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少女の夢  作者: 羽島柚
4/5

消失

「大丈夫?」


青年の言葉に少女は我に返る。


「うん…」


青年の顔を見た瞬間、少女は凍りついた。


「お前…は…!」

「え?」


その青年は少女の両親を殺した男だったのだから。


「どうして、お前が!?」

「…その様子だと、思い出しちゃったみたいだね。そう、君の両親を殺したのは僕だ。」

「うあああああああああああ!」


少女は手にしたナイフを青年に突き立てる。一突き目で倒れた青年に、少女は何度もナイフを突き立てる。何度も、何度も。


最初に刺した時のように血は流れていない。しかし、青年の動きはだんだんと鈍っていった。


「待っ…て…話を…」

「話って何!?どうせ全部嘘だったんでしよ!私を救うなんてそんな」

「嘘じゃない!」


青年の叫びで、少女は手を止める。


「…どういうこと?私をこんなんにしたのはあなたでしょ。」

「ごめん。君は僕のせいでシリアルキラーになってしまった。だから、僕が救わなきゃって思ったんだ。」

「…なんで私のお父さんとお母さんを殺したの?」

「殺すつもりはなかった。お金が欲しくて、強盗しようと思って…見つかって焦って…気づいたら殺してた。」

「…あの時、私も殺そうとしたよね。」

「あのときは気が動転してたから。目撃者はいちゃいけないと思ったんだ。」

「…死ぬ直前に私に何が言いたかったの?」

「『どうして泣いてるの?』って。死ぬ直前に気づいたんだ。僕を殺した君が泣いていたことに。」

「…ふふっ、呑気ね。死ぬ間際に人の心配するなんて。」


少女は青年の胸からナイフを引き抜き、放り投げる。出血はしていないものの、青年はだんだんと衰弱していってるように見えた。


「私を救うってどうやってやるつもりだったの?」

「…さあ。でも君と一緒にいたらわかる気がしたんだ。僕のことは覚えていないみたいだったし。」

「あなたはこれから…どうなるの?」

「消えるんじゃないかな。『君を救う』っていう願いは叶ったみたいだし。」

「え?」

「だって君が泣き止んでくれたから。」


確かに少女の目は赤く充血していたが、涙はもう流れていなかった。


「あ…」

「君はあれからずっと泣きながら人を殺し続けてきた。涙がなくなったんだから、もう人を殺すことはないかなって。」

「ばかみたい…泣かなくたって私は人を殺すかもしれないよ?」

「僕は君がもう人殺しをしないって、そう思うんだ。」

「あなた…変わってるね。」

「そうかな?でも君を救えてよかった…」

「!?」


青年の体は徐々に薄くなっていた。


「もうそろそろお別れかな。君の両親を殺したこと、許してくれとは言わない。僕の身勝手な行動に付き合ってくれてありがとう。」

「ほんと、自分勝手にも程があるよ…」


少女の目からはまた、涙が溢れそうになっていた。


「今度はちゃんと伝えられそうだ。泣かないで、笑って?」

「…うん!」


少女は笑顔を見せた。今までの狂気的なものではない、無邪気な笑顔を。


満足そうな顔をしたあと、青年は消えた。


「…ありがとう。」

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