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双子が召喚されました  作者: アルターエゴ
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003《扱いの差》

青年は少女の与太話を聞き流しながら閉じ込められていた部屋から出た。


そこは土壁に窓1つ無く、幾何学的な紋様が描かれた扉と青年が座っていた椅子のみである。


(マジでブタ箱みたいな所だな)


青年は部屋への感想とその部屋に閉じ込められていた自分を客観的に想像した。


窓1つ無い部屋に布の袋を被せられて手足も縛られる。


(極道やテロリストのやり口かよ)


「聞いているか兄上!

我らは異なる世界の神に呼ばれた選ばれし者!

我が秘宝が無い事には心苦しいが、我が封印されしチカラで存分に破壊する事ができるのだ!」


(こいつ、あのコスプレ集団に早くも毒されてやがる。

まぁ、(しろ)にしちゃ、オイシー、シチュエーションだからな。

いや、白に従っているあたり、こいつも白に毒されてるのか?)


青年は少女が頭の病であるアレな人だと知っているため、先頭でこちらを見ながら後ろ向きに歩く無駄に難しそうな事をしながらノリノリで話す少女の頭の中が手に取るように分かる。


しかし、その少女にまるで忠犬のように従う若い男性はあのコスプレ集団の仲間だろうと青年は警戒をしてる。


チラリと横を見る青年。


重そうな見かけにもよらず、音が一切鳴らない見かけ倒しの鎧もそうだが、その鎧の上にある物体がコスプレ集団の仲間だと青年が判断したのだ。


まず、毛深い。

それはもう、髪と言わず、髭と言わずに顔全体に白毛と黒毛がびっしりと生えている。

目は白目の所は青白く、瞳は空色。

鼻は横に少し広い楕円形(だえんけい)の黒く艶のある。

頭上に三角の耳のようなものが立っていた。

まるで、人と獣を混ぜたような顔である。

どうやら、獣を信奉してるカルトコスプレ集団らしい。


そう思えば最初のコスプレ集団も獣っぽい奴が居たような。


(カラコンに特殊メイクかよ。

本物みたく見えちまうから、まるで専門のメイクリストが化粧をしたような出来だな。

これが自分達でやったんなら、その道で食っていけそうなものなのにな)


「えっと…私に何か御用でしょうか?」


「いや、顔が凄いなと思って見てただけだ。

気にせず前を向いてくれ、クロンさん」


部屋を出た時に若い男性が名乗ったクロン・エボルガー・マルタリーチ。


日本語が通じている為、日本人かとも思ったが、名前を聞いて違うだろうと青年は判断した。

近年、キラキラネームで聞いただけでは漢字が予想できない人が増えているが、クロンの名前からは日本人とは考え辛い。


(組織内でのコードネームや偽名じゃないならな)


「それで、兄上のチカラは!?

我とは違うチカラに目覚めたハズなのだが!」


少女が青年に掴みかねない勢いで鼻息を荒くして青年に問いかける。


「あぁ?

……秘密だ、秘密」


青年は少女を軽く流しながら周囲への警戒を緩めない。

少女は確固たる足取りで進んではいるが、何処へと向かっているのだろうか。


牢屋から結構な距離を歩いたが、誰1人と会わない。

会わない事には喜ぶべきだろう。


何せ自分達はコスプレ集団に誘拐されたのだから、それこそ見つかればタダでは済まないだろう。


近くには敵か味方かも怪しい奴が居ては逃げるに逃げきれない。


「くふふ。

さぁ、着いたぞ!

ここが我らの拠点だ!

この世界の神が用意した安寧の地にして、休息の場…」


青年が思考にふけっていると少女の案内はどうやら終わったらしい。


そのとある部屋の扉を少女が話している事を無視して無造作に開ける。


そこは青年が居た牢屋とは違い、白を基調としたデザインの家具、壁というより大きな窓という存在が三面、外と隔てている。

その先にはちょっとしたテラスもある。

そして、何よりも部屋が、広い。

自分達の家よりも広いものなのだ。


「おい、俺とテメーのこの扱いの差は何だ?

テメーは大歓迎で俺は罪人扱いとかここの代表をぶん殴りてーわ」


「兄上、我が説明を聞かずに入るとは命知らずか!

普段であれば、憤怒の呪詛を仕掛ける所ではあるが、ご覧の通り、我が趣向に合わない。

そこの『覇気を奪う物』に腰掛けて居ても許すぞ!」


少女は柔らかそうなソファーを指差しながら言った。


「クロンは時が来るまで待機せよ!」


更に少女は獣っぽい顔の若い男性、クロンに偉そうに命令している。


「は!」


(マジでこの状況は何だ?

俺達は誘拐された身だろ?

俺みたいな扱いの方が自然じゃないか?

コスプレ集団に狙われる意図は知らねーけどよ)


クロンは短く返事を返すと(きびす)を返して遠ざかっていった。


「兄上、我は色々と話さねばならない!

チカラはもちろん、兄上が倒れてからどうなったか、この世界の情勢について、

我が呪いを解いた存在も知りたいだろう!

さぁ、さぁ、さぁ!」


少女はグイグイと青年のダークスーツの裾を握って引っ張り始めた。


「はいはい、行くから引っ張るな。

シワになるだろうが」


青年は少女の話を聞く事にしたようだ。


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