第70話 帰路
ガラガラガラ。
馬車は王都に向かって、順調に進んでいる。
村長さんとは、別荘で別れた。
もう少し、砂浜でナンパしてから帰ると言っていた。
この国は本当に大丈夫なのだろうか?
などと心配しているのは、わたしが現実逃避したいからで……
昨日の夜、わたしはついに王様に告白した。
夫婦なのに告白というのもおかしいけれど、わたしたちの関係は特殊なんだからしょうがない。
昨日の出来事を思い返そうとすると、すぐに思考がわき道にそれてしまう。
それほど、思いだしたくない黒歴史というわけでも、ないんだけど……
結論から言おう。
「保留」だ。
そう、「保留」、現状維持、そのまま。なんとでも言えばいい。
結論は宙ぶらりんのまま。
「わたしはあなたのことが、大好きです」
わたしは思いのままを、彼にぶつけた。
彼の気持ちや思いを踏みにじる行為だと知りながら……。
「………………」
「………………」
そう言った後、わたしたちの間には、長い沈黙が生まれた。
いつもなら、そんなに気まずい沈黙ではないんだけど、この時に限っては……
とても気まずかった。
そして、わたしは馬鹿なことを言ってしまったのだ。
自分が開けたパンドラの箱を、自ら閉じようとする愚かな行為だ。
「答えは、魔大陸から帰るときに聞かせてください」
「えっ」
「その時まで、待ってますから」
「わかりました」
彼は力強く答えた。
以上、回想終わり。
「はー」
わたしは大きなため息をつく。
自分がこんな弱虫だとは思わなかった。
ベットをゴロゴロ転がりまわりたかった。昨日は、王様と同じベットに寝たからできなかったけれど。「今日の夜こそは、」と謎の決心をわたしは決めた。
宰相さんの策略で、わたしの部屋無くなっていなければいいな。
嫌な予感がした。
王様は、窓から見える風景を見ている。
いつもとは違って気が抜けた感じだ。
それもそうだよな。いきなり、わたしが背中から切りつけたような感じだし……。
いけない、いけない。
どうしても、ネガティブな気持ちに支配されてしまう。
「カツラギさん、あの」
王様が急に話しかけてきた。
これにも嫌な予感がした。
「はい」
「昨日の話なんですが……」
やっぱりだ。
「ダメです」
わたしは、慌てて王様の話を遮った。
「えっ」
「昨日も言ったじゃないですか。答えは魔大陸の帰りです。それ以外の時は聞きませんから」
自分で言っておいて、そうとう理不尽な話だ。
「でも」
「ダメです。心の準備ができてません」
わたしはひたすら拒絶した。
「わかりました。じゃあ、その時まで」
「ごめんなさい」
「大丈夫です。じゃあ、その時までは、昨日までに戻りましょう。このままでは、気まずすぎますよ」
王様は力なく笑った。
「はい」
わたしも同意した。
パンドラの箱の故事には、最後に希望だけが残ったと聞く。
わたしたちの関係に、希望ってあるのかな。
また、ネガティブになってしまうわたしだった。




