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オタク導師と癒しの猫  作者: 北風かをる
1/6

プロローグ  始まりのニート、始まりの場所

はじめまして。

ただ趣味で描こうと思った内容なので、気に入ってくださると光栄です。

不定期になってしまいますが、必ず更新します。






「この作品も本当に面白かったなぁ。」

好きな著者の最新作ライトノベルを読みおえて、独り言を呟いた。

「この本伏線が本当に綺麗だった。久しぶりにレビューブログに書き記しとくか。」

ライトノベルや、アニメ、漫画が大好きな俺は趣味で面白いと感じた作品をまとめてブログにあげる。という事をしていた。

いうても見てくれてる数は凄く少ないんだけどね。



一応自己紹介をしとこうと思う。

俺は青峰(あおみね) (しょう)という名前だ。25歳。


みんな「学生」「社会人」「ニート」「専業主婦、主夫」

色んな方々が居ると思うが


今の俺は「ニート」というものになるだろう。






…今ダメな奴と思ったか?


……まあ実際ダメなのかもしれないが、言い訳させてくれ!


簡単に言ってしまえば働いていた会社が倒産してしまったのだ。

本屋の正社員だった。

「しょうがないよなぁ。」



……考えてみればみるほど、今の世界は本屋というものに厳しい社会になっている。


今の世界、ネットで漫画やアニメ、本やドラマ、映画を簡単に家で観れるだろう?

それが全ての責任…とまでは言わないが、そんな社会で本や、CD,DVD,BDを売る。という事だけで暮らしていくのは至難の技だ。時代的に厳しい。納得できる。


……売り上げを伸ばせなかったのは悔しいけどね。



自分がいた会社に文句がある。という事は全く無い。なんなら心置きなくやらせてくれていたと思う。

オススメのアニメ化された作品をPRした棚を作らせてくれたり、人付き合いが少し苦手な自分に対しても凄く優しく支え合っていた仲間もいた。



ただ、本当に厳しいのだ。

売れなかった作品はタダでは返品できない。




仕入れた本、CD,DVD,BDを売れなかったら、当然赤字。


本一冊が売れた時の店の利益は、実は100円程度なのだ。毎日働いている人に対する1人の日給を稼ぐためだけにに100冊程度はは売らないといけない計算になる。


またうちの店は駅の近くにある。というのが利点の一つだったが、最近は本屋が駅の中に出来てしまう。すぐに客は取られてしまった。


……みんなの予想通り売り上げは落ち、会社は苦しい中で耐えていたけれど、時間の問題だった。


……ニート生活の幕開けだった。





ニートだから時間はたっぷりあるんだ!ついでになんで本屋で正社員になったかも話さしてほしい!



  中学生の時俺をオタクへ導いてくれたアニメがあった。

【グレンラ○ン】という有名作だ。

当時、姉の彼氏がアニメに詳しく、「一緒に見るか?」と誘われて、よく分からないけれど一緒に見た。

……その時の衝撃は覚えている。




出てくるキャラは可愛い。画面いっぱいに広がる戦闘シーンは男心を擽られ、主人公が成長して強くなっていく様は見る事をやめさせてくれない。没頭させられた。


気づいた時には姉の彼氏は帰っており、親がアニメの途中でテレビを消した事によって現実世界へ返された。



 仕事を早く済ませ、夕飯を作りおえ、呼んだのに返答がない。挙句には、アニメを見ていたからだろう。母はカンカンに怒っていた。




後から聞いた話なのだが、姉の彼氏は「弟君がそんなに気に入ってくれたのなら良かった!」と言葉を残し、DVDをそのまま貸して帰ってくれていた。という話だ。姉には勿体ない本当にイケメンだ…


ちなみにその彼氏は現在姉の夫となっている。

我が姉ながら、優良物件を手に入れたものだ。






……少し話は脱線したが、この中学の時の出来事により、俺はオタクになった。少しでも自分の好きな事を職にしたかった俺は、時代の流れを気にせず大学卒業後、本屋に就職した。というわけだ。




