第16話 真実
わたしは祭りを抜け出して、ひとり夜風にあたり、熱を冷ましていた。
さっきのことを思い出すと、今でもドキドキする。勢いでやってしまったことだ。完全に勢いだった。
あれから、宴会になったのだが、王様とはお互いに気まずくてあんまり話せていない。彼の顔をみると、さっきのことを思い出してしまう。触れ合う肌、体温、そして、心臓のドキドキ。
一応、婚約者みたいなもんだし。なんて、言い訳をしながらも、わたしは顔から火が出るかのような熱さを感じた。
じゃがバターやクリームシチューのような料理がでた宴会で、わたしははずかしさをまぎわらそうと、ワインをかなり飲んでしまった。だから、余計に体が熱いのだ。
「酔い覚ましですかな」
後ろから声が聞こえた。村長さんだった。
「はい。少し飲みすぎてしまって。村長さんは抜け出してきてしまってよかったんですか?」
「みんな酔っぱらっているから、だれもわからんよ」
「それもそうですね」
わたしたちは笑いだした。
「さっきはからかってすまんかったね」
「やっぱりからかっていたんですか」
ここでもふたりで笑いだす。女好きなひとなので、かなり慣れているやり取りだった。
「じつは宰相からふたりの仲をとりもってくれと頼まれましてね(笑)」
「いつのまに……」
「ほとんどの事情は聞きました。大変でしたね」
「じつはあんまり実感がないんです。もとの世界に戻れないという実感も。この世界で生きなければいけないという実感も」
「生きているということに実感なんて必要ないんだよ。ただ、そこで生きればいいだけじゃ」
「そういうものなんですか」
「そういうもんじゃ」
「ところでどうじゃ?。うちの弟子と結婚する決意はついたか?」
「ごほごほ」
いきなりの直球で、わたしは咳をだしてしまう。
「あのバカは、結構な堅物でね。わしも心配してるんじゃ」
「宰相さんもおなじことを言っていました。ほんとうに仲がいいですよね。あのふたり」
「うむ。本当の兄弟以上に仲がいい」
「えっ?」
「実はな。あの兄弟は血がつながっていなのじゃ」
「えっ、どういうことですか?」
「あのバカ弟子はもともと孤児じゃったんだよ」




