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神秘と召喚  作者: KARYU
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第二十六話

※すみません、戦闘シーンをちょっと修正しましたm(__)m

 「明臣様……アメリアさんも、申し訳ありませんでした」

 駆けつけて来た由良が、俺たちに頭を下げた。

 「え?」

 由良が何について謝っているのか判らずにいると、

 「先ほどの、穢れの攻撃です。隠形以外にも何らかの能力を持っているとは思っていましたが、まさかあのような攻撃手段を持っているとは……私どもの分析不足です。申し訳ありません」

 「いや、知られていない魔物なんでしょ? それなら──」

 「それでも、です。……初戦で真治さんと分断されてしまったとき、山の一部を崩されたのです。何らかの大きな力を持っていることは予測して然るべきでした。あと、配下の麻由里を助けていただき、ありがとうございました」

 さっきの中学生くらいの子は麻由里って言うのか。

 「彼女は見かけ通りの年齢ですが、素質があるため動員しました。先日の討伐でも何人か負傷者を出してしまい、人数に余裕がなかったのです」

 元々は予備人員なのだろう。術師としての素質は高いものの修練が足りず、実戦経験も少ない感じだ。今も、さっきの魔物の攻撃に怯えている様子。

 「大丈夫か?」

 俺は、震える麻由里の頭に手を置くと、安心させるように優しく撫でた。

 「ひゃっ、ひゃい、大丈夫でしゅ……」

 女ばかりの集団にいて男に慣れていないのか、さっきは普通に喋っていたのに頭を撫でただけでアワアワしていた。

 『アキオミ……』

 「明臣様……」

 何故か、アメリアと由良がジト目で見ていた。


 魔物に逃げられたため、そのまま引き上げることになった。

 ある程度の人数で固まって、まだ法力に余裕のある者が交代で結界を維持しながら下山した。


 ***


 翌朝、由良に次の討伐の予定を訊ねたのだが、探知からやり直しになるため今晩になるか明日以降になるかはまだ未定らしい。

 俺はこのまま付き合うことにして、担任には「まだ熱が下がらないので休みます」と連絡を入れた。奈緒あたりが余計な事を言い出さなければいいのだが。

 昨日担任に電話を入れてからずっと電源を切っていたので気付いていなかったのだが、さっき担任に電話した後、奈緒からの電話着信と、メールが何通も入っていることに気付いた。簡潔に返信して、また電源を切っておく。


 斬り飛ばした魔物の足は、由良の配下が持ち帰っていた。組織の本部で調べるらしい。その結果は俺のところまでは流れて来ないだろうし、この先関わる予定も無いから、俺が気にする必要は無い。

 足を切り飛ばしたとは言え、相手は魔物なので、弱体化はあまり期待しない方がいいだろう。

 あの最後の遠距離攻撃は、これまで使って来なかったこともあり、そう連発出来るものではないと予想される。由良には前兆が掴めていたことから、ある程度の溜めが必要らしいことも朗報だ。ただ、それでも油断は出来ないし、するつもりも無かった。


 夜までのんびりと過ごす。

 途中、麻由里を含む結界班の女の子たちが何人かやってきて、改めて礼を言われた。そのままどこかに拉致られそうになったのだが、アメリアが駆けつけて追っ払ってしまった。


 そして。

 由良の探知に魔物が掛かって、今日も討伐を行う事になった。

 魔物がいるのは、昨日とは二キロほど離れた場所だった。やることは変わらなかったのだが、俺とアメリアと由良の三人だけ、少し離れて別行動をしていた。

 結界班は、負傷からの復帰組と、本部からの増援も加わって、昨日よりは厚く配置出来た。これなら、そうそう逃しはしないだろう。

 ただ、展開はちょっと違った。

 包囲が完了する前に、魔物が動いたのだ。

 そしてそれは、俺たちの予想通りだった。

 魔物が出現した原因も、ここで何をしようとしているのかも判ってはいないし、魔物の知能がどの程度のモノかも判らない。ただ、何らかの理由や目的があって山に居るのだろうし、強敵がいることを知っていて対処をしないとも考えにくい。

 なので、こちらの動きを察知したら移動するだろうと予想していた。

 回り込んで、魔物の足止めをする。

 例の遠距離攻撃を連発されたら足止めも難しかったかもしれない。だが、魔物は包囲が完了するまで使って来なかった。


 今日のアメリアは、積極的に前に出ていた。

 昨日の一戦で慣れたこともあるが、魔物の手数がちょっとだけ減っているのだ。足を切り飛ばした影響が出ている様子。魔物とは言え、一晩で元通りという訳ではないらしい。

 そして俺の方も、魔物の攻撃に慣れて来て、更に足を切り落とすことに成功した。

 魔物は木から木へ飛び回って逃げようとする。俺も木に駆け上り、飛び回って魔物の上を取ると、槍に籠める法力を強め、全力で叩き落す。

 地面に落ちた魔物は足を小さく畳むと、昨夜の遠距離攻撃の時に使った黒い力を、今度は身に纏うように展開した。恐らく、触れれば只では済まないのだろう。──普通ならば。

 魔物に駆け寄るアメリアの持つ御神刀が、輝きを増す。

 アメリアは魔物目がけて、上段から御神刀を振り下ろした。

 御神刀は黒い力の膜を切り裂き、魔物の本体をも真っ二つに切り裂いた。

 それでも、左右に分かれた体から足を伸ばしてアメリアを襲おうとしていたが、着地した俺がそれを弾く。

 アメリアは更に御神刀を振るい、魔物を細切れにしていく。

 やがて。

 全ての魔物の欠片がその動きを止めた。


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