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神秘と召喚  作者: KARYU
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第二十三話

ちょっと短めです。すみません。

 巫女から俺用の棒を受け取ると、アメリアと対峙した。

 俺が手にしている棒は、道場の連中が使っていたものよりも緩衝材が大きく、効果が高い物を使ってある。アメリアに極力ダメージを与えないための配慮だが、これでもまともに喰らえば骨折くらいしそうではあった。

 ちなみに道場の連中は、暫く使い物になりそうになかったので、まずは二人だけで鍛錬をすることにしたのだ。

 『それでは……好きなように掛かって来ていいよ』

 俺の言葉に、アメリアは即座に反応した。幻惑する様にジグザグに動いて接近し、突きを繰り出してくる。間合いの差故の選択なのだろう。

 半歩下がって間合いを広げつつ棒で払うと、木刀が届かない範囲から逆に突きをし返す。

 アメリアは一歩後ろに下がった。俺の間合いをまだ把握出来ていないらしい。

 足を動かさず、左手を滑らせ根元を持つと、右手を離して左手だけで突きを放つ。

 『くっ……!』

 棒の先が右肩を捉え、アメリアは大きくバランスを崩した。

 『見切りが甘いぞ』

 俺は前進しつつ、左手一本で連続して突き続ける。

 アメリアは半分も捌けず、腕や腹を突かれてしまう。

 『もっと全体を見ろ』

 アメリアは大きく下がって、俺の動きを見た。

 俺は更に詰め寄ろうとしたのだが、アメリアは横っ飛びで間合いを維持する。連続攻撃をされる間合いを把握した様子。

 棒を両手で持ちなおし、素早く突撃した。アメリアは右に払いつつ、左に飛んだ。俺は払われた棒を、アメリア目がけて振り回す。

 アメリアは木刀で受けようとしたが、勢いを殺せず吹き飛ばされて、壁にぶつかった。反動で倒れ掛かる様にみせつつ、左斜めに飛んで急襲しようと目論んだ様子。

 アメリアの移動先に棒の先端を素早く置いておく。右太ももを突かれ、アメリアは一瞬動きを止めるも、すぐに右周りに飛ぶ。

 同様に棒を置くが、今度は小刻みに横移動しつつ迫ろうとしていた。だが、アメリアの移動に合わせて俺が棒を置きなおすと、それだけでアメリアは俺に近づけなくなる。

 『ただ隙を突こうとしても無駄だ』

 敵は多足の魔物。躱して接近しようとするだけでは手数で押されてしまうだろう。なので、ただ躱すだけではなく、相手の足を払うことで他の足からの攻撃を防ぐなどして守りを崩す必要があった。

 それでも、軽く弾く程度ではさっきみたいになってしまう。

 払うなら強く、すぐには再攻撃が出来ない程度に捌く。

 時には躱し、時には打ち返し、時には崩すようにいなす。

 それらのことを体で覚えさせる。

 一通りのことが実践出来た頃には、アメリアは大量の汗を流し、肩で息をしていた。さすがに俺も、ちょっと汗が垂れていた。

 『とりあえずは、これくらいにしておくか』

 俺が構えを解くと、アメリアは片膝をついて大きくため息を吐いた。

 「……なんだか、牧嶋が戦った方がいいんじゃないかって気が──」

 琴音先輩がそう言いかけて。

 「それは、難しいです」

 巫女が即座に否定した。

 「穢れは、姿だけでなく気配すら隠して移動出来る能力を持っています。術でサポート出来るとは言え、戦う当人が敵を見失う状況では後手に回ってしまい、奇襲を防げなくなります。……真治さんの様に」

 そう言われてしまうと、琴音先輩は何も言えなくなってしまう。

 「まぁ、アメリアも不慣れな相手との戦いで戸惑っていた部分も大きいと思いますし、俺との鍛錬で慣れれば、次は大丈夫だと思いますよ」

 次は仇は討てるだろうと。

 俺の言葉に、琴音先輩は黙って頷いた。


 昼食後、今度は道場の剣士十人とアメリアに乱取りをさせた。

 間合いが広い棒で囲まれると、さすがにアメリアでも簡単には捌けない様子。だが、午前中に俺とやった経験が生かされている様で、徐々にだが捌き方が上達していくのが判る。

 夕方頃には、剣士十人では抑え切れなくなっていた。


 俺はそのまま、こっちに泊まり込むことになった。

 部長たちは帰るみたいだが、明日も来るかもと言い残して行った。


 ***


 翌日も、朝から乱取りを行った。

 十人だけでは簡単に捌かれる様になって、俺も加わることにした。と言っても、剣士たちの隙間から時折突きを入れるだけに留めたが。それでも、アメリアにとっては難易度が格段に上がっていた。


 休憩中、御神刀を薙刀の様に加工して使えないか、或いはもっと間合いの広い武器は無いか、などと意見が出された。

 だが、アメリアは剣士であり、他の武器は扱えなくもないが練度が低すぎて話にならないらしい。

 巫女が用意出来る得物としては、槍もあるらしいのだが、こっちは御神刀と違い、使用者が法力を籠めないと加護が発動しないらしく、加護が無ければ普通の槍以下の性能でしかないとのことだった。

 俺はそっちにも興味が湧いたのだが、法力についてはよく判らなかったので詳しい話は聞くのを止めた。


 俺が帰った後の鍛錬についても指示を出しておく。

 剣士十人ではもう鍛錬にはならなそうだったのだが、これ以上人数を増やしても効果は上がらなそうだったので、怪我をしない程度の威力の飛び道具をいくつか用意させることにした。

 剣士たちを捌いている最中、隙間から打ち込ませることで、難易度が上がるようにしたのだ。個別には俺が参加するよりも効果は低いだろうが、数が多くすることで補わせる算段だ。


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