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雨の日の拾い物


全く、ツイていない。

その日も生憎の空模様だった。




「…ったく、雨の日がこう続くと買い出しも億劫だっつーもんだぜ…」


男はざぁざぁと降りしきる雨の中、げんなりとした様子でため息をつきながら、片手に持っていた荷物が濡れないよう抱え直した。


ここ数日の雨続きの空模様に、男ーー野蛟は苛立ちながら帰路を急ぐ。


車道を走行する大型トラックが水溜りに勢いよく突っ込み、ばしゃりと隣接する歩道へ泥水を跳ねさせて走り去った。目の前を歩いていたそこそこ年配のサラリーマンの風貌をした通行人がどうやらその被害を被ったらしく、トラックが去った方向に恥も外聞もなく怒鳴り散らしている。


(スーツ台無しにされた気持ちはわかるが、ンなことしても聞こえねぇだろうよ。)


他人の不幸を尻目に、自分でなくて良かったと少し安堵しながら更に早足になる。次は自分かもしれないと思うと、今着ているものを洗濯したり再び買い出しに行ったりなどの面倒臭さが増すだろうことが安易に予想されるからだ。


そして雨の日が続いたので、あの喧しいカラスも雨宿りに来るだろう。店を汚される前に、なんとしても店に戻らなければ。あとはすぐそこの角を曲がれば自らの城だ。


野蛟は店への最後の角を曲がる。

傘を首と頭で支えながら、ポケットに傘を持っていた手を突っ込んで店の鍵を取り出す…という、一連の慣れた動作をすると顔を上げて。


そこで、ぴしりと固まった。


彼の視線は細い道に入った、少し先。


よりによって。


そう、よりにもよって、だ。

店の入口の横に、黒い影が蹲っているのを捉えていた。


「…ウッソだろ…」


完全に、面倒事じゃねーかよ…!


野蛟は頭を抱え……両手は物理的に塞がっているから、心の中でではあるが……マリアナ海峡よりも深い深いため息をついた。


なんで、よりによって俺の店の前なんだ。


ぐるぐると数秒思考を回転させ…悩む前に即座に結論を出すと、野蛟はその影に近付いていく。



そうして彼は、影を素通りすると


店の鍵を開け、中に入る。


一歩入ったところで乱雑に傘を畳むと、それを来客用の傘立てへ放り込む。


ずかずかと一直線にカウンターへ向かい、持っていた荷物が崩れたり、倒れたりしないように丁寧に置いて。


すぐさま入口へ踵を返した。


傘を持たずに、ばん、と苛立ちから力任せに扉を開く。


(店の前に横たわられちゃ、ただでさえ連日のこの雨で客が減るのに、変な噂まで立ったら更に減って困るっつーんだよどうしてくれんだ迷惑だぜ本当によぉ…!)


心の中で力なく横たわる影へと文句を垂れ流しながら、警戒を解かずに数歩だけ歩み寄る。野蛟が雨に打たれながら見たその影の正体は、人であって…人ではなかった。


全身傷だらけであることはぱっと見で容易に見て取れる。致命傷や重症の傷は見た目には見受けられない。意識をまず確認するが、無反応。息は胸の上下があるのでまだ生きてはいるようだ。狸寝入りの可能性も捨て切れないが、それについては少し観て、すぐに無いだろうと判断を下す。

黒い頭に同じ色の獣の耳が乗っている。ぺたりと力なく垂れており、ぴくりとも動かない。仮に意識があり、警戒されているならここまで全く動かないことはないからだ。


(…オーヴァード、シンドロームのメインはキュマイラってとこか。チッ、意識戻した時にもし反抗されたら厄介だな…)


伸ばしっぱなしなのであろう、所々がざん切りになった長い黒髪と、黒い獣のような腕と脚。所々が金色混じりだった。力無くぐんにゃりする猫科のような肢体をよいせと担ぎ上げると、図体の割には随分と体重が軽い。


とりあえず、風呂場にぶち込んどくか、とひとりごちると、野蛟はそれを抱えたまま店の中へと戻って行った。




to be continued...?

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2020.05.13


唐突にカケルの設定が降ってきた時に、一緒に降ってきたネタ。


野蛟さんが傘を持たずに出て行ったのは、もし応戦する事態になったら野蛟さんは両手がフリーの方を好みそうだから傘と荷物置いとこ。っていう独断と偏見。

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執筆BGM_

アルティメットセンパイ-PinocchioP

ありふれた世界征服-PinocchioP

SNOBBISM-Neru&z'5

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