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僕の友達 やっちゃん

小学生の頃、僕にはやっちゃんと言う友達がいた。やっちゃんと僕は家が近かったことで仲良くなった。やっちゃんは学校を休みがちな僕でも気にせずに接してくれた。僕たちは学校では、いつも一緒にいた。学校が終わるとやっちゃんの家に行って日が暮れるまで帰らなかった。僕はそんな毎日が楽しくて楽しくて仕方なかった。


やっちゃんはとても表情が豊かだった。怒った顔も、泣いた顔も、困った顔も全部好きだった。中でも1番好きだったのは、僕とお話してるときにする、なんとも言えない笑顔だ。他の誰にも見せないちょっと変わった笑顔が僕は大好きだった。その顔が見たくて僕はやっちゃんに色んな話をした。


やっちゃんの好きな蝶々をたくさん捕まえた話。

やっちゃんが借りてた本は全部借りて読んでるって話。

やっちゃんが着てる服を見つけると毎回買ってるって話。

やっちゃんがなくしても大丈夫なように、同じ文房具を揃えてある話。

やっちゃんが安心して寝れるように電気が消えるまで見守ってあげてる話。


他にも色々お話ししたけど、僕がやっちゃんの話をするとやっちゃんはいつもあの笑顔を見せてくれる。きっとやっちゃんも嬉しがっていたんだと思う。


やっちゃんはとても潔癖症だった。部屋はいつも綺麗にしてあったし、お布団だっていい香り。お風呂のときも念入りに体を洗っていた。僕が手をギュッて握ってお話しすると、その後決まってトイレに向かい、手をゴシゴシ洗っていた。どんな時でも手洗いを欠かさないやっちゃんはとても偉いと思う。でもそのときもあの笑顔を浮かべていたし、内心喜んでいたんだろうな。


僕はやっちゃんにドッキリを仕掛けるのが好きだった。よくやっていたのは、やっちゃんの下駄箱に手紙を入れるドッキリ。初めは名前を書かずに、その日のやっちゃんの行動を全部書いてただけだった。でもそれに飽きてからは、さらに自分の行動も書いてあげた。これでお互いのことをより深く知れるし、我ながら頭が良いと思った。やっちゃんはその手紙を見るたびに、僕の好きな笑顔を見せてくれた。


でも、やっちゃんは突然引っ越した。友達の僕には何も言わずにどこか遠くへ引っ越した。先生に聞いても、場所は教えられないと言われた。クラスメイトに聞いても、訳のわからないことを言われるだけだった。


「お前が...!お前が...!」


何を言ってるのかわからなかった。僕はやっちゃんの話をしてるのに、こいつらはなんで僕の話をするんだろう。

やっちゃんがいなくなってからは、毎日がすごく薄っぺらく感じた。毎日何もすることがなく、ただ過ぎるのを待つだけの学校生活だった。


やっちゃんがいないと僕は何もできない。やっちゃん帰ってきてよ。帰ってきてよ。まだ笑顔が見たかったんだ。やっちゃん。捕まえた蝶々まだ残ってるんだよ。やっちゃん。やっちゃん。やっちゃんの服たくさんしまってあるのに。文房具だって。やっちゃん。

届けに行くからねやっちゃん。何年かかっても。それまで忘れないでね。

ねえ、やっちゃん。

一緒忘れないからね。

僕の友達 やっちゃん。






見てるんだろ

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