質そうな顔つきの男性は、<雄鶏>特有の白を基調とした羽で出来たような外套を肩にかけ、手には何やら分厚い本を持って二人の前にやってきた。
「アレック・メトカーフ様と、ソフィア・プガチョア様ですね?」
「ええ、そうです」
「――あぁ」
納得しなさそうに頷くアレックの脇を右肘で小突いた。
ぐふ、という奇怪な音を口から漏らしつつ、その長い体をくの字に折り曲げている。
ソフィアは、冷めた目でアレックを睨む。
「あー……よろしいでしょうか?」
「えぇ、大丈夫、です」
「……であれば、本日はエズル様からのご招待ということで、本日の晩餐会に――あぁ、ありがとうございます、招待状は確かに確認させていただきました。
本日のささやかではありますが、お食事をご用意させていただきました。本研究施設で用いした食材を利用しておりますので、十分にご賞味いただければ……ついでに、感想などをいただけるとより今後の励みに……。
本日のお二人のご予定の後、エズル様の研究発表があるとのことで……時間は少し短くなりますが、ゆっくりしていただければと思います」
と、神父は二人の前に立って先導し始める。
その様子を見て逃れられないことを悟った様に、アレックは小さなため息をつき、ソフィアを先に歩くように顎で合図をする。
なんともぞんざいな扱いに、小さな苛立ちを覚えつつも、ソフィアは神父についていく。
アレックはその後ろからついてくるようで、硬質な靴の音が響いた。
沈黙が続く中で、耐えかねた様にアレックは小さな声で――ソフィアにだけ聞こえる様に――呟いた。
「ソフィーはよくもまぁ、平気な顔をしていられるな」
「私も、教会の、――広義の意味では、信徒ですから。教会に、恩義はあれど、それ以上の感情は、ないです」
アレックへの当てつけの様に、声量は変えずにソフィアは応えた。
おや、と前を歩く神父が振り返る。そして、ソフィアの胸元を確認する様に視線を動かした。
しかし、彼女は教会のシンボルであるいずれの首飾りも下げていないことを見ると、意外そうな顔をした。
ソフィアは、困った表情をして、神父に取り繕う。
「両親が、教会の信徒で、私も幼い、頃から、よく礼拝に。今は仕事の、関係もあり、『宗教』による、偏見を、無くすために、普段は着けて、いないのです」
そういって神イリスに礼拝するときの様に――簡易的ではあるが――神父に徴を切る様子を見せた。
神父は微笑みを浮かべ、
「あぁ、確かに探偵業であれば、教会を……よく思わない方とも会われることでしょうからね。なるほど、信心深い家系の様で……、私達もうれしく思いますよ。
最近ではあまり信者の数も多くなく、教会が生活の基盤を作っているというのに、よくない話しも流布し始めている始末で……。
あぁ、すいません」
神父はくるりと踵を返すと、再び歩きだした。
ソフィアが振り返り、アレックに視線を伸ばすと、嫌な物でも見たような苦い表情をしていた。
それから、神父に連れられて人気の少ない教会の中を、まるで迷路の様に進んでいくと、目的の扉が見えてきた。
木製の扉は半分開いており、中から、温かみのあるオレンジ色の明りが漏れているのが確認できた。
神父は扉の前で振り返ると、二人を中へ誘うように右手を差し出した。
「こちらになります。どうかご存分に堪能ください」
「ありがとう、ございます」
ソフィアは、そういって扉をくぐる。
アレックであれば『異質な感じがする』といってごねたりするのだろうが、と思いながらさっさと奥へと進んでいく。
観念した様におとなしくなったアレックがその後に続く。
右手に持っていた土産ががさり、という音を立てて椅子にぶつかり、慌てて左手で抑えた。
部屋の奥には広めのテーブル――八人ほどは掛けられるような――が配置され、中庭を臨める作りになっていた。
数少ない調度品は、ロココ様式を思わせる様な手の込んだ作りをしているため、壁に備え付けられた蝋燭と、テーブルに置かれた燭台の灯りだけでは、陰影を濃くし、不気味な気分にさせた。
テーブルにはすでに五人の神官が座っていた。
女性が二人、一人は神経質そうな高齢の女性、もう一人はおとなしそうな中年の女性。
男性が三人、皆年齢は高そうだが、二人はまだ五十代くらいだろうか。そして一番年齢が高いと思われる男性が一番高い席に座っていた。
