幕間1
プロローグの続きです。
本当は彼が大好きだとわかっていた。
最初に助けてもらったときから、たぶんそういう運命だったのだ。わたしはその運命からは逃げることなどできなかった。
ただ、自分の本心にふたをしていただけ。
気がついていたのに、気がつかないようなフリをしていただけだ。
異世界に召還されてから、わたしは何度も悩んだ。なにもない平凡なわたしが王様のような素敵な人の妻になっていいのだろうかと。あくまで形式的なのだからとか。ギブアンドテイクなどど、わたしは彼の優しさに甘えていただけなのかもしれない。
ただ、偶然、わたしが異世界に来てしまった。それだけのことで、王様を苦しめたり、重荷になってしまっていないのだろうか。もっと、単純な幸せが欲しい。それは贅沢な悩みだ。わかっている。それでも、わたしはそれを願ってしまうのだ。たぶん、これが人を好きになってしまう病なのだろう。
「大好きです」
王様は寝ているとわかったうえで、わたしはそうつぶやく。本当にずるい女だ。彼に聞こえないとわかっている時だけしか、本心がだせない。
そして、願うのだ。
彼がわたしを好きになってください……と。