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新興宗教教祖の異世界伝道記  作者: ゆーとぴあ
第三話 教祖は人狼たちに伝道するようです。
29/49

梅毒。


地球ではそう呼ばれていた感染症がある。


梅毒を引き起こす細菌は、人体から外に出ると、瞬く間に死んでしまう、そういう意味では非常に弱い細菌だ。


そんな細菌が感染していく方法は、空気に触れることなく体内から体内へ直接移動できるような方法、つまり、性交渉がほとんどだ。


なので梅毒は、いわゆる性病として知られている。


小さな薔薇の様な発疹、バラ疹とも呼ばれるそれは、梅毒に特徴的に見られる症状の1つだ。


そして今目の前にあるそのバラ疹は、学生時代に医学書で見たそれと酷似している。


「ちょっと待ってくれ。君、もう少しこっちへ来てくれないか?」


急に雰囲気が変わってそう言う俺に、ルカも思わず身を除けた。


「え!?わ、わたしですかぁ?そんなぁ、わたしルカさんを差し置いて先にするなんてできないですよぉ。でもぉ、救世主様がそうおっしゃるならぁ」


「い、良いから、近くに寄ってくれないか?」


「はぁい」


近くでよく確認する。


後ろでルカが不機嫌になっているのを感じるが、今はそれどころではない。


「そ、そんなにまじまじと見られたら、照れちゃいますぅ」


「ちょっと良いかな?」


そう言って、今度は女の足を持って開かせ、太ももの内側を確認する。


「やっ、救世主様、意外と大胆っ・・・」


やはり。


太ももの内側に、特徴的な赤い痣が広がっている。


そこを指で押してみる。


「ひゃうっ!」


「ここ、痛いか?」


「い、痛くないですぅ!」


無痛性の赤い痣。


これも梅毒の症状の1つだ。


「なぁ、こういう発疹とか、この赤い痣みたいなのって、他の村人にも出ていたか?」


ルカにそう尋ねた。


「あ、あぁ。ある頃から突然、村人の中にそういうのが出るようになってな。や、やっぱりニンゲンも、その印が出ている者が好みなのか?私たちの村でも、その印が出ている者は縁起が良いからって、祭りの日には皆で抱くんだが・・・」


なるほどな。


それで、村中に感染が広がったのか。


迷信が、最悪の形で広がってしまったらしい。


昔ながらの風習の中には、科学的にも理に適ったものも多くある。


例えば、近親者が死んだ時に、しばらくの間は外に出ずに喪に服す「忌引き」。


これは、供養や心の整理の意味合いの他に、感染症の拡大予防にもつながっていたと考えられている。


しかし、風習の中には、最悪の結果をもたらしてしまう「迷信」も時には混ざっている。


江戸時代から明治時代にかけて大流行したコレラ。


その時には、「人にうつすと治る」なんて迷信が広がってしまった。


その結果、人々はコレラの感染が更に拡大するように行動してしまい、数十年に渡って感染は続き、何百万人という、数えきれないほどの人が命を落とした。


この村でも、同じことが起こってしまった。


梅毒の症状であるバラ疹がでている者を抱くと縁起が良い、なんて、迷信以外の何物でもない。


この迷信は、正さなくてはならない。

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