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七福神の代理戦争!?

作者: 種田餅造

今年の初夢は七福神の手下になって戦争をしていました。縁起が良いのか悪いのか。

二度寝して起きてから気づいたあいぽんのメモ帳に寝ぼけ眼の箇条書き。

なんだかもったいないので小説風にまとめて小説デビュー作にしてみました。

バトル展開とか始めて手を付けたのでこれは失策かなと思いつつ。


神様のルーツとか調べるのはとても楽しくて、年末ギリシャ神話とか八百万の神とか調べ物をしていたのでそれの影響ですかね?


あまり長くないのでお気軽にお読みください。

地の文が固いのはただの癖です。

「明けましておめでとうございます」

 年明けと共に、日本各地で一斉に使われ始める挨拶である。

 窓の外の風景は、午後を過ぎてからチラチラと雪が舞い始めた。


「寒いぞー!家から出るなよー!」

 と、俺に語りかけていてくるようだ。

 特に用事もないのでこたつで石のように丸くなってコタツムリになった。

 体の奥から幸せの温もりを感じ、本日何度目かの眠気に身を任せる。

「お兄ちゃん!朝から一歩も動いてないでしょ。年賀状でも取って来なさい。」

 お尻に衝撃が走り、目が覚めた。妹が仁王立ちをしている。

 二発目のキックでビリヤードの玉のようにこたつから転がりだされた。

 デートから帰るのを渋る恋人の様に、何度もこたつを振り返りながらとぼとぼとポストへ向かった。

 妹というものはもっと兄に愛情を持って接してほしいよな。そしたらペロペロしたりなでなでしたりしてやるのに。

 自らの不遇を口からこぼしながらポストの中の年賀状の束をパラパラとめくる。

 お、珍しく俺名義のハガキが入ってる。

「開けましておめでとうございます。」

 明けるの漢字が違うよな。どこの馬鹿だ。って数える程しか友だちもいないけれど。

「本年度の神々の代理戦争に選ばれましたことをお知らせします。本年度はよろしくお願いします。 弁財天」

 年明けと共に終末を告げる様な、開戦のお知らせだった。



「代理戦争モノなんてオワコンだろぉよーーー!!!」

 背中に衝撃と轟音を浴びながら塹壕に決死のダイブを決める。

 髪の毛を音速以上の何かがかすめ、いく束かがひらひらと舞い落ちた。

 たぶんこの数瞬で2回ほど気絶をして3回は走馬灯を見た。4回は死んだばあちゃんに追い返されただろう。

 ズザァー。と砂埃をあげ、ヘッドスライディングで塹壕に転がり込むと、その勢いで一気に体勢を立て直す。

 七転び八起きが家訓であり、モットーである。


「はぁ、はぁ、はぁ…んく!」

 乱れた息のまま、一口だけ水を口にする。

 口に含んだ水は鉄の味がした。

 そのままゴクリと飲み込むと、呼吸を整える。

 常に冷静に、がモットーその2である俺は、現段階で分かる戦況の分析を開始した。


 敵側である大黒天側の主力兵器は金にモノを言わせた現代火力兵器。現在は陣地の大半を占領。

 大黒天は七福神の富を司る神だ。小槌を振れば金が出る。

 金があればこの世の大半の荒事は乗り越えられる。現状のように。

 対してこちら、弁天側の陣営が扱う武装は芸能の神になぞらえた楽器(主に琵琶)のみである。

 陣地は円形に積み上げた塹壕の内側、本陣のみしか残されていない。

 歌で世界は繋がるか?平和になるか?ラブアンドピースか?

 そう、勝ち目はもうほとんど無いに等しい。


「いぃやっふぅぅーーーー!!!」

 冷静な分析のなか水を差す様に、頭の上から奇声が降り注いだ。

 金髪モヒカンの奇抜なロッカーが、雄叫びと共に塹壕に逃げ込んで来ただけだが。

 こいつが来たということは戦況は終盤末期に入ったというところか。


「おい、しっかりと仕掛けてきたか?」

「あったぼうよ!この髪にかけてもいいぜ。神にはかけてやらねえけどな!」

 ドヤ顔のモヒカン野郎。敵だったなら真っ先にヤッてるところだ。

「いや、全然上手くないって。」

 ていうかここは弁天様にかけるべきだろ。なんて言ってもこいつは自慢の髪の毛以上に神に敬意は払わないんだろうな。

「おめぇはいつもしのごの言い過ぎなんだよ!べらんめぃ!」

「はいはい。…はぁ、なんでこんなエセ江戸っ子ロッカーとチーム組んでるんだろう。」

 代理戦争は神一人、人間五人で一チームの七福神総当り戦。

 七福神なんて全員言える日本人の方が少ないだろうに、こともあろうか内輪もめが絶えない集団らしい。

 ちなみに神が誰を選ぶのかも、人がどの神を選ぶのかも決められない、そこだけは完全公平なルールである。

「べらぼうめぃ!さぁさぁ、ここでのんべんたりと朽ちてく前に、一花咲かせて見せませうぜ!!」

 

 ザクっ、ザクっ

 

