1話 ダンジョンで出会ったのは女の子ではなくゴブリンでした。
「…どこだここは!」
俺は亜里奈を光の枠から押し出し自分が枠の中に入った。そこまでは覚えている。
周りの景色はさっき居た学校の門ではなく薄暗く、壁は自然に出来た洞窟のようだ。
だが、明らかに自然ではあり得ない洞窟だ。
それは洞窟の壁は自然っぽく表現されていても道が真っ直ぐすぎる。こんな洞窟は世界中どこを見ても存在しない。
いや、俺が知らないだけで本当はあるかもしれないが……
「立ち止まってても仕方ないし道なりに歩いてみるか……」
俺の後ろ側は行き止まりなのでいく方向は前に進むだけだ。出来れば何か武器になる物を持っておきたい。こんな洞窟だ。何が出てきても不思議じゃない。
「それにしてもあの光はなんだったんだ?突然地面が光りだしたと思ったら違う場所にいるし。転移させられたみたいだ…な?」
転移!?なんで地球、魔法がない世界でいきなり場所が変わる!?まだたぬき型ロボットも開発されてないぞ!
まぁいくら考えてても仕方ないな。
この世界は人間には予測し得ない事が沢山ある。
神隠しなどもたまに聞くし。
「ん?分かれ道か……どうしようとりあえず左に進んでみるか。」
道を左に曲がりそのまま進んでいくと1つの部屋に出る。
部屋と言っても教室とかの部屋の大きさではなく、運動場が丸々入るくらいの大きさの円形のルームになっている。
ルームの中を見渡して何もない事を確認する。
俺はルームの中心に向かって歩いて行くと、突然地面が光りだす。
それは俺がこの洞窟に転移された時に光った光とよく似ている。
だが色が違う。
俺が転移された時は白い光。今光っているのは紫黒い色だ。
現れたのは、120センチほどの身長、服は着ておらず腰に腰巻きを巻いている。手には刃渡り30センチほどの短剣、なにより緑色の肌、ぎょろつく黄色い目。
「ゴブ……リン?」
それはファンタジー小説などでテンプレの雑魚モンスター。ゴブリンの姿とほぼ同じ。
唯一違うのは殺気を放っている事だろう。
「グギャ!!」
俺を見つけたゴブリンは短剣を右手に持ち、走ってくる。
「はやっ!!!」
明らかに120センチの体躯からは出ないであろうスピード。
そしてそのスピードから繰り出される短剣の一撃。
俺はそれを躱す。だが躱すだけで精一杯だ。
強い人、ボクシングとかそういう世界に生きてる人はこんなの余裕で躱してカウンターを決めるんだろうが、俺はただの高校生…一般人だ。
だがゴブリンは俺の事などお構い無しに連撃を繰り広げてくる。
「あ゛ぁ゛!!」
ゴブリンの身体は小さくとも碌に剣を学んだことはなくデタラメに切ってくるだけだが、その攻撃を俺は回避し続けることが出来ない。
そのせいで何連撃か目にゴブリンの短剣が左腕にあたり血が滲み出る。
「うぅ゛!」
どうする!どうする!どうする!どうする!何かこの状況を挽回できる物は!
その時、またゴブリンがこっちに走ってきたが俺はゴブリンの顔に蹴りを叩き込む。
「グギュ!」
流石に高校生が、小学生の体躯を持ったゴブリンを蹴ればダメージは喰らわないがノックバックはあるようだ。
そのおかげでゴブリンの手から短剣が落ちる。
「いまだ!!!」
俺はゴブリンの落とした短剣を拾うために走り出す。
ゴブリンもすぐに立ち上がって自分の落とした短剣を拾おうと短剣に向かって走り出す。
短剣までの距離は俺の方が遠いが身体の大きさ的に同時に着く。
「ゲギャ!!」
だが、ゴブリンの方が先に短剣に辿り着いてしまう。
「そうすると思っていたぜ!おらっ!!」
俺はゴブリンが短剣を拾うためにしゃがんで取ろうとするところにゴブリンの頭をサッカーボールに見立て思いっきり蹴り上げる。
今までにないほどの渾身の蹴りだ。
ゴブリンの顔が上に跳ね上がった瞬間俺はゴブリンの首を持ち地面に叩きつける。
そこから足で短剣を蹴り飛ばし両手でゴブリンの首を掴み絞殺する。
「死んだか…?はっ!フラグ!」
と思ってさらにゴブリンの顔を10回程蹴っておく。
「これでいいだろ。」
そういった瞬間ゴブリンは砂?灰?のような物になりその中に小さな石ころのような物が落ちていた。
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