第47話 三か月
こちらの世界に来てから、もう三か月が経過した。
少しずつ、この世界にも慣れてきたところだ。
ふたりで同じ部屋の、違うベットに寝る。
ただ、ここだけが未だに慣れていない。王様の吐息や寝返りの音、何気ない行動のしぐさ、すべてにドキドキしてしまう。おかげで、少し寝不足が続いている。
彼は毎朝五時に起きる。
魔術の修行をするためだ。
わたしを起こさないために、いそいそと部屋を抜け出していき、中庭で二時間の練習をこなす。
時折、わたしは早起きをして、その様子を窓から見つめている。
精神統一をして、一心に魔術の修行をする彼はとてもかっこよかった……。
そして、わたしたちは、七時に合流するのだ。一緒に朝食をするために。
そこからわたしは、王妃として振る舞うのだ。
なるべく、気品があるように振る舞い、ねこを被る。
王様と宰相さんが仕事をしているときは、基本的にわたしにやることはない。
本を読んだり、リリイさんとお茶をしたりして過ごす。
リリイさんはほんわかしたタイプなのに、時折、鋭いことをいうのだ。
「王妃様は、陛下のどこが好きになったんですか?」
とか
「陛下たちのお子さんができたら、きっとかわいい子になるんでしょうね~」
とか。
とても反応に困る話題を振られてしまう。
まるで、宰相さんのような、鋭さだ。
何度、お茶を吹き出しそうになったか、わからない。
小さい頃は憧れた王妃様という生活だが、実際にやってみると……。
気が疲れてしまう。
少しずつ、ストレスがたまってしまうのだ。
どこかに遊びに行きたいなんて、お茶をしながらリリイさんにこぼしたのが、いけなかったのだろう。
事件は夕食の時に起きた。
いつもの三人での夕食。
そう、あの発言が出るまでは……。
彼は突然、口を開いた。
「そうだ、おふたりとも!」
わたしたちは、嫌な予感で、体が固まる。
「もうすぐ、暑くなってくるので、別荘で夏休みをとってきてはどうですかね?新婚旅行も兼ねて」
あっ、寝不足が悪化する。
そう確信して、わたしたちは顔を見合わせた……。




