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第50話 寄り道

「さて、カツラギさん。休憩地点に着きましたよ」

 わたしは王様にエスコートされて、馬車を降りる。

 王都と別荘の中間地点で、休憩する予定通りわたしたちは、目的地に到着した。


「陛下、王妃様。ようこそ、メディウム村にお越しくださいました」

「ありがとう、メディ村長」

 陛下は顔見知りなのか、この村の村長さんにあいさつをする。

 あの強烈なお師匠さんとは違って、とても紳士的な村長さんだった。

 だって、この前はこのタイミングで、手にキスされていたし……。


「毎年、いつもありがとうございます。昼食の用意ができていますので、どうぞこちらへ」

 メディ村長さんに連れられて、わたしたちは昼食の場所に向かった。

 村民みんながもてなしてくれるそうだ。

 昼食はとても楽しみなんだけど……。

 楽しみなんだけど……。


 さきほど、馬車で王様と確認した宰相さんからの命令がある。

 そのせいで、足がとても重かった。


「王様、王妃様、ご結婚おめでとうございます!!」

 大きな拍手とともに、わたしたちは祝福される。

 とても気恥ずかしかった。

「みなさん、今日はありがとうございます。久しぶりに皆さんと会えて、とても嬉しいです」

 王様はつつがなく、あいさつを済ませた。

 わたしは、後ろで微笑んでいる簡単なお仕事だ。


「それでは、皆のもの食事にしよう。今日は宴だ!」

 メディ村長がそういうとみんなは食事をはじめた。

 旬の夏野菜をふんだんに使った昼食だった。


 朝とれたばかりという、レタスとトマトのサラダ。

 コーンのバター焼き。

 茄子のミートソースグラタン。


 どれも取れたての野菜が、とても美味しかった。

 メディ村長は王様との世間話をしていた。

「王様が結婚したと聞いて、ビックリしましたよ」

 とか

「王妃様は本当にお美しいですね」

 とか……。


 あの強烈な村長さんとは違い控えめな話題で本当に助かった。

 でも、宰相さんからの指令は絶対だ。

 もし破ったら、あとでどんなことをされるかわからない。

 わたしたちは目を合わせて、ここであれをやろうと決心した。

 また、黒歴史が生まれてしまうのだ。


 あの封筒にこう書かれていた……。

<昼食に王妃様が陛下にご飯をアーンさせる>

 ()()。感想はこの二文字だった。


 わたしは、意を決して、王様の口元にグラタンをのせたスプーンを差し出す。

「陛下、これがとても美味しいですよ。食べてみてください」

 うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。

 内心では阿鼻叫喚の状態だった。

 なぞの感情でスプーンが震える。

 某お笑い芸人のようなことはしてはいけない。

 それだけを考えて、慎重にスプーンを動かす。

「ハイ、アーン」

 ここは完全に片言だった。もうなにも怖くない。

 王様の口の中に、グラタンを投下した。

 完璧なピンポイント爆撃だった。

 寸分の狂いもない。


「本当だ。とても美味しいですね」

 ミッション・コンプリート。

 そして、周りの人は……


「きゃあああああああ、ラブラブよ~」

「うらやましい、じつにけしからん」

 などという声が……。


 もう、転生させてください。もうしてるけど……。

 なぞのツッコミを入れて、白い灰となるわたしたちだった……。

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