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今年もやって来る 後妻  作者: 鬼瓦熊吉
1/1

近づいている

 11時を過ぎると母ちゃんは台所に立った。


 「何を作るんだよ」


 「冷やし中華よ。今日は漆原さんがお昼を食べにくるから」


 「出前じゃないの」


 「こんなもの出前を取るほどのこともないじゃない。あんたもいるなら一玉増やすから」


 どう考えてもおかしい。物凄い手際のよさで錦糸卵を作っているし。こんな家事能力はないはずだ。


 俺は頭がいい。しかし知能で解決できない現象が起きているのだよ。


 昼にやって来た漆原さんは気の良さそうな老夫婦だった。


 ヘルパーでもないのに何でこんな老人と付き合っているのかが疑問だが、周囲に老人しかいないのだからしかたないかもしれない。


「息子のショウです」


「これはかしこそうなお子さんですな」


[塾にも行かないのに勉強だけはできるのですよ」


「私たちも見えるのかね」


 当り前じゃないか目があるんだから。それにしても言葉の使い方が間違っているよ。


 俺はかしこそうではなくてかしこいんだよ。


 とにかく聞いてみよう。


「漆原さんは幽霊を見たことがありますか」


「それわな、わしも年だからそれらしいものは見たことはあるが、どうかしたのかね」


「そこの鏡台に白髪のおばあさんが現れたのですよ。こころあたりはありませんか」


「そう言われてもな。もしかしたらおさき婆さんかもしれない。いや、この辺一帯の地主がな若い後妻をもらった。二回りは離れていたかな。まあ財産狙いだな。それがおさきさんだった。戦後すぐの話だ」


「何か不幸な死に方をしたのですか」


「別に吝嗇ではあったが人に恨まれたと言う話は聞かなかったな。ただ子供がいなかったので。最後は孤独死したか、火事にあったという話も聞いているな」


 充分にこの世に恨みを残しているではないか。


「僕たちの前に住んでいた人にこころあたりはありますか。一家心中をしたとか」


「そんなバカな。我々は暇だから若い人が好きで時々声をかけていたのだが。奥さんは細身で器量もよかった。いい条件だと思ったのだが、ギスギスして性格が最悪だったな。逃げるように越してしまったのでよくわからないのだよ」


 原因はだいたいわかった。しかしこれは俺がテストで98点を取るのとは話が違う。


 明日ケンタ達に相談しよう。




 


 


 

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