Truth
「じゃあ、まずはこの問題から片付けよう!
とりあえずこの用紙に自分の名前を書かない限り先に進まないってことでいいんだよね?」
「うん。とりあえず書こっか。」
柏木の質問に対して無難に答えた。先ほど愚行を考えるとあまり親しくし過ぎるのは、よくないと思ったのかもしれない。自分は本当に最低で底辺の行動をしたんだから。
僕らは床に落ちた紙を取りに向かった。ゆっくりと、少しずつ。そうして紙を取り僕は前の問題でもあったように自分の名前を書こうとした。
しかし書けなかった。理由は簡単だ。それはもう一つの可能性を考えてついてしまった、ということだ。それこそ本当にどちらかがこの教室に出れる方法。それは解答に自分の名前ではなく、柏木菜那書いたらどうなるのか、という単純な疑問であった。しかしこの可能性は正しいと、なぜだかそう思えた。しかしこの場において、この状況下において、それを伝えることは至難である。
「柏木、紙に名前書いた?」
「書いたよ。ん、まだ書いてないの?」
「まだ書けないよ。少しだけ考える余地があってもいいと思うんだ。」
「..いいけど、それって意味あるの? それとも私が赤松くんの名前を書いていると思ってるの?」
少し疑われてしまったみたいだ。しかしこれは警戒ではない。疑いは分かれば解けて、なくなる。
「いいや、そうじゃないんだよ。今回の問題明確な答えがないんだよ。」
「それは、、そうだと思うけど。けど今の解答以外にこの問題を終わらせる方法ってあるの?」
「あると思う。」
はっきりと答えが出た。そして続けて説明をした。
「まずこの規則、少し変だと思わない? 確かに下の解答欄に名前を書かなければいけないとはわかるけど、ここの解答欄に僕たちの名前をわざわざ書く必要性ってあると思う?」
「...んない。わかんないよ。なんでそこまでこだわるのかな。今回の問題はとりあえず二人の名前を書けば終わるんじゃないの?」
柏木は少し動じていた。そして続けて、
「...なら、誰の名前を書くの?、委員長の名前でも書くの?、みんな誰もいなくなったじゃん。、見てたでしょ?」
(、、、、ぁあ、そうか。なら.....)
「ごめん柏木。怒らせる為に言ったんじゃないんだ。ただ、ちょっとだけ気になっただけなんだよ。けどもうわかったからいいよ。」
柏木はちょっと声を小さく、頰を赤らめて、
「私も、ちょっと言い過ぎちゃったね。」と
言った。その顔に悪意はないように見えた。しかし、僕には答えが見えていた。
「柏木、一つ話しておかなきゃいけないことがあるんだ。」
僕はそっと彼女へ背を向けてハッキリと言い放った。
「柏木の解答用紙は、僕の解答用紙なんだよ。僕が殴ったり、蹴ったりしてた時に恐らく入れ違ったんだと思うんだけど、一つだけ質問するよ。『なんで、まだ生きているの?』」
「、、ん? ?どうして生きてるのかって?それはきっと入れ違ってないからなんじゃないの?」
柏木はすぐに答えた。真っ当な返答だった。
「最後にもう一個質問するよ。このクラスの委員長って誰だっけ?」
「えーっと、えーっと、確か、"安楽くん„だよね?」
(、、、なんで、)
「なんで、安楽を知っているの?このクラスに安楽なんていないはずだけど、なんでかな?」
「えー?そんなことないよ。だっていたじゃん。最初にしっかり座ってたよ。」
(あぁ、やっぱりそうなのか。この人は彼女じゃない。けど、結局何か一つ腑に落ちない、なんでこれは?)
そして、僕は無言のまま柏木へ近づき、2度目の愚行を始めた。
1回目と同様に殴った。蹴った。しかし、もう僕に罪意識なんていうものは芽生えなかった。なぜなら操られていたのは、柏木ではなく、僕だった。そう思えてしまったから。その証拠に柏木の解答用紙を見た時、解答欄に書かれていた名前は僕の名前、即ち 赤松雄大と書かれていた。
その後僕は柏木の体を動かして、柏木の解答用紙に改めて、"柏木菜奈„ と書き直し、自分の用紙のにも同様に書き込んだ。
『えー校内放送、校内放送、今回の問題の正解者は赤松雄大でしたー っはハッハハハハ』
その校内放送と共に柏木は消え、遂に僕は一人になってしまった。
「違う、違う。なんで、、」
僕がそう言うと、忘れていた担任の山川が立ち上がって、少し話してくれた。
「赤松、今、君は2つの選択肢がある。一つは教室を出て、先へ進むこと。もう一つは過去へ戻って、救えなかった誰かを救うこと。君はどちらを選ぶ?」
「先生。救うって言ったって、どの道この教室から出られるのは1人までしょう?」
「確かにそうかもしれない。しかしそうじゃない教室もあった。それだけ。」
「そうですか。結局のところ何が正しくて、何が間違ってたんだろ。僕は何をどうすればよかったのかな...?」
柏木への想いは伝えられなかった。伝えたかったのかどうかで聞かれると答えはすぐには出ないと思う。
そもそも山川の話を聞いて推測するに、柏木が操られていたかも定かではない。もしかしたら、助けに、、、ということもあったのかもしれない。だけど、それ以上のことを考えようとはしなかった。したら本当に壊れてしまうから。やっぱり自分が一番優先のクズ野郎ってことだったみたいだ、僕は。
この世界の理。誰かを救うということは、それ相応の犠牲を払わなければいけない。即ち、等価交換である。
そして僕にその犠牲を払う勇気はあるのか?
答えは、、、、
「先生、僕は先へ進むよ。それが正しいと思うから。」
「わかりました。では、私はこれで。」
そう言って山川倒れることなく、消えていった。最後まで操られていた山川。恐らく山川だけが全てを見てきたのだろう。たとえその体に魂がなかったとしても。
そして、僕は先へ。閉ざされていた扉を開けてこの教室から出た。
Was there the meaning in this classroom?
(この教室に意味はあったのか?)
一応これで教室でのお話は終わり?かな。他の人たちはどうなっているのかな。




