表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/95

第45話 とある夜のふたり

「夕食、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

「喜んでもらえてよかったです」

 わたしたちは、寝室で話していた。

 宰相さんの謀略以来、おなじ部屋で眠ることが当たり前になってしまった。

 ただ、ベットだけは別のものにしてもらった。少しだけ離して、ベットに入る。王様が同じベットで緊張してしまい、あんまり眠ることができなかったのだ。

 わたしは酒を飲みすぎて、記憶がないまま寝てしまったのだけど…………。思いだしたくない黒歴史だ。

 

「あのポトフというスープが大好きになりました」

「よかった。母の得意料理なので、教わっておいて助かりました」

 ありがとう。お母さん。

「いいですね。家族の思い出。少し憧れてしまいます」

「そうですよね」

 家族に憧れる王様に少しだけドキっとしてまった。

「たまには、料理を作ってもらうのもいいですね。家族に料理を作ってもらったことなんて、もう10年以上なかったので……。とても嬉しかったですよ」

「本当によかった……」

 こっちの世界に来たばかりの時は、王様は完璧超人だと思っていた。

 でも、知れば知るほど、普通の人で……。

 だから、いつも思う。


「王様はいままで、寂しくなかったんですか?」

 聞いておいて、しまったと思った。つい口にでてしまった。

「そうですね~。確かに孤独感を感じたことはありますよ」

「……」

 彼は失礼な質問なのに、誠実に答えてくれた。

「責任は重いし、先代の王はいきなりいなくなってしまったし……」

「だったら……」

 王様は微笑を浮かべながら、うなづく。

「それでも、わたしは借りた恩を返さなければいけないんです」

「……」

 なにも言い返せなかった。たぶん、わたしが言い返してはいけない問題だ。


「暗い話になってしまいましたね。ワインでも飲んで、話を変えましょう」

「はい」

 強引に話を変えられてしまった。ふたりでいつものようにワインを飲み、そして眠る。

 ここ数日、決まった部屋での過ごし方だった。

 そして、夜はふけていく……。

 更けて……


 まったく眠れないのだ。

 ワインを飲んで、別のベットに入ってあとは寝るだけというところで、すでに2時間以上経過しているはずだ。王様の吐息や寝返りの音にドキドキしてしまう自分がいた。

「くうううう」

 彼を起こさないように、わたしは声を押し殺して叫んだ。どうしても眠れないのだ。

 向こうの世界では、眠れないときはスマホをみて時間をつぶしたんだけど……。

 そういえば、わたしのスマホってどうなっているんだろう?

 一緒に落ちて来たバックのなかをごそごそする。

 財布やアクセサリーといっしょにスマホはあった。

 落下の衝撃で、画面は少し割れていた。

「電池切れているだろうな~」

 こっちに来てから、もう2か月。普通なら電源なんて入らない。


 軽い気持ちで、電源を入れてみる。ブラックアウトだった画面にピカッと光が入る。

「えっ……」

 スマホは何の問題もなく起動したのだった……。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