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第61話 散歩

 海から帰ってきたわたしたちは、お風呂に入り砂を落とした。

 楽しかった。

 そう思いつつ、休みが終わってしまいそうだった。


 彼と一緒にお昼ごはんを食べる。

 メニューはマリネとグラタンだった。

 シーフードがふんだんに使われた料理。

 最高だった。

 王宮では野菜と肉料理が中心だったので、いつもとは違うことがとても嬉しかった。

 飽食で、流通が発展している日本ではこの感動はあじわえない。


「午後はどうしますか?」

 わたしは彼に聞く。

「そうですね。では、海辺を散歩とかいかがですか?」

「行きたいです!」

 こうして、予定が決まった。

 海辺を散歩。平凡だけどとても心が躍る。

 カップルの当たり前がわたしたちに当たり前じゃないのだから。

 

 ふたりで海辺を歩く。

 彼の歩幅はとても大きくついていくのが少し大変だった。

 ふたりで一緒に歩くということがほとんどなかったので、こんな当たり前のこともわたしは知らなかった。


「少し早いですか?」

 彼はそれに気がついたのか、わたしを心配してくれた。

「少しだけ」

 わたしは、少しだけ息をあげながら答える。

「ごめんなさい、気がつくべきでした」

「いえ、ありがとうございます」

「こうしましょう」

 そう言い、彼は歩くスピードを落としてくれた。

 それがとても嬉しかった。

 誰かが隣にいて、一緒に歩くことがこんなに幸せな気分になれるとは思わなかった。

 社畜の時は、そんなことにも気がつけなかった。

 気がつく余裕もなかった。


 海鳥が鳴いている。

 夏だから外は暑い。

 でも、海風がとても気持ち良かった。

 そして、さきほどから繋がれている彼の手は、とても大きかった。


 暑いからか、ふたりの口数はあまり多くはない。

 でも、一緒にいるだけで、なんとも言えない気分になる。


 一時間ほど散歩して、ある場所にたどり着いた。

「これがここの名所です」

 塔のようなものが、崩れていた。

「この前、歴史の本を読んだとおっしゃっていましたね」

「はい。一カ月前くらいに」

「この塔は、バルベの塔と同時期に作られたものだと言われています」

「あの王都の近くにあるやつですか」

「ハイ。古代人たちは、今よりも優れた建築技術をもっていたと言われています。そして、たくさんの建築物を作った」

「それが神の怒りをかってしまい、すべて、焼き払われてしまった」

「そうです。でも、この話には続きがあるんです」

「どういうことですか」

「魔人はいつからいたと思いますか?」

 イースト村の復興のため、協力してくれていた赤オニさんたちのことを思いだす。

「えっ、最初から?」

「王族以外はそう信じていると思います。でも、それは違うんです」


 王様は少し間をおいて、話を続ける。

「実は、人間と魔人は元は同じだったとされています」

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