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第7話 道中

<がたんごとん、がたんごとん>

 馬車は淡々と進んでいく。王様とわたしを乗せて。まるで、ドナドナドーナという歌が聞こえてきそうな雰囲気だ。


 どうして、こうなった。おかしいだろう世界。わたしは思わず突っ込みを入れたくなる。そもそも、異世界転移が発生していること自体おかしいのだから、そこに突っ込んでも無駄なんだが。


 宰相さんの提案でわたしは王様の地方視察に同行することとなった。いわゆる初デートなうだ。関係上、わたしたちは婚約者ということになるのだろうか。しかし、そんな雰囲気はみじんもない。というか、王様は仕事だ。


「今日行く場所はどんなところなんですか?」

 わたしは重い雰囲気に耐え切れず、思わず口を開いてしまった。

「ああ、そうでしたね。カツラギ様にはまだ伝えていませんでしたね。それは失礼を」

 王様はうっかりしていた口調でそういった。

「今回、行く場所はイースト村というところです。4年前に干ばつが起きてしまい、大被害がでてしまったのですが、新しい農作物の作付けなどがうまくいき、復興が進んでいます。今回はその復興を祝う記念祭に出席するのです」

「なるほど」

「特に、村の人たちは、カツラギ様を女神様だと思っているので、大喜びしているそうです。女神様が来てくれるということで、気合を入れてもてなすぞと力が入っているようで(笑)」

「……」

 なんだか、すごくハードルが上がっているような気がする。

「そんなに固くならないでください。最初は少し堅苦しい儀礼ですが、あとはみんなでたのしく美味しい食事を食べての宴会です」

「そうなんですか」

 少し安心した。

「ええ。特にイースト村は、今回の反省を生かして簡単で干ばつにも強い農作物を作ることにしました。あの村で、よい結果がでたら、国中にその方法を広めていこうとしているのです」

「なるほど」

「だから、今後の国運を担う大事な場所なのです。干ばつで大きな被害をうけたのに、みんな前向きで頑張っています。そこに天から降りてきたカツラギ様がいらっしゃっるということで、とても勇気づけられると思います。今のカツラギ様はそこにいてくださるだけでみんなの心の支えになるんですよ」


「……」

 ただ、天から落ちてきただけなのに。わたしがそんな大事な存在になっていいのだろうか。前の世界では、リストラされて存在を否定されたわたしが……。

「わたしだって嬉しいのです。まだ、出会って間もないですが、あなたは素晴らしい女性だと思います。聡明でとても美しい」

「そんな……」

 嬉しさと恥ずかしさ。そして、申し訳なさでこころがいっぱいだった。わたしは彼にそんなことをいってもらう資格があるのだろうか。ただ、彼はとても誠実なひとだ。ほんの数日だが、接していて本当にそう思う。心から尊敬できる。

「まだ、到着まで時間がかかります。少しわたしたちのことでも詳しく話しましょうか?」

 お互いをもっと知る。宰相さんの思惑通りにことは進んでいた。

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