第51話 黒歴史
昼食を終えて、わたしたちはメディウム村を後にする。
昼食会は大成功に終わった。
それは本当によかった。
そう、それは……
そして、馬車の中はお通夜モードだった。
一日して、黒歴史をふたつも作ってしまったわたしたち。
たぶん、今日はさらに増え続けることになるだろう。
もうやだ、こんな生活。
などと言いつつ、馬車は進んでいく。
「あの王様……」
「どうしました?」
もう、あの黒歴史を忘れるために、わたしは陛下と世間話をしようと決心した。
「実はですね……。前の世界から、機械をもってきてしまったんです」
「そうなんですか?!それは拝見したいですね」
やはり、王様は食いついてきた。
わたしはスマホを彼に見せる。あの充電が減らないなぞのスマホだ。
「これはなんですか?ボックス?」
「スマートフォンというものです。なんでもできる魔道具だとでも思ってください」
「魔道具?本当になんでもできるんですか?」
「ええ。でも、元の世界と離れてしまったので、機能は制限されています」
「そうなんですか……」
「制限はされていますが、それでも色々できます。例えば……」
スマホを操作する。電子書籍リーダーを開いて見せる。
「このように、本を読んだり……」
「……」
カメラを起動し、自撮りをする。
「このように瞬時に、絵を作ったりすることもできます」
「なんと、精巧な……」
王様は驚愕の顔を浮かべる。
この世界でスマホはまさに、オーパーツだ。
どうやって、操作をするのか、興味津々に聞く王様。
一通りの操作法を教えて、わたしは王様にスマホを渡した。
これが最大のミスだと知らずに……。
「すごいです。映像まで残せるんですか!」
画面が割れて見にくいスマホをまるで少年のような目で見つめている。
「そうですね。わたしの世界ではこれを応用して、演劇を流したりもしています」
「すごい、すごい。夢のような魔道具ですね」
興奮している様子が、とても可愛かった。
「これは記録しておいて、どこでみるんですか?」
王様は飽きずに、スマホに食いついている。
「ここの赤いマークですよ」
「なるほど」
王様は画面を高速でタップした。
アルバムを開く。
そして、わたしはあれに気が付いたのだ。
この前の夜に、隠し撮りした王様の写真がそこにあることに……。
きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
慌てて、王様の操作を止めようとしたが、時すでに遅し。
「あれ、わたしの絵がありますね。寝てる時のやつかな……」
今日の黒歴史はドンドン量産されていく……。




