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第4話 食事

「それでは、お食べください」

 国王様はわたしに食事を勧めてくれる。


 わたしはおそるおそる皿の蓋を開ける。異世界での食事。

もしかしたら、すさまじいゲテモノ料理かもしれない。

わたしは虫とか異形の肉とか食べなくてはいけないのかもしれない。

地獄のような世界が広がっていたらどうしようか。

意を決して、前菜のスープをみた。


 とても美味しそうなにおいのするスープだった。

「あの? これは? 」

 給仕さんは優しく答えてくれた。

「こちらは芋とミルクのスープです。わが国では最もポピュラーなスープのひとつです」

「そうなんですか。美味しそう」

 わたしは空腹の体に、スープを流し込む。優しい味だ。ミルクと芋とほどよい塩気。

「とってもおいしいです。ジャガイモのポタージュみたいな感じですね」

「ポタージュ? なるほど、カツラギ様の世界ではそういう風にいうんですね。お口にあったようでなによりです」

 国王様はそれをにこにこみている。わたしも安心した。どうやら、この国の料理は日本人でも食べられそうだ。


 その後の料理もとても美味しいものばかりだった。

レタスのサラダにオイルと酢をかけたもの。

少し硬いパンとバター。

チキンのステーキ。

食後の飲み物は、少し変わったハーブティーだった。


「1日、目がさめなかったので、心配しておりました」

 レクス宰相はそういってくれた。

「1日も目がさめなかったんですか、わたし? 」

「ええ、陛下に抱きかかえられて、しばらくしたら眠ってしまったようで」

「お恥ずかしい限りです。助けていただきありがとうございました」

「いえいえ、ご無事になりよりです。陛下もカツラギ様のことを心配しておりました」

「レクスよ。せっかくの食事中だ。陛下は堅苦しい。兄さんと呼んでくれ」

「そうでしたね。兄さん」

「ご兄弟なんですか? 」

「ええ、そうですよ」

 国王様は微笑みながら、そう答えた。


 王族の兄弟ってもっと血みどろな感じだと思っていた。

疑心暗鬼になって、お互いを失脚させようとするのが物語の定番だ。

でも、ふたりからはそんなギクシャク感はなかった。

「わたしの幼いころに、両親が亡くなりまして。それからは、兄が親代わりなんです」

 不思議そうな顔をしていたわたしに、弟さんはそう説明してくれた。


「なるほど。そうなんですね」

「唯一の肉親ですからね。食事の時くらいは、堅苦しい話はなしにしようと約束しているのです」

 陛下はそういった。やさしさがあふれた笑顔だった。


「おふたりは、とてもお若くみえますが、おいくつなんですか?」

 わたしは気になった疑問をぶつけてみる。

「そうですね。わたしが29歳。弟が16歳になります」

 若っ!

 驚愕の顔を浮かべる、わたし。

王様といったら、国で一番偉い人と相場が決まっている。宰相って、日本でいう総理大臣だよね。異世界すごっ。

わたしとほぼ同年代のひとと高校生が国のトップとは……。

「とてもお若いんですね」

「そうですね。ほかの国と比べても、わたしは若いほうだと思います」

「でも、兄さんは、我が国最高位の魔術師でもあるのです。わが国では魔法の才能が最も重要視されます。なので、国民からの信頼も厚いのです。あとはおきさき様を迎えるだけなんですがね(笑)」

 宰相は年相応の顔になった。本当に兄のことが好きらしい。


 魔術か。ここは本当に異世界なんだな。

「最後のは余計だ。我が国は農業国のため、天候や温度、水を管理できる魔術師が最も重宝されるので、若輩者ですが王としてなんとかやっています。今日の料理の食材もすべて我が国で取れた農作物を使っているんですよ。よかったら、昨年取れましたワインもあります。飲みませんか?」

「いただきます」

 わたしは結構、いける口だ。

「おお、そうですか。なら、よかった。」

 王様はうれしそうに微笑む。給仕さんに命令をだす。

「すまないが、あのワインを持ってきてくれ。チーズも頼む」


 すぐに、ワインとチーズが運ばれてきた。

「ありがとう。みんなも食事にしてくれ。あとはわれわれ3人だけの話にしたい」

 王は人払いを命じた。兄弟とわたしだけが、広い食堂に残った。


「それでは、酒をのみながら、カツラギ様のことも教えてください」

 ついに本題を突き付けてきた。

 ここまで話をしやすい環境を作り、お酒でもてなす。相手が話しやすい環境を作ってくれている。王様は相当なやり手なのだろう。


 わたしは自分のことを話し始めた。


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