 静寂の中、はっきりとした足音が次第にこちらへと近づいてくる。

 大声で話しすぎた。いやな汗が背中を伝う。

 隣のロッカーも状況を理解したらしい。軽い調子の俺らに緊張の空気が流れる。


 ザクっ、ザクっ、ザッ。


 足音が止まる。

 塹壕のすぐ向かい側に、居る。

 息遣い、武器のセーフティを外す音、反動に備えて足を肩幅に広げる音まで伝わってくる距離だ。

 隣でロッカーが音を立てずにチューニングを始めた。

 最後の攻防となるだろう時に、最高のコンディションで挑む為に手は抜かないといったところか。

 俺も合わせて弦の張りを強めた。


 ガチリ。


 静寂というガラスにヒビが入る。照準を合わせた音だろう。

 そいつは、そいつらは銃口を俺らの心臓を貫くであろう位置へと向けて構えている。

 顔は見えないが、さぞ勝ち誇った笑みを浮かべていることだろうな。

 そりゃあそうだ、勝てば七福神の名の下、あらゆる願いが叶うという。

 誰だって考えただけで、笑みが零れるだろう。

 飲み残しの水を一気に口に流し込んだ。勝負は一瞬になるだろう。

 ロッカーは既にチューニングを終えていた。最後に一音だけ、音を確かめるように口笛をピュッ、と吹いた。

「「ベン」」

 それに合わせて二人が同時に音を鳴らす。全く狂いのない調弦だ。

 顔を見合わせると、どちらからともなく、ピックを懐から取り出した。


 ガン!!


 あたり一面に爆音が響き渡る。

 しかし、その音は奴らの銃から発せられたのではなかった。

 それは本陣を囲むように張られた糸、弦が琵琶の振動を広い増幅した音。

 モヒカンロッカーの仕事はこの弦を張ること、その時間稼ぎの為だけに、残りの3人は命を落とした。(後に神の力で復活する予定)

 あらゆる物を楽器と化す、芸能の神の能力。決して楽器で殴るだけが能ではない。

 音の原理は中学校で習うよな。そう、空気の振動だ。

 ピンと張られた糸が無数に重なり音を為すと、それはやがて爆音となり、風圧となる。

 ライブとかででかいアンプの前で胸がバクついたりする、あれ。

 爆音の正体はその音の風圧だった。


 ロッカーが立ち上がり歯ギターならぬ、歯琵琶ーの超絶技巧に入った。ジミ・ヘンドリックスばりにギャリギャリと。

 芸能の神はこれも芸術といって許すのか?懐が深いことこの上ない。

 ちょっと引いて、もとい見惚れて出遅れたが、俺も立ち上がり琵琶を奏で始める。

 立ち上がって見えた視界には、黒い防弾ベストとライフルを持った二人組。

 しかし二重奏によって厚みを増した風圧に、相手は顔を歪まし視界を背けてしまっている。

 それでは自慢の銃も撃てないだろう。

 だが、これでは決定打とはならない。

 ヘルメットを目深にかぶると再び照準を合わせにかかる。

 その数秒が勝負の境だ。


 増幅された爆音の中で、琵琶本来の繊細な音色が地中深くの地下水に届いていた。

 それは振動とは違い、水に混ざり合うと上層の音に惹かれるように地上を目指して浸透を開始する。


 チャキ


 既に風圧になれてきた大黒の使徒は、風圧の抵抗を少しでも減らそうとライフルを横向きに構え、銃口をこちらへと向ける。


 ゴゴゴゴゴゴ…


 風圧とは異なる轟音が近づいてくるが、まだ気付かれていない。

 ついに照準が心臓に合わさり、軍用の手袋に包まれた太い指がトリガーにかかる。

 次の瞬間、地鳴りが鳴り止んだ。


 シュン


 視界の端で何かが空へと飛び出すのを捉えた。

 それはキラキラと太陽光に反射し、神々しさを纏った水の剣。

 相手は呆気にとられて空を見上げている。

 いや、かくいう俺もその剣のあまりの美しさに見惚れてしまっていた。

「ジャカジャッ!」

 隣で歯切れのいい音が鳴ると同時に、一振りの剣は弾け飛び滴となった。

 滴は周囲の空気から水分を吸い取ると、その一滴一滴の密度を上げながら地上に降り注ぐ。

 弁天のもう一つの能力、水流操作。

 弁財天の由縁はインドの水神だと言われている。


 バタタタタタタタタタタタタタタタタタ


 地上に降り注ぐ水は豪雨となり、ただ一点のみを目指す。

 敵の肉体、ただそれだけを弾丸の如き勢いで余さず、零さず撃ち貫いた。

 シン、とした静寂の音が戦場全てを覆い尽くす。

「「見やがったか!べらぼうめぃ!」」

 2人揃って死体(後に神の力で復活する予定)に向かって吐き捨てた。

ドサリ。

 弦が切れたかのように腰が砕ける。

「なかなかやるじゃねぇか!中々なロックンロールだったぜ、てやんでぃ!べらぼうめぃ!」

 同じく座り込むロッカーの江戸っ子言葉は、もはやゲシュタルト崩壊を起こしていた。

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