第3話 新世界
「ここは……?」
見知らぬ天井だった。とても豪華な天井だ。
「目がさめましたか? プルウィア様」
男の人の声が聞こえた。まだ、中学生くらいの美少年がそこにはいた。
「プルウィア、様?」
「申し訳ございません。お名前がわからなかったので、勝手にそう呼ばせていただきました」
「あなたは?」
わけがわからないまま、相手の名前を聞く。日本ではないようだ。でも、日本語は通じる。不思議だ。
「失礼しました。わたしはアグリ国の宰相レクスと申します」
さいしょう?あぐりこく?言葉の意味がわからなかった。
「わたしは葛城綾といいます。日本人です。OLをしています」
とりあえず、最小限の情報だけを伝える。見知らぬ男に警戒感をもって当然だ。
「カツラギ様ですね。二ホン?OL?申し訳ございません。よくわからない単語です。どういう意味ですか」
「えっ」
こんな流ちょうに日本語をしゃべっている男が日本を知らない?。まったくもって意味がわからなかった。
「いえ、そうですね。天界よりいらした方です。わたしたちが知らない知識をお持ちなのですね。失礼を」
勝手に納得されてしまった。
「では、王がお呼びです。目がさめたら、カツラギ様とお話をしたいとのことで」
王? もしかして、ここは……。
「異世界なの?」
思わず言葉にしてしまう。小説やアニメだけのフィクションだと思っていた現象が自分の身におきている。なんて馬鹿げたことを考えているのかと思いつつ、わたしはレクスについていく。
「こちらに王がお待ちです。出先ゆえ、粗末な場所ですが、ご容赦ください」
彼はそう告げると、大きな扉を開き、わたしを中に案内した。
「国王陛下。プルウィア様をお連れ致しました」
玉座の前で、彼は跪く。わたしはどうすればいいのかわからず、立ち尽くしていた。
「ご苦労」
国王陛下は威厳のある声でそう答え、玉座より歩きはじめる。緊張で顔がよく見ることができない。王は私の前で跪いた。
「さきほどは、どうも失礼致しました。アグリ国王ウィルと申します。プルウィア様とお会いできますことを大変、喜ばしく思います」
「えっ、いや、その」
わたしはパニックになった。国王という偉い人が、わたしに跪いている。意味が分からない。なにこれ、ドッキリ番組かなにか。どこまでが、どっきりなの?。リストラまで?
「なにかございましたか?。カツラギ様?」
レクスが見かねて助け舟を出してくれた。
「そうです。わたしは、プルウィア様じゃありません。葛城です。葛城綾です。単なるOLなんです」
「カツラギ様というお名前でしたか。それは失礼を」
「だからその頭を……」
その時、<グー>という音が広間に鳴りひびいていた。わたしのお腹の音だ。最悪のタイミングだ。
「フッ」
国王様がふきだしてしまっている。レクスもつられて笑い出す。
「申し訳ございません。カツラギ様。ゲストをもてなすこともせずに。レクスよ、食事の準備を頼む」
「陛下、食堂にすでに準備しております。話はそちらで」
「であるか」
王様は顔をあげた。その顔はわたしをお姫様だっこしてくれたあのイケメンだった。