0. 終着点
世界とは、不平等で不条理で不均衡である。
理想として、これと対極のことを唱えても何の魅力もない。
完璧などあり得ないからだ。
これは未来への手紙で。この世界における魔術師の始まりを見届けた王から、最後の王へ送る。
痛みを選び、血を流すことでしか世界を守れない愚かな王。
人の上ではなく、人の下で世界を支えるためにあった王。
これは、私と君と、君に至るまでの数多の王のことだ。君が何者であろうと、この血を受け継いだ時点で、逃れられない役目なのだ。
顔も知らぬ未来の王よ、願わくば、君がこれを読むときなど来てほしくはない。
だが、何事にも終わりがある。私はそれを見てきたのだから、そう告げなければならない。
世界はどこで間違えたんだい。
君は何を選んだんだい。
私が決めた世界のあり方は間違っていたのだろうか。
王たる私がこのような事を言ってはならないだろう。
皆が信じた王が、皆の未来を信じられていないなどあってはならないだろう。
きっと、私が信じられなかったから世界は終わりを迎えるのだ。
最後の王、アースクロウの血の終着点。
どうか、最期は迷わないでくれ。
そして君が、最期のその先を掴み取る力があると信じている。
さて、これを読んでいるということは既に結論が出ているのだろうか。いや、そのはずだ。私はイテナにそう命じたのだから。
君は最後に相応しい王だ。