その様子を見て――キーンの云っていた七十近いという言葉もあり――エズルだとすぐに分かる。
「バック・メイラード探偵社の、ソフィア・プガチョア、です。本日は、御招きいただき、光栄に思います」
「……同じ探偵社のアレック・メトカーフです。よろしくお願いします」
ソフィアは信者であることを示す徴を胸の上で結び、アレックは頭を下げた。
「よく、お越しになられた」
エズルは口を開く。
妙に鮮明に、歳を感じさせないその言葉が、部屋に響き渡る。
それは一種の楽器でも鳴らしたかの様に凛と響くものだったから、ソフィアは少し肩をピクリと震わせた。
「本日の晩餐に伴い、……紹介いただきました方から、料理に合うお酒を大変好まれるとお聞きまして、……少しではありますが」
「ほう……」
その言葉に、年齢の低い――といっても五十前後――男性神官が立ち上がり、アレックの前にやってくる。
すっとアレックが土産物を渡すと、中身を少し確認してから、エズル氏の方に、音もなく近づいていく。
そして袋から箱を取り出してエズルに見せた。
「あぁ、バルブファミリーの蒸留酒ではないか。――確かに教会にいてはそうそう手に入らない、なかなか珍しい物を持ってきてくれたようだね。あぁ、二人ともそんなにかしこまらなくても結構だよ。ささ、席に座って」
顔を綻ばせるエズルは、二人に空いている席を示す。
促されるままに二人は空いている席に向かう。女性の列と男性の列が分かれていたので、それにならって、エズルに向かって右手側にソフィア、向かい合ってアレックが座った。
「一応自己紹介をしておこう、私が教会の使徒の一人になる、エズル・トーホーだ。よろしく頼むよ。あぁ、席に座っているのが手前から紹介しよう、ロス・グレン主任研究員、チャールトン・ウィリアムズ研究員」
そう云うと男性二人が頭を下げた。
「それから、ハンナ・バーネル主任研究員、ロージー・マリガン研究員」
その言葉に女性二人が頭を下げた。
それらの所作があまりにも画一的な印象を受ける。まるで機械でも見ている様な表情の揺らぎ、そういったものを含めて何も感じないため、ソフィアの内に墨汁のしみの様に不安がじわり、じわりと広がっていくのを感じる。
揺らめく光と相まって、それは二人に緊張を強いるに十分すぎる圧力があった。
「今日は、なんでもお尋ねになりたいことがあるとか。――しかし、まずは晩餐にしようではないか。その後ゆっくりとお伺いしよう。
多くの時間を研究に籠っているため、こういう場でしか人に会うことが叶わないので許してほしい。
それに、外部の方の意見を聞くのも私達研究員としては貴重な場なのだ」
そう云うとベルを鳴らして、料理を運ばせる。
運ばれてきた料理はどれも美しい色どりで、一般的には手に入らないような食材を使われていることは、街の中の限られた食事をしている二人からも想像がついた。
特にメインに飾られるローストされた肉の種類の多いこと。様々な部位なのか、あるいは違う種類の物なのか、全く想像することができなかった。
若い神父二名が給仕をするようで、まるでホテルのウェイターの様にきびきびとした動きで、大皿から料理を小分けにしていく。
「この後発表される新しい試験動物の肉になる。なに、毒などはない。私もよく食味試験などを行う中で食べているから安全性は問題ないよ。山羊を改良していったのだが、どうしてこういう食味になったのか不思議でね。
そうだな、何と説明をすれば……。今ではほとんどいない豚と同じ食味と思っていいだろう。それから、ダチョウの様に弾力のあるものもある。かと思えば、牛の様に食べ応えがある物まで。
これが同じ動物から――部位は違うが採れるのだから、ぜひ広めたいと思っているのだ。
せっかくなので外部からの意見も欲しいところだったのだ。
いくらかは街の食堂でも出回り始めていてね、大変食味が好評ではあるんだが……。生の声が聞けるわけではないのでね。
丁度いい機会になったことを私は嬉しく思うよ。ささ、遠慮せずに」
エズルは嬉しそうに笑みを浮かべて、食事を開始する。
それに習い、ゆっくりと二人は食事を口へと運んでいった。
食事を終え、二人は至福の時を味わっていた。
いくつもの質問が、矢継ぎ早に出された物の、普段では味わう事のできない食事の質に――特に蛋白源の多いこと――満腹である事も含めて心地よい満足感を得ていた。
