4 ―Side:K―
祭りの熱に浮かれ盛り上がる群衆の真ん中で、わたしはそれを見ていた。
「ふーん……。もっと奥手かと思っていたけど、それなりにやるじゃない、お姉ちゃん」
わたしの視線の先では、二人の男女が笑顔で握手を交わしている。先輩とお姉ちゃんだ。
わたしが少し目を離した間に、なかなかの急展開を見せてくれたものだ。正直、少しだけお姉ちゃんのことを見直した。本当に少しだけだけど。
「でも、こうでなきゃ面白くないよね」
勝負は、ワンサイドゲームではつまらない。抜きつ抜かれつ、スリリングな展開の方がわたしの好みだ。故にお姉ちゃんの健闘は、わたしにとってうれしい誤算。これでしばらくは退屈しないで済みそうだ。
愉快になってきたせいか、自然と右の口角が上がってしまう。わたしの悪い癖だ。
何はともあれ、先輩とお姉ちゃんの仲が進展してしまった以上、わたしも次の手を打たなくてはならないだろう。これまで以上に、強力な一手を……
さあ、わたしはここから何をするのがいいかしらね。
現状、先輩の心は完全にお姉ちゃんへと靡いている。このままだと、完全に落ちてしまうのは時間の問題だろう。とはいえ、二人の仲がまだ決定的なところまで及んではいないのも確かだ。なぜなら、まだ契約がわたしの負けを告げていない。ならば、波紋を生む手段はいくらでもある。人の心の隙に付け込むのは、わたしの専売特許だ。
「お姉ちゃんも、ここまで来たら押し倒すなりなんなりして、さっさと条件を成立させちゃえば良かったのに。これでわたしに逆転負けしたら、敗因は押しの弱さだね」
無邪気に微笑むお姉ちゃんへ、挑発的な笑みを送る。ここからは、わたしのターン。果たしてお姉ちゃんは、先輩の気持ちをつなぎとめることができるかな?
「本当のゲームはここから。期限は残り一カ月。目一杯楽しみましょ、お・ね・え・ちゃ・ん」