『ビビビビッビビビビッ』


こんな誰に語ってるのか分からない話をしていたら電話がかかってきた。


【着信:小鳥遊 朝日たかなしあさひ

仕事先で仲良くなった一歳年上の女性の先輩名前だ。フレンドリーで、誰に隔てなく優しく、仕事を素早くこなし、忙しいところを手伝ってくれていた。

その癖して、その男を魅了してしまう豊満な胸。正直顔や手を埋めてみたい。と何度も思ってしまったよ。凶器だねあれは。




……一応言っておくが心配しなくとも彼女ってわけじゃない。

一時期好意を抱いていたが、相手が素晴らしい相手すぎて、自然と好意より尊敬する姉。という存在に近しくなった。


自分から告白して関係が崩れるよりも今の距離感が心地良くなってしまった訳だ。何となくわかってくれると嬉しい。



特に出ない理由もないので電話に出た。

「もしもし?どうしたんですか朝日先輩」

「もしもし!翔くん!『本屋さん片付け手伝って欲しいんだよぉ。』てお婆ちゃんが言ってたから行こ!」

と言葉にお婆ちゃんの口調を真似て事を伝えてきた。


[お婆ちゃん]とは、働いていた本屋に住んでいる66歳の女性だ。みんなから「お婆ちゃん」と呼ばれている。かく言う俺もそう呼んでいた。


時刻は11時手前というなんとも微妙な時間だ。

家から5駅先の「元」職場は大体30分で着く。今から向かったらお昼ご飯に差し掛かるだろう。

癖でカレンダーに目をやったが、当然ながら予定は真っ白。これは悲しい。




面倒ではあったが、お世話になったこともあり、少しでも手伝える事があるのであれば手伝おうと思った。


「了解です。お昼済まして1時には着くようにしようかな」

「えー、お昼まだ食べてないならせっかくだし駅で待ち合わせしてご飯食べようよ!あの駅新しいカフェできたらしいし!」


おお、嬉しいお誘いだ

考えてみたら職場が変わるわけだし、会う頻度は確実に減るだろう。もう会わないなんて事もあるかもしれないし。



「そうですね。せっかくなので行きましょうか!

何時頃駅これそうですか?合わせます」

「12時半ぐらい!急いで用意していく!」

「了解です。失礼します」


相手の相槌を聞いた後に電話を切った。


とりあえずシャワーを浴びてこよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





紺色のGパンに黒のTシャツ、上には亜麻色のジャケットを着て家を出た。

小洒落た服でも着ようと思ったが、メインはデートではなく本屋の片付けだ。

本屋とは普段の作業でも割と力仕事が行われる。片付けなんてなおさら動きやすい格好をしておかないと、問題が起きてしまうだろう。




待ち合わせには無事に間に合いそうな電車に乗り、本屋の最寄駅に着いた。


この駅の景色もなかなか見なくなるのかなぁ。そんな事を思っていると後ろから肩を二回叩かれた。

「おまたせ!行こう!お腹減った!」

肩を叩いたのは朝日だった。


 後ろに振り向いて見てみると、動きやすそうな白地のTシャツに空色のカーディガンを羽織り、黒のズボンを履いていた。




 こういう変に着飾らないのも彼女の良さだと思う。

簡単に言えば関わりやすそうなのだ。化粧が濃くギャルっぽい人だったり、ひらひらした物を着ている美人だったりすると男は萎縮するだろう?



 けれど朝日は確かにものすごい美人なのだが、そういう話かけづらさがない。よくいろんな客に話しかけられ、仲良くなっていた。なんなら彼女に会うために買いに来てくれた客までいるだろう。


そんな彼女と待ち合わせしてるのだ。少し浮いた気持ちになった。



「私お腹減りすぎてお腹と背中くっつきそうだもん!痩せたかもしれない!」

「あさひ先輩は元々痩せてるじゃないですか」

「お世辞はやめて!最近太ったんだから…」

「んー、たしかに?」

「あー、そこはお世辞にも『そんな事ないですよ』ていうところじゃない?」

「『お世辞はやめて!』じゃなかったんですか?」


「……ぐぬぬぬぬ」


そんなたわいも無い会話を交わしながらすぐ目的のお店へと向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「…これは良さそうなお店ですね。」

 入る前からついつい言葉が出てしまうほどのカフェだった。

そのお店は不思議と安心感を感じられそうなどっしりとした店構えで、出来たばかり。と先ほど聞いたが、レトロ感が溢れていた。

頼んだコーヒーとサンドウィッチもとても美味しかった。



……ここで本でも読みながらのんびりするのも悪くないな。もう少し早く出来て欲しかった。そしたら仕事の帰りとかに寄れたのに。とそんな事を考えながらコーヒーを飲んでいると、朝日から声がかかった。



「まだブログやる予定なの?倒産して本屋さん潰れちゃうの決まってから更新してなかったみたいだけど…」

「まだ続けるつもりですよ。今日読んだラノベが面白かったので、まさに更新しようとしてました!」

「よかった!私翔くんのブログ結構好きなんだ〜」




……倒産といっても1ヶ月ぐらいは時間に猶予があり、仕事は続いたのだ。ただ予定された日に潰れてしまう事は確定していたので、覚悟は出来ていたのだけれど……


好きな職場だったし、そのショックからアニメや漫画、ライトノベルを見る気が起きなくてブログを更新できずにいた。




 しかし、仕事が無くなってみたらだ。

買い置きしてあった作品を読む事や、撮り溜めしてあるアニメを見る事以外やることは見当たらず、漁っていたのだ。



「これから逆に見る時間がたくさんあるんで、それぐらいしかやる事がないんですよ」

そんな冗談交じりに言うと、朝日はくしゃっと少し歪んだ笑顔をみせ、「そうだねぇ。」と言った後コーヒーを飲み干した。




「よし!そろそろ行こう!」

そう言って立ち上がった朝日はどこか強がってるようにも見えた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「お婆ちゃん手伝いに来たよ!

