精霊
(「自然の声」を聞けるようになりたい)
そう、心の中で唱えてみる。
『ジョブ「覚悟者」のJPを2000消費して、「自然の声」を理解しますか?』
よし!来た!
前に魔物の声を聞けるようになった時と同じように、こちらの必要に応じてステータスメッセージが出てきてくれた!
俺はすぐに「はい」と答える。
『ベリタスは「自然の声」を理解した!』
「自然の声」とは言っても、実際に声として聞こえるわけでは無かった。
ただ、風や雨雲の動きや、森や個々の植物の状態がどのようになっているのか、手に取るように分かるような感覚だ。
そして、ふむふむ、なるほど。
どうやらあの遠雷はこっちの方には来ないらしい。
どうやらもうすぐ雨雲と共に消えてなくなってしまうようだ。
それなら、よし。
「そうだ!俺はゴロゴロの仲間なんだ!」
俺はゴブリンの勘違いに乗ることにした。
「うわーーーっ!!」
「ゴロゴロの仲間だ!」
「もうダメだーー!!」
ゴブリン達は更なる恐慌状態に陥る。
おそらく、この村は以前に雷が落ちたことがあるのだろう。
突然空から電撃が降ってきて、森が燃える、村が燃える、命が奪われる。
雷ほど、恐ろしく、また不可解な自然現象もそう無いだろう。
だからこそ、人は雷を恐れて、畏敬する。
時にはそこに神の怒りを見出す。
実際、古代の日本においても「神鳴り(かみなり)」なんて名前が付けられたくらいだ。
このゴブリン達も、俺をゴロゴロの仲間、なんて表現するくらいだから、雷に人格的なものを感じているようだ。
話すことのできない動植物や、本来は命の無い自然などにも、魂が宿っているという考え方は、アニミズム(精霊崇拝)と呼ばれる。
そして宗教学においては、このアニミズムこそ、宗教の最も原始的な形態だと考えられている。
この村を見る限り、祈りを捧げるための場所や、像などの存在が見られない。
そんな文化水準にあるゴブリン達に、神だの信仰だのと言っても、通じることはないだろう。
ならば、まずはアニミズム的な信仰から教えてやるべきだろう。
「俺はゴロゴロの仲間だ!そして、ゴロゴロの声を聞くことができる!」
地球上に最初に現れた、宗教的な指導者は、自然・精霊の声を聞くことができる者、シャーマンだった。
俺もここではシャーマンとなり、ゴブリン達を導こう。
「だが、安心したまえ!ゴロゴロはこの村には来ないと言っている。この私が居るからだ!」
「え?」
「本当かな?」
「本当だ!俺の言うことを信じるんだ!俺はゴロゴロの声を聞くことができる者、シャーマンのベリタスだ!」