第11話 決闘(前半)
「本当に申し訳ございません。うちの師匠がご迷惑をおかけしました」
王様はさっきから平謝りだ。
「いいんですよ。王様の意外な一面もみられたし……」
「えっ?」
「なんでもありません。しっかし、すごいお師匠さんですね」
「恥ずかしながら(笑)」
「仲が良いのがこっちにまで伝わってきましたよ。でも、師弟でずいぶん性格違いますね」
「本当に自由奔放で。いつ、師匠が裁判で訴えられないかと気が気でありません」
「たしかに(笑)」
ふたりで談笑した。
ジジさんは、祭りの準備があるからと、村人の人たちに連れていかれた。
「あんなんでも、魔術師や指導者としては、本当に尊敬しているんです」
「そうなんですか!?」
大げさなくらいビックリしてしまった。
「あの自由奔放さから、既存の発想に縛られないすごさがあって。あの人が作り出したオリジナルの魔法が、今では教本に多く取り上げられていますし。芋の栽培方法など、最初に考え出したのも師匠なんです」
「すごいギャップですね。わたしの世界にも<暴走老人>という言葉がありますが、まさにピッタリなひとですね」
「本当に。黙っていれば、最高の師匠なんですが(笑)」
王様は大げさにため息をついた。でも、所々から、師匠への敬意が感じられるしゃべり方だった。
「黙っていれば、言ってくれるのう。陛下」
「「うわ」」
いつの間にか、ジジさんは後ろにいた。
「わしのガールフレンドに手を出すとは、まったく師匠泣かせの弟子じゃわい」
「ほんとうにセクハラで訴えられますよ」
「大丈夫だ、裁判するのはわしじゃし(笑)」
笑えない冗談だった。
「さて、我が弟子よ」
ジジさんは急にまじめな口調に変わった。
「久しぶりに決闘しようじゃないか。どれだけ強くなかったか、みせてみろ」
「お祭りの余興ですか?。いいですね、手加減しませんよ?」
「おうおう、言ってくれるの~。そうじゃ、なにか、賭けをしよう。勝者は女神様からキスしてもらうなんてどうじゃ?」
「「はあああああ」」
なにを考えてるんだこのセクハラ爺さん。わたしは失礼ながら、そう思った。
「どうした。負けるのが怖いか?」
ジジさんはさらに煽ってくる。
「わかりました、やりましょう」
「えっ」
思わず声が出てしまう。王様は煽り耐性が低かったようだ。
「<やめて、わたしのために争わないで>」
という状況に巻き込まれるとは思わなかった。
ていうか、わたしの意思はふたりとも無視ですか?