朝日が裏口の扉勢いよく開けて入っていった。



「入るね、お婆ちゃん」

と自分も続いて入っていくと、すぐお婆ちゃんが台所に立ってお茶を入れているのが見えてきた。

俺たちがよくお世話になった休憩室だ。



「おぉ、来てくれたんだねぇ。」そう言いながら俺たちにもお茶を淹れてくれた

「あんたらには本当に悪い事をしたねぇ。こんな若い子の職を奪ってしまうなんて…」

「お婆ちゃんが悪い訳じゃない!謝らないで!」

「お婆ちゃんが悪くないのはみんな知ってるよ。また職なんて見つかるさ」

と、俺も便乗した。



 お婆ちゃんは去年までずっと本屋の切り盛りをしてくれていた張本人だ。

去年定年退職で仕事納めをして、息子さんが本屋の経理担当を引き継いだのだが。。。




1年という短い時間で店をたたまなければならなくなった。

 

何故そういう事が起きたのか。それはまた違う時に話そう。




 俺たちの職場だった本屋は3階建ての建物で、3階に住んでいる部屋があり、1,2階が本屋さんだった。

立地的にも本屋だったスペースを借りたい。と申し出てくる人も多くて、撤去作業を早めにしなければならない。とのことだ。



「あんたらは本当によう働いてくれておったよ。ごめんね。」


「お婆ちゃん…」

朝日は言いたい事があったのだろう。苦い顔をしたが、すぐに切り替え言葉を飲み込み、お婆ちゃんの背中をさすった。

「お婆ちゃんがいたから私も働けたんだよ!ありがとね!」

「朝日ちゃん…」

お婆ちゃんは涙を抑えられなかったみたいだ。

…俺はそんな光景を見届ける事しかできなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 結局落ち着くまで30分ぐらいかかったが、その後片付けは始まった。

元々片付けがある程度済んでたのもあり、2階にある俺の大好きな漫画コーナー、ライトノベルコーナーは割とささっと終わったのだが、2階の最後の砦は古書のコーナーだった。


  一見売れないと思いきや、プレミア価格が付いたものや、もうネットでは購入できないようなものも、たまに一般の方から売られたりするので、うちの店の売れ筋でもあった。


代わり番で片付けをバイトの子だったり、他の社員にやらせていたみたいだけれど、このコーナーは手付かずだった。気持ちはわかる。



一冊ずつしっかり確認を取らなければ、価値のあるものを束ねてしまうかもしれない。売れるものはしっかり残しておかないと損だろう。





「……やるかぁ。」

気合いを入れて、中でも分厚い本を勢いよく引き抜いた。

 ただ、思った以上にその本は重みがあり、元々細身の俺には重すぎて指の支えだけでは足りず滑り落ちてしまった。

『バンッ!!』と大きな音がなったので、朝日が寄ってくる。


「大丈夫?古書コーナーやるなら手伝うよ!」

落ちたことによって少し転がり、開かれてしまったその本を閉じようとあさひが手を伸ばした。






・・・次の瞬間朝日は本に引っ張られたかのように吸収され始めた。

「え!?なに!?どうなってるの!?」


「朝日先輩!捕まって下さい!」

一瞬遅れはしたものの、俺は手を伸ばした。





俺も焦っていた。目の前の光景が信じられない。けれど目の前で朝日が本に飲み込まれているのだ、もう体半分は入り込んでしまっている。この事実から、少なくとも朝日を助けなければならない。という判断は出来た。



下半身と左腕を呑まれきってしまっている朝日も、必死に腕を伸ばしてきた。




お互いの手が届き、握手する形で繋がった。朝日の手が痛くなってしまいそうなほど思いきり力を込めて握り、俺は全力で引き上げようとした。





……けれども、繋いだ手が離れることはなかったが、俺だけの力では吸い込む力に抗えなく、朝日は完全に飲み込まれてしまった。手を離すことは出来た。自分だけ助かることは出来たはずだが、吸われて目の前から姿が見えなくなってしまった朝日が自分の中で絶望に変わり。抵抗する気力がなくなってしまって一緒にのまれてしまった。




……そのまま俺は目を開けているのか、閉じているかもわからないような全く光のない世界に入った。

音も一切聞こえない。耳鳴りさえ感じない。


意識は遠のいていった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 上の階でドタバタ聞こえる。その音にびっくりしたお婆ちゃんは声を出す。

「どうしたんだーい?大丈夫か~い?」

自分の中での精一杯の音量で出した声だったけれど、上からの返答はない。仕事の時ならいつもの元気な朝日の声と、少し気だるげだけれど、ちゃんと返事を返してくれる翔の声があるのに。



お婆ちゃんは不思議がり、上の階へ登った。




けれど本がバラバラに散りばめられているだけで、2人の姿はどこにもなかった。

もしかしたらありきたりな展開かもしれないですが、自分らしさを存分に描いていこうと思います。

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