当然今まで食べた事のない食材に対する忌避感は最初いくらか持っていたものだが、それも一口を食べたところですべてが変わった。
代り映えのしない鳥肉の料理か豆のスープというのが一般的な食事であることから、先日のブルノの食堂を含めてだいぶ贅沢をしている事をソフィアは、感謝していた。
「さて、――色々質問に答えていただきありがとう。それでは、当初の君達の目的というのをそろそろ聞かせていただけるかな?」
「はい、そうですね……。なんと申し上げて、いいのか。大して、大きな問題では、ないと、いいますか……」
ソフィアは、一呼吸。
そして意を決した様に、
「実は、私どもの、探偵社に、一つの依頼が、入りまして。それも教会の、方からの、ご依頼でした。名前は伏せ、させて、いただきますが、『ある神父』が、行方不明になっている、ということでした。ついては、その方の、身辺などを、依頼に基づき、調べさせて、いただきました。
まったく、行方の、見当がつかない中で、一月ほど前、エズル様にお会い、する予定という、日記を確認しまして……」
「ほう?」
「それで、その方の、最後の動向を、確認させて、いただきたく、参上した、次第です」
「なるほど。となると、誰と……私は会ったのだろうか……一月ほどの間に、結構な人数と会っているし、すぐにその人だというのは思い出せないかもしれないが……」
「名前を、『ランドルフ・レスリー・ダフ』神父と」
「……」
その名前に、思い当たることがないのだろうか、腕を組み、エズルは「うーん」と唸る。
ソフィアは、名前以外の情報が必要かもしれないと思い、アレックに小声で、「外見をお願いします」と依頼する
アレックは仕方なさそうに鞄からメモ帳を取り出す。
「身長5.5フィート程度、体重140ポンド程度、金髪に茶色の瞳、こめかみ付近に小さな傷跡のある男性ですね。少しドイツ訛りがあるとのことでしたが」
その言葉に、エズルは手を打った。
「あぁ! ドイツ訛りの彼か。彼が、ランドルフ神父か。確かに。確かに、一月ほど前だったか……食事をしたのを覚えているよ。なんでも彼は生物科学にたけていたね。
皇国の<雄鶏>に入りたがっていたのは覚えているが、……今丁度空きがない状態なんだ。そのことを話したらひどく落胆していてね。
そうか……彼が行方不明に」
「えぇ、壁外に出るような方でもないから、もしかしたら街の中にまだいるのではないかと……それで、何か気になる事を話していたとか……あればと思ったんですけど」
「うーん、気になる事は特にないねぇ。どこかに行きたいとか、そういう事を云ってはいなかったように思えるし……力になれず申し訳ないね」
エズルはすまなそうに眉を寄せる。
それは一見すると謝罪のそれに見えたが、その実、口の端が少し笑みを作っている様にも見えた。
その様子に違和感を抱いているのは、ソフィアだけではないようで、アレックが薄い笑みを浮かべているのを確認できた。
彼が何やらよからぬことを思いついているのは分かったが、それが何であるかは確信が持てなかった。
しかし、アレックの視線が、とぼけた様なエズルの表情を見ていると、険しくなり始めているのが分かった。
いらない正義感が芽生えたのだろうか、とソフィアは不安になる。
『エズル』が知っているという事を彼の妄想――ウィリーに宛てた手紙の中でも――で述べていたのを知っているため、酷く不安が募るのを感じた。
その時、ソフィアはキーンの言葉を思い出した。『好奇心は猫を殺す』という言葉が脳裏でリフレインする。
アレックが確信めいた様に、確実に口を開く。
それを止めなければいけないと思い、ソフィアも言葉を発しようとした。しかし、アレックはしっかりと、言葉にした。
「『魔物』がいる、というのを聞いたことは?」
「――それは噂話の類かね?」
「いえ、おそらく、そう抽象的な物ではなく。――実際に被害があったとされている者もいる訳ですから、これは個人的な推測ですが、『気のふれた』者達による犯行ではないかと」
「ほう?」
しらじらしいと云わんばかりに、アレックは口角を上げる。
ソフィアは内心その言葉を止めるためにどういった事ができるか必至に考えた。
云わせてはいけない。
その焦りだけが、彼女の中で募っていく。
