get up.
「なんだ……これ……!」
彼、柾木 衛守は驚いた。
配達を終えた帰路だった。
急にドラゴンの群れに襲われ、必死で逃げ込んだ洞窟。
その奥に存在する格納庫のような空間に。
そして、埃を被っていた大きな布の下に隠されていた、”それ”に。
「ま、魔導兵機……!?」
彼の横にいるマリナが驚いた声を出す。
彼らの眼前に現れた、まるで武士のような風貌の真紅色の大きなロボットが、片膝をついて佇んでいた。
「これも、あのロボットの1つ……だよな……?」
目の前に存在するロボットに、ついつい目が釘付けになってしまう。
『外が煩いと思ったら、人間か……”何年振りの来客”だろうか……』
突然、彼の頭の中に声が響く。
ーーな、なんだ今の声。他に誰かいるのか……!?
不意に聞こえた声に驚き、辺りを見回すが、このロボットとマリナ以外見当たらない。しかも、マリナにはこの声が聞こえていないようで、ずっとロボットを見たまま固まっている。
『ほう? しかも私の声はお前には聞こえているのか……珍しいこともあるものだ』
驚いている彼に容赦無く、男の声が続く。
『それにしても……外の状況が良くないようだな。ドラゴンに山の四方を囲まれている。このままだと、いずれここは崩れ落ちるな……』
大きな爆発音が聞こえる。攻撃が休むことなく行われているのだろう。内部の揺れはまた酷くなる一方で、パラパラと内壁の破片が落ちてくる。
『これは時間がないな……とにかく少年、死にたくないなら我に乗れ。力を貸そう』
ーー力を貸す? 乗れ、って……俺がこいつを操るってことか……?
色々な思考が彼の頭を駆け巡る。
「……本当に……力を貸してくれんのか?」
そして、気づけば言葉を発していた。
少しの沈黙。
突然キョロキョロと辺りを見回し、急に独り言を呟く彼に、マリナが目を向けているのが分かる。
『無論だ。それに、私も巻き込まれるのはごめんだからな』
彼は何か決心したように目を瞑る。
そして、なぜか楽しそうに口元をわずかに上げる。
そんな彼を心配そうに見るマリナが口を開く。
「ど、どうしたの??大丈夫……?」
「マリナ。ここは俺に任せてくれ」
「えっ……?衛守??」
そう言うと彼は小走りで真紅のロボットに向かう。
「必ず、お前を守る!」
小声で呟く。
「だから、俺に力を貸してくれ」
『心得た』