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オタク導師と癒しの猫  作者: 北風かをる
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第1章 始まりの森?

もっと真心がほしいです。






 さあ、2話を見はじめてくれてありがとう。翔だ。

話の流れ的に早く進んでほしいと思うが、少しだけ昔話をさせてほしい。



 前回の話で俺が【グ○ンラガン】でアニメオタクになってしまった。という話をしたよな。

それの続きと言えばそうなんだけれど……俺はアニメオタクになれたことを心から良かったなぁ。と思う。




 オタクと言えば、まだ周囲から冷たい目をされることがあるだろう。そりゃあ俺だって『ブヒーッツ!!!』なんて言いながらまるで無い尻尾を揺らすかのように尻をふるオタクは苦手だ。ただ、それだけ面白いということは理解できる。共感できる。それぐらいしてしまうほど素晴らしいものなのだ。アニメや漫画、ライトノベルというものは!



……少し熱くなってしまったが、話を戻そう。

 尻を振る人に対して『苦手』と表現したが、実際そういうやつの中にだっていいやつは当然いる。みんな『人間』なのだ。




 俺が今回指しているのは『人間』というワードだ。



 俺はオタクになったことを1度だけ『後悔』したことがある。すごく単純なんだが…


 俺は中学2年生の時、『厨二病』を拗らせていた。


『デュクシ!』『デュクシ!』と言いながらアニメの映像と合わせ、姉のぬいぐるみを殴ったり、蹴ったり、棒で叩いたり・・・・・




 好きな女の子は俺に絶対惚れると思っていたし、テストだって本気を出せば余裕で点を取れると思っていた。

結果は告白しても振られ、テストは遊び惚けていたのでダメダメだった。中学生の問題なので、赤点をとるほどではなかったけれど、いつもギリギリだった。



 この世界では魔法なんてない。タイムマシンなんてない。すごく可愛い女の子は空から降ってこない。わかってはいるのだけれど、それでも心のどこかで期待し、願っていた。




 流石に包帯を巻いたりは恥ずかしくてできなかったけれど、前髪が長いんだ!といって好きなキャラの真似で前髪をピンで留めていたら『気持ちわる!』とバカにされてすぐにやめた。



 これがリアルな厨二病というやつだろう。一見家でやってる分には問題ないと思うかもしれないが、家族には見られているのだ。時々バカにされる。これは相当な黒歴史だ。



 人間という生き物は魔法が使えないのだ。タイムマシンは開発できないのだ。女の子は空から降ってこないのだ。

人間がどれだけ素晴らしい生き物だとしても、『人間』には一生そんなことはできない。それを黒歴史で俺は学んだのだ。


 さあ、そろそろ昔話をやめて本編に帰ろう。そろそろ意識が戻りそうだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「……ん……ん〜?」

自分の喉からは相当のどが渇いているのだろうか。言葉を発する気を無くさせる。



どこだここは。森の中?溢れ日が目にあたり、眩しい。

周りを見渡しても木やツタで囲まれている。自分がいる空間だけぽっかり穴の空いたかのようにスペースがあるが、他の場所を見ても獣道しか見当たらない。


 まず何があったんだっけ。俺は何をしていた?

頭が突然の景色に混乱している。冷静に考えられない。






・・・本屋?


『ハっ!』と体をすぐに起こし、立ち上がった。『本屋』という単語を思い出しただけで、今までの記憶と、本が人を飲み込む。というありえない光景を目の当たりにした事を思い出した。




「何でもありかよ…」

自然とそんな独り言がこぼれてしまうような現状だ。何か無いか周りを散策しようと、もう一度周囲を見渡そうと一歩下がった瞬間…


足で何か違和感を感じた。



 すると、足下から『にゃーーーーーー!』という叫びが聞こえてきたので、びっくりしすぎて転んでしまった。よく見ると、さっきまで自分の体でちょうど死角になって見えなかったところに、真っ白で綺麗な猫が寝ていたみたいだ。どうやら尻尾を踏んでしまったらしい。




「ごめんごめんごめんごめん!大丈夫か?」

そういい、毛を逆立てた猫に対して必死に謝った。


「もう痛いなあ。せっかく気持ちよく寝てたのに。」




「・・・!?!?!?!?!?!?!?」

声にならない叫びがでた。

猫が喋った!?そんな驚愕な事中々無い。けれどそれ以上にびっくりしたのは……



「……朝日先輩!?」

そう、猫から発された言葉は、3年間だけれど一緒に働いた。聞き間違えるわけない朝日の声だった。


「どうしたの?翔くん…」

そういい、器用に手を動かし目をこする猫。




……………なんだこれ?



