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ちゅーちゅー狼

 

 薄暗い空間で目が覚めた。

 時刻はまだ夜なのだろうか?

 身体は動く、だということは。


「助かった、のか?」


 意識がなくなる直前、何か受け答えをして苦しくなったのは覚えている。

 わずかな希望を求めて胸に手をやると、そこにはまだ慣れないふくらみが――。


「ひゃわっ……て、えぇ!?」


 ダイレクトな感触を疑問に思えば、服は全て脱がされていた。

 レイラの身体が全裸だと意識したら、もうダメだった。


 太ももをこすり合わせると、自身が女の子になってしまったことを強く実感してしまう。

 モジモジとすればするだけ女の子の身体にドキドキしてしまう。

 そんなの、恥ずかしすぎてどうにかなりそうだった。


「そもそも、なんで裸なん――ッ!?」


 俺が気づいたとき、すでに裸でベッドに寝かされていた。

 そして隣には、同じような格好の女の子が寝ている。

 そう、ひとつのベッドで。


 そのとき、シーツを剥ぎ取られて寒かったのか、タイミングよく女の子が目を覚ました。


「ふわぁ……ん。何よ、うるさいわね」

「ま、まってくれ! 俺は何もしていな――」

「んんっ、意識が戻ったならもういいわね。いただきまーす」


 わけもわからぬまま、女の子が迫ってくる。

 必死に抵抗するも、女の子の華奢な見た目からは想像できないほど強い力で押さえつけられた。


「え、え? ちょっとまって。どうして近づいて……ちょっと首元はぁっ! んんっ!」

「かぷっ」

「ぁ、ぁぁッ!」


 首筋をぺろりとされ、冷たい牙が突き立てられる。


「れろっ……ちゅぱ」

「んんっ、ふぁっ、あぁっ!?」


 俺は抵抗する術もなく、なすがままにちゅーちゅーされることしかできなかった。




 ◇◇◇




「吸血、鬼?」

「そうよ、正確には吸血姫のほうかしら。最近まで寝ていたから、この時代の人には馴染みが薄そうね」


 お互いに落ち着き、衣服も身につけた後。

 ベッドに腰掛けたお相手は人外だったらしい。


「聞いたことがある。何百年も昔にそんな種族がいたと」

「あら、これでも私若いわよ? さんびゃ――17歳ね」


 ちょっと間があったのは、突っ込んではいけないところだろう。

 金色の長髪をはらりとさせ、スレンダーな身体でナイ胸を張る女の子。

 とても17歳には見えない。

 せいぜい10歳か12歳が妥当なところだ。


「何か失礼なこと考えなかったかしら?」

「――! め、滅相もない。じゃ、さっき血を吸われたのって」

「ええ。貴女の血、今まで味わったことのないほどの美味しさだわ。ずっと手元に置いておきたいくらい」


 ぺろりと舌なめずりをする少女は妖艶だが、どうみてもおもちゃを見つけた小悪魔のソレだ。

 たとえ命の恩人だとしても、吸血姫なんて危ない種族と関わるつもりはない。


「き、君が助けてくれたんだよな?」

「ええ。君なんて他人行儀、やめてちょうだい。これから長い、ながーい付き合いになるのだから、ね?」

「えっ?」


 女の子はゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 そして立ったまま動けない俺の胸元へ手をかざすと、静かな声で『命令』した。


「『あなたの名前を教えて?』」

「っ! お、れは……アレク。アレク・エリュシーデっ!」


 いつの間にか、口が勝手に動いていた。

 いま、何をされた?


「女の子なのに、男みたいな名前なのね」

「っ! おい、今俺に何をした!」

「? ちょっとした命令よ。脱がして何度も確認したけど、身体は女の子なのに……変ね」


 思案げにこちらを見つめる彼女だが、得体のしれない吸血鬼だ。

 これから何をされるのか不安でたまらない。


「や、やめろっ! 俺は男だ。お、おいしくないぞ」

「あら、私は男という生物が嫌いなの。だから貴女もをひん剥いて確かめたのに、本当に男かしら?」


 彼女の手は、首筋をなぞるようにして頬まで上がってくる。

 思わず声が出そうになったが、グッと堪える。


「い、今はレイラという女の子になっているが、俺は男――んやぁ!」

「ふふっ、かわいい。こことか、こことかは女の子なのにね?」

「あっ!? ちょっとどこ触って――んんぅ!?」


 その日、俺たちはベッドから出ることができなかった。

『命令』されたりした出来事は…………もう忘れよう。

 とにかく、俺はどうやらドSな吸血姫様に魅入られてしまったらしい。




「ぐすっ……ぐすっ……」

「ふぅ、貴女は女の子で男なのね。よくわかったわ」


 シワだらけになったメイド服を身につけ、ようやく吸血姫様にわかっていただけた。

 こんなことなら、いっそ裸のときに……いや、深く考えるのはよそう。

 とにかく、レイラの身体の中に俺の精神が入っていることは納得してもらえたらしい。


「おかしいと思ったのよ。どうみても女の子なのに、血はマイルドというか、スパイスが効いているというか」

「そんなソムリエみたいなこと言われても」

「じゃあ、あとで貴女も飲んでみる? 今の貴女なら、きっと気にいるはずよ」


 女の子の言葉に、ハテナマークで埋まる。

 自分で自分の血を飲んで、何が楽しいのだろう?

 それに血を飲むだなんて、俺は吸血鬼じゃあるまいし。


「そういえば忘れていたわね。私の名前はアナスタシア。昔は……いえ、ただのアナスタシアね」

「? ああ。吸血姫様は、ここで一人で暮らしているのか?」


 聞けば、ここは人の近寄らぬほど奥地にある民家らしい。

 俺が倒れていた場所からさらに遠い場所で、あの日気を失ってからもう半月は経過しているとのことだ。


「ひとりには慣れていたけど、あれは参ったわね。あなたがいなければ、また私は深い眠りについていたかもしれないわ」

「ん? 何のことだ」


助けてもらったのは俺のほうだ。

 あのとき崖から転落した後、女の子の声が聞こえた。

 下にいた彼女も、空から女の子が降ってきたらそれは驚いたことだろう。


「……そうね、見せたほうが早いわ」

「え? いきなりどうし……て、おい。服を脱ぎだすな! さ、さっきも言ったが、俺は男だからな!」


 スルスルと服を脱ぎ、またたく間に肌を晒す女の子。

 いくら薄暗いといっても、見目麗しい女の子の裸体は眩しく光る。

 スレンダーすぎるのが、非常に残念だが。


「最初に言っておくけど、ごめんなさい」

「え? いったい何を――うわっ!?」


 女の子が漆黒の闇に包まれる。

 かと思えば、そこには巨大な狼が代わりに現れて――。


「グルルルル」

「ぁ、ぇ、ふぁ」


 それと至近距離で対面した俺は、その後すぐに。


「きゃぁぁあぁあぁ!!!!」


 どうみても女の子の悲鳴をあげて気を失ってしまった。


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