「――その者が捕まらない。それには理由があるとも思っているんですよ。可笑しい話しですよね、この街で、唯一無二の力を持っているあの皇国の実動部隊が、何一つできていないという事が。<狼>も、<鴉>もこの街にはいるのにも関わらず、何一つ『でっち上げる』こともしない。だから――」
「そこまでで、いいのでは、ないですか?」
やっと出した言葉は震えている。
いくら何でも、突っ込みすぎだ。そう思ったソフィアだったが、その言葉は飲み込んで、アレックを睨みつけるばかりで。
アレックはただソフィアを一瞥すると、エズルに視線を戻した。
「君はそれを知って、どうするつもりかな、アレック・メトカーフ君?」
それは最後の通牒だ。
ここを間違えれば、とソフィアは祈る様な気持ちでアレックを見た。
「好奇心ですよ。最初は『知らない』だけ聞ければいいかと思ったんですが……。どうも何やら隠していらっしゃるのがよく分かる。
それが何なのか――気になるという物でしょう?」
「なるほど――なるほど」
エズルはチャールトンに視線を飛ばす。
それを感じ取り、すっと立ち上がり入口の方へと歩き出す。
不気味に靴が鳴らす音が響く。
何とも硬質な、それは時計の秒針が進む様に正確に。
そして扉が閉じられた。
「ようこそ、<雄鶏>の食卓へ」
エズルは満面の笑みを浮かべてアレックをみた。
「あの、私は、特に――」
「まぁ、君は座っていたまえ、ソフィア・プガチョア君。彼の好奇心という獣はどうやら君が思っている以上に業深い物のようだ。
知らなくていい事を知らないといけないその性質は、あぁ、どうしてランドルフ神父と同じじゃぁないか」
「……やはり何か知っているという――」
「君の問いにまだ私は答えていない。――そう急くものではないだろう?
あぁ今日は気分がいい、丁度いい機会だ。君達も見ていくといい、私達の研究の成果を」
チャールトンが中庭につながる扉を開く。
生ぬるい風が入り込み、室内を撫でまわしていく。
草木が揺れる掠れた音が幾重にも重なる。
心地よい音色のはずのそれに、不安が掻き立てられる。
風に運ばれるのは自然の音だけではない。一つの音が聞こえる。
それは動物の鳴き声の様に、それは誰かの悲鳴の様に。
神官達が何かを押してやってくる。
台車の軋む音。それは嫌な耳障りな金属のぶつかり合う音を持って。
「これについては、多くの人は見た目で判断してしまう。
それでは何も得られない。私達は生きるために何かを犠牲にして、何かを得る必要があるのだから。
あの世界の破壊の果てに、一体どれだけの生き物が生き延びたのだろうか。
数の増やしやすく、餌も比較的に手に入りやすい鶏は、我々が生きる上で重要な資源だった。それは多くの時間を費やしても『其れ』にたどりつく資源にはなりはしなかった。
かつての様に何万も、一度に飼える様になったのは最近の話しじゃぁないか。
それでも限界は来る。この荒れた大地に生き残る強い家畜がいるだろう。
牛や山羊、豚なんてもう姿を見る事も出来ない。
唯一頑張っているのは羊だが……、それは肉にするよりも衣料としての要求が高い。
であれば、新たな物が必要だ」
エズルは滔々と語る。
黒い布がかかった何かが運ばれてくる。
それは、動物の鳴き声の様に、それは。誰かの悲鳴の様に。
軋む音は金属の檻か。
「紹介しよう、君が求めていた『其れ』だよ。これは『豚』だ」
布が外される。
はじめにソフィアが感じたのは、茶の瞳。
檻から覗き込む様に、もたげられた首の先に爛々と光る瞳。
芋虫の様な体躯。
両生類の様にじっとりとした肌。
突起の様に伸びだした首……いやそれは人の上半身の様。
体のわりに小さな頭部。
突如その上半身が起き上がる。
突飛な行動に身を固くする二人。
掴まれる鉄格子。まるで骨が打ち鳴らされるような、軽い音が響く。
その顔を。その目を見てしまう。
あぁ、眉間の傍に何やら傷跡がある。
そして『其れ』は潰れたような、潰されたような声で「イェェェ!」と鳴いた。
「神の体との融合は、私達に新たな光をもたらすのだ。
さて、アレック・メトカーフ君。君はどの様に感じるかね?」
閉ざされた扉、その重みを遠くで感じながら、ソフィアは祈りをささげる。
嘔吐感を必死でこらえながら。
手を結んで祈りをささげる。
神イリスよ。
稚拙な文章ですが読んでいただき、ありがとうございました。