八幡原の戦い
深夜、馬場信房の軍勢は妻女山に出陣した。
しかし昼間に聞いた宇佐美定満の読みに従い、上杉政虎の軍勢はこの山を降りていたのである。甘粕景持に殿を任し、八幡原に向かった政虎は、信玄の陣を攻撃した。
奇襲を受けた信玄の軍勢は押されていた。ここで1人の兵が信玄に告げた。
「信玄様、ここの軍勢はもう壊滅状態にあります。退却の下知を!」
告げると信玄をかばい戦死した。だが信玄は、
「まだ退くわけにはいかん。ここで退けば、私の目的と信房を失うことになる。それだけは絶対に避けねばならん。」
と言い、兵には戦うように告げると、自らも戦い始めた。すると声が聞こえた。
「信玄!貴様にはここで消えてもらう!」
政虎の声である。政虎は信玄に槍を振り下ろした。信玄はそれを軍配で防いだが、軍配は木っ端微塵になってしまった。そのことに驚いた信玄は、
「なぜたかが槍にここまでに砕かれるのだ・・・。」
「それはな信玄!私の魔力によるものだ!魔力を持つものはな、武器または防具に魔力をこめることで硬度や切れ味を極限にまで高めることが出来るのだ。魔力を持たぬ貴様には一生使えん技たがな!」
と言いまた槍を振り下ろした。絶体絶命のそんな時に助けに入ったものがいた。武田晴虎である。
「兄上、ご無事ですか?」
信玄は晴虎に助けられたのである。晴虎は政虎の槍を止めていた。そんな時に信玄はすこし思ったことがあった。「虎って文字多いな!」そんなことである。戦いの最中にそんなくだらないことを考えていた信玄であった。そんな信玄とは裏腹に政虎は相当驚いていた。
「私の魔力を込めた槍を止めるとは・・・。こやつも私と同じ魔力を持つものか・・・。面白い!!」
というと、盛んに槍を晴虎に振るが、それを赤子を扱うかのように受け流し、ついには政虎の槍を切り、持っていた鉄砲を左手で撃った。弾は政虎の左腕に当たった。武田軍の別働隊の到着や政虎の腕の怪我により、形勢不利になった上杉軍は撤退した。
危機を脱した武田軍だったが、山本勘助や武田信繁らが戦死するなど大きな損害を受けたのである。