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第23話 プロポーズ(中編)

今日は本当にいろいろなことがあった。いや、彼女と出会ってから、いろんなことが起こりすぎている。

 わたしはいままでのことを思い出す。ほんとうにいろんなことが起きた。彼女は空から突然、現れた。最初は伝説の女神様かとも思ったが、彼女は普通の女性で。自分の魔法が原因で彼女を元の世界から召喚してしまったかもしれない。それについてはかなり罪悪感がある。わたしが責任をもって、彼女を守らなくてはいけない。その決心は本当だ。


 彼女は最初は途方に暮れていたが、少しずつ元気になってきている。よく笑うようになった。道中の馬車での雑談は本当に楽しかった。わたしが知らない世界のおもしろい話だった。久しぶりに仕事から解放された気持ちになった。


 そして、今日突然出現したフードの男のことも気がかりだ。彼女を殺そうとしている謎の男。今日は油断して不覚をとってしまった。もし、師匠があそこに来てくれなかったらと思うと……。


 彼女を守るとなるともっと強くならなくてはいけない。やつの目的はよくわからないが、絶対にまた現れる。今度はひとりで戦わなくてはいけないのだから。


 そして、弟が提案したあの問題だ。彼女を、カツラギさんをわたしの妻にする。あいつはたぶん、わたしを心配して言ってくれていたのだろう。だが、彼女にとってそれは迷惑にならないのだろうか。いくら、契約上の妻という関係になるとはいえ。


 そもそも、わたしは恋人すらろくに作ったことがない。施設ではその日生きていくのが精いっぱいだったし。大学ではほとんどひと回り以上年上だった。卒業後も父上から縁談の話があったにはあったが時期尚早と断ってしまった。だから、異性と。どう話していいのか見当もつかない。今朝の馬車内で、その話をしようとしたが、とっかかりすらつかめなかった。


 彼女はわたしのことをどう思っているだろうか。完全に未知の領域だ。絶対にわからない。窓から月の動きも確認しながら、そんなことを思っていた。本当に月がきれいだった。

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