猫はあくびをしたのち、目を丸くしてこう言ってきた。

「え!?翔くんなんでそんなでかくなっちゃったの!?」

「先輩が猫になってるんだよ!」

もうツッこむしかなかった。




「何バカな事言ってるの?そんなわけないじゃ……」

言葉の途中で猫は自分の体を見て固まった。

どうやらこの猫は朝日で間違い無いらしい。




「何なんだよこれは……」

中学生の時の俺なら間違いなく喜んでいた光景だろう。けれど、もう俺も大人だ。理解はできるけど認めたく無い。

今一度頭がパンクしそうになった俺は疲れていたのだろう。また意識が朦朧としてきた。



「翔くん!?翔くん!」

そんな朝日の声は聞こえるけれど、とにかく眠たかった。

段々と遠のいて聞こえるその叫び声には答えず、そのまま深い眠りについた。


次目覚めた時には、この夢覚めてますように!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「こんなところに穴場あるじゃん!休憩しよう!」

「ダメだよアリス。早く帰らないと村長に怒られちゃうよ?」


森の中を談笑しながら歩いてくる二人組がいる。


「なんだよカール。いいじゃんかケチ!」

「ケチでもいいから……ってあれ?人間?かなぁ。倒れてない?」

「ん?あ、マジじゃん。」



ブカブカのシャツをまるでロングスカートのように着た2人の子供が喋っている

森でお使いを任されたアリスという赤髪の少女と、カールという緑髮の少年は森で寝ている翔を見つけた。

 この森に人間が入ってくるなんて珍しい。興味が湧いて近寄った瞬間



「助けてください!」

足下から声がした。


「カール何かいった?」

「何も言ってないよ?」


「助けてください!」

アリスとカールは下を向いた。

そこには白猫の姿しかなかった。

「うぉ!珍しい!喋る猫だわ!」

「そうみたいだね。本では読んだことあるけれど、僕も初めて見た。」


「助けてください!友人が倒れてしまったんです!」



 元々倒れてる人間が珍しく近寄ったのだ。察するにこの人間がこの猫のいう『友人』なのだろう。



「んー、何で猫が人間を助けるのかは置いとくわ。助けるのはいいけどタダ。ってわけじゃつまらいでしょ?何かお礼ができるっていうなら考えてやるわ!」

「そうだね。ぼくも何か面白い事ないと面倒だし嫌だな。」


「お礼…はできるかわからないけれど、絶対お礼します!お願いします!」



すぐにお礼は出来ないのか。少し残念がる二人は顔を寄せた。




「喋る猫持って帰れば村長褒めてくれるんじゃない?」

「まあ、僕らが見た事ないってことは絶対珍しいからね。少しは喜んでくれるかも?」



「……けど村長人間嫌いだったわね?どうする?」

「とりあえず僕らの家に入れればいんじゃない?」部屋はあるし」

「それもそうか」


「よし!いいでしょう猫!私達に付いてくる事を条件にとりあえずそこの人間を助けてやるわ!」



「本当ですか!?お願いします!」

朝日は必死だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 時を少し遡って話をしよう。

目覚めたら猫になっていた。なんて信じられるだろうか?

けれど、朝日も翔同様に本に吸い込まれた。というイレギュラー過ぎる現実を目の当たりにしている。

翔が猫になってないことに対しては少し不思議に思うが、おそらく翔から見た私の方がおかしく見えるだろう。

納得するしないの問題ではなかった。



「はぁ。どうしよう。」

自然とため息が出る。

困惑してどうしようもないけれど、目の前に翔がいる事だけが救いだった。多少心を安心させてくれる。

それだけ信頼を置いていたのか。それとも不安な中で知り合いが翔だけだったからだろうか。

正直どちらもあるだろうな。と私は思う。


 元々本屋で働いている時も、翔は私の目から見ても本当によく働いていた。本屋にバイトに来る子は、割と

『楽なバイト』と思ってくるが、ダンボールに入った本をたくさん運んだり、本の場所をしっかり覚えて案内したり、本を買っていただく時も接客が本当に大事になってくる。楽だと思って入った子はすぐにやめてしまったり、来なくなってしまう子も少なくないのだ。私も働き始めはびっくりしたしね。



 その分の穴を埋めるのは誰か。社員である。

緊急時にすぐにお店に来てもらったことが何回あっただろうか。




 私は家庭の事情で15の時からからあの店で働かしてもらっていた。元々家が近かったのもあるが、お婆ちゃんに縁があったのだ。そんなわけで高校の時からバイトだけれど働かしてもらってた。

 11年間働いた。いろんなバイトの人や、やめてしまった正社員の方がいた。ただ、その中でも翔は頑張っていたように見える。お婆ちゃんを抜いたら、一番真摯に仕事をしていたように見えていた。




力仕事を少し嫌そうな顔をするものの、それでも丁寧に本を運んでくれていた。

自分の好きなものをPRするのがうまくて、私も何冊も口車に乗せられて買って読んでしまったものだ。



翔はあまりコミュニケーションが得意そうではないから、あまり積極的にお客さんに話をしに行ってなかったが、翔の作ったPRしてある棚はすごく売れていた。自分によく話しかけてくるお客さんにPRしてる棚を褒められたこともあった。自分のことのように嬉しかった。



 だから私は他の社員やバイトの子と比べて、翔に対しての信頼感が強いのだ。なんならお買い物とかも付き合ってもらっていたし、昔お客さんにストーカーされた時も親身になって相談に乗ってくれた。




「実際本に吸い込まれそうになった時もすぐに手を伸ばしてくれたしね。」

 今では猫の手になってしまった右手をみる。翔は自分も巻き込まれてしまうかもしれない状況で逃げずに手を伸ばしてくれたのだ。あの絶望に溢れた一瞬の出来事の中で嬉しかった唯一のことだ。




 今度は少しでも自分が力になりたい。

この世界が何なのかもわからないけれど、朝日は自分のできることは何でもしてみせよう。そう胸に誓った。

 その時、獣道の方から足音がしたのだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「じゃあ早速村へ帰るよ!」

「そうしようか」

アリスとカールはそういうと靴紐を結び直した。



 二人についていく。そんな事で翔を助けてもらえるのであれば、朝日は悩む事なく条件を呑んだ。

今の自分の姿では翔を運ぶ事なんてできやしない。子供でも何でも頼むしかないのだ。

「ところで、頼んだのは私だけど、翔をどうやって運ぶの?大人を呼んでくる?」


「ん?こうやってだよ!」

「そうそう、こうやって」

二人は手の平を翔に向けると、そのまま翔は浮かび上がった。




「……え?嘘…………」

一瞬の出来事すぎてついていけない。



「何してるの!?何で……」


「…あぁ、もしかして人間の友人って言ってたし、魔法を知らないのかもよ」

「そういう事?カール頭回るわね!」

そんなことを言いながら翔はアリスとカールの頭ぐらいまで浮かび上がり、アリスとカールと同じスピードで進み始めた。



 朝日はもう脳内がパンクしそうなほど困惑していた。

「けど、今は翔が起きるまで絶対守らなきゃ。」

翔を守る。そのことを小声だがしっかりと言葉にして今一度翔のためにできることをしようと決心した。

二人が進んだ道を、朝日も進もうとした。








………話はそのまま進みたいところだが、猫になってみて実は初めて歩くのである。


アリスとカールの歩くスピードにもついていけず、結局朝日も『魔法』で持ち上げられ、連れて行かれた。

「怖い!助けて!何これぇぇぇぇ!」


そんな悲惨な叫び声を残しながら。

うちでは猫を飼っているのですが、寝る時いつも横にすり寄ってきます。

人間と猫ってやっぱり相性が良いのかもしれませんね。

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