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第42話 王都での一日(中編)

 わたしは椅子に座って借りてきたばかりの本を開いていた。

『わたしたちの歴史』。

 シンプルなタイトルだ。絵が多くて、読みやすいものを選んだと、リリイは言っていた。それはとても助かる配慮だ。この状況においては、正確性よりも簡単でわかりやすいもののほうが、ありがたい。とくに、わたしのような異世界人にとってはなおさらだ。

 わたしはページをめくる。その本は、まるで絵本のような本だった。


「昔々、神さまは世界と人間、そして、動物たちを創りだしました。最初は、みんな仲良く暮らしていたのです。神さまは人間たちに色々なことを教えてくださいました。火の使い方、道具の作り方、農業の方法……。人間たちはそれを喜んで学びました……」


 さすがはファンタジーのような異世界だ。歴史からして、すでにファンタジーだ。

「そして、人間たちは教わった方法で、どんどん豊かになりました。しかし、そこには大きな落とし穴があったのでした。それは、人間たちの傲慢さです。人間たちは神さまから教わったことを悪用し、自分たちが神さまに取って代わろうとしたのです。そのために、バルベの塔のような高い塔を世界各地に建設しました。神さまを見下して、自分たちが新しい神さまになろうとしたのです」

 わたしたちの世界の神話にもよくありそうな話だ。根本的なところが、わたしたちの世界とこの異世界とでは似ているような気がする。

「神さまはその暴挙に激怒し、人間たちに罰を与えました。世界中に神の怒りを降らせ、悪い人間たちの世界を亡ぼしたのです。さらに、人間たちが今後悪さをしないように、魔人を創りだし人間たちを監視するようになりました。そうすることで、人間たちは改心しました。自分たちの愚かな行為を忘れないため、崩壊したバルベの塔の近くに城を作りました。それが、今のアグリ国となっているのです……」

 よくありそうな建国神話だ。でも、なぜかそれに冷たさを感じる


「王妃様、お茶を淹れてきました。よかったら、お飲みください」

 リリイさんが、ハーブティーを持ってきてくれた。どうやら、クッキーもあるらしい。

「ありがとう。そうね、少し休憩にしたいわ。あなたも、ちょっと付き合って休憩にしましょう」

「えっ、いいんですか」

「いいわよ」

 わたしたちはくつろぎながら、お茶を飲む。

「王妃様、どこまで本を読んだんですか?」

「アグリ国ができるまでよ」

「そうなんですか。はやいですね」

「そう? この話なんだけど、どこまでが本当なの?」

「ええと、実はよくわからないんですよね。昔からある言い伝えをまとめた感じで。偉い学者さんたちが、必死に研究しているらしいんですけど、わからないことが多いそうで……」

「そうなんだ」

 考えれば、考えるほど不思議